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2024.06.27

プチプラコスメの新星:yutoriとi.Dが作り出した「minum」の誕生秘話とその魅力

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全商品が手のひらサイズのミニサイズコスメ「minum(ミニュム)」は、ワンコイン価格ながら使い心地や品質にもこだわって開発されたコスメアイテムということで、SNSを中心に話題となっている。
複数のアパレルブランドを展開する株式会社yutoriと、化粧品の開発・製造・流通を担うメーカーである株式会社i.Dとの共同プロジェクトによって誕生した。今年3月に発売されて以降、ターゲットのZ世代を中心に購入者が急増し、取扱店舗も拡大している。
価格と品質の両立、そしてSNS発信力の獲得には、両社の創意工夫と努力が重ねられた。取材を通じて、その裏側に迫ってみた。
PROFILE|プロフィール
堀井 昭一(ほりい しょういち)

株式会社i.D 代表取締役

高まる低価格帯のコスメ需要

minumはワンコインで購入できる、低価格帯を実現しています。昨今のプチプラコスメの市場動向と需要はいかがでしょうか。
100円ショップやスリーコインズなどで手軽にコスメが購入できるようになり、低価格帯のコスメの売り上げはかなり伸びているようです。「SHEIN」オリジナルコスメライン『SHEGLAM』も要因のひとつでしょう。
一方で、中間価格帯が厳しくなってきていている印象もあり、プチプラかハイブランドかという二極化が進んでいます。これはアパレル業界と同様の傾向ではないかと思いますね。百貨店のハイブランドは好調ですが、中価格帯の商品はコスメ市場においても選ばれにくくなっているのかもしれません。
低価格コスメも増え、消費者の選択肢はかなり広がりましたよね。
近年、安価でも品質が良いものが増えてきており、価格と品質の関係も変わってきているのを実感しています。
かつて私が務めていた株式会社ジャパン ゲートウェイでは、ノンシリコンシャンプーの普及に先駆けて取り組んでいました。当時のシャンプー平均価格は300円台でしたが、私たちは900円〜1,600円のノンシリコンシャンプーを販売し、価値の高いポジショニングを確立しました。また、不透明だったシャンプーボトルを透明化するなど、ビューティー意識の向上にも貢献しました。
一方で、今回のように、平均価格を下げることで新たな価値観を提案するのもひとつの方法です。単に価格を上げるだけでなく、品質を維持しながら価格帯の選択肢を広げ、お客様に新しい満足感を提供することが重要になってきています。
価格が下がっても価値が下がるわけではありません。適正な価格設定と品質の両立が肝心なのです。
今回のコスメ開発において、yutoriとコラボするに至った背景について教えてください。
yutoriの社外取締役をしている児玉和宏さんの紹介で、yutoriの代表である片石くんと話をする機会があり、そこからプチプラコスメを作ることになりました。ターゲット層は30代ですが、SNSでの発信力はZ世代が圧倒的に高いため、yutoriの強みを生かし、Z世代向けのコスメを作ろうと立ち上がりました。
yutoriとの商品開発はどのように進めていったのでしょうか。
yutoriはファッションとコスメは密接に関係していると考えています。たとえば、バッグが小さくなれば、コスメもコンパクトな製品が合っていると考えています。しかし、ファッションとコスメを分断して別々に製品開発をしてしまうと、そのような関連性を見失ってしまいます。
本来は、流行やマーケットの動向に合わせて、製品開発の方向性を定めるべきです。その上でyutoriとしては、ファッションに適したコスメアイテムであるかという点も重要視しています。
一方で、製品のクオリティ担保は弊社が責任を持つ必要があります。トレンドカラーなどの共通項は話し合いやすいですが、Z世代向けのアイテム選定など、具体的な製品企画は相互に意見を出し合いながら進めていきました。
このように、コンパクト性、ファッション性、品質を併せ持つことが、製品開発の重要なポイントになりました。
一般的なコスメメーカーでは、ミニサイズのコスメは価格帯などの課題もあり、なかなか製品化に踏み切れないところがあります。しかし、yutoriはファッションとの関連性に対する思いが強く、「バッグが小さいからミニコスメだよね」という考え方がそもそも根付いていました。
このように、Z世代向けやファッション業界とコスメメーカーでは、製品に対する意識がまったく異なっています。ファッション関連の人々は、ミニサイズのコスメを自然に受け入れる一方で、コスメメーカーの人々は価格的な懸念から踏み切れないのです。
yutoriのこのような新しい視点は、従来のコスメ業界とは異なる発想を生み出しています。コスメとファッションの関連性を重視するユニークな考え方だと思いますね。
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