現代の日本で「美容整形」はどれだけ行われているのだろうか。2018年に日本美容外科学会(JSAPS)が、同名の日本美容外科学会(JSAS)、日本美容皮膚科学会と協力して発表したデータによると、2017年には約200万件の施術数が確認されたという。
かつて美容整形の話題はタブー視される風潮もあったが、マスメディアで取り上げられる機会も増え、近年ではネット上でインフルエンサーが施術報告を行うなど、年々広がりを見せている。
美容整形に対する社会の認識はどのように変化し、またそれを望む人々の背景には何があるのだろうか。そして、美やファッションを取り巻く価値観はどのように変容し、そこにはどんな課題があるのだろうか。
今回、美容整形に関する先駆的な研究者として知られる、関西大学の谷本奈穂教授に話を聞いた。
PROFILE|プロフィール

谷本奈穂(たにもと なほ)
関西大学総合情報学部教授。1970年生まれ。
大阪大学人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。専門は文化社会学。
著書に『美容整形というコミュニケーション――社会規範と自己満足を超えて』( 花伝社、2018)、『美容整形と化粧の社会学――プラスティックな身体』(新曜社、2008)、『恋愛の社会学――「遊び」とロマンティック・ラブの変容』(青弓社、2008)。
共編著に『身体化するメディア/メディア化する身体』(風塵社、2018)、『メディア文化を社会学する』(世界思想社、2009)、『博覧の世紀――消費/ナショナリティ/メディア』(梓出版社、2009年)など。
美容整形をする“動機”
はじめに、これまでの美容整形に対する社会的な認識は、どのようなものだったのでしょうか。
私が研究を始めた2003年当時から現在に至るまで、美容整形に関しては大きく「モテたい仮説」と「劣等感仮説」の2つが広く信じられてきました。「モテたい仮説」は「モテたいから美容整形をするのではないか」という、私たちが一般的に持っている信念から生じている考え方です。これは実際に、社会心理学の対人魅力に関する研究により「外見がいい人は社会的に有利である」ということが裏付けられています。特に、男性より女性の方が外見的魅力の重要性が高いこともわかっています。
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