髪を乾かすだけでなく、ヘアケアも可能な美容家電へと進化した、高価格帯のドライヤーが市場規模を拡大している。
「特にコロナ禍はマスクで顔の大部分が覆われていたため、『髪が顔の印象の8割を占める』と言われるなど、ヘアケアに注目が集まり、高価格帯ドライヤーが一気に浸透しました」と語るのは
パナソニックの巽敦子さんだ。
そのパナソニックが9月1日に8万円超えのドライヤー「
ナノケア アルティメイト」
[1]を発売する。高価格帯のドライヤーの中でもハイプライスなこの商品は、どのような進化を遂げているのか。巽さんに話を聞いた。
PROFILE|プロフィール
巽 敦子(たつみ あつこ)
パナソニック株式会社 ビューティ・パーソナルケア事業部ビューティブランドマネジメント部 ビューティ国内マーケティング課
パナソニック独自のナノイーのメカニズムとは
パナソニックの独自技術であるナノイーは、さまざまな商品に搭載されていますが、そもそもどういったものなのでしょうか?
ナノイーは水から生まれた微細なイオンのことです。水はタバコ等の臭気成分を溶かす性質を持つことから、空気清浄機に応用できないかというところから開発がスタートしました。そして、空気清浄機に使用していたナノイーの特性(水分量、弱酸性)に注目し、マイナスイオンよりも髪ケア効果が高くなるだろうという仮説のもと、開発に着手しました。
ナノイー搭載の初代「ナノケア ドライヤー」は2005年に発売され、今年で20年目を迎えます。
最初は空気清浄機から生まれたのですね。
そうですね。出発点は同じナノイーですが、現在では空気清浄機は脱臭や除菌に、ドライヤーは髪への潤いに特化した研究が進められていて、少し性質が変わってきています。ナノイーが髪を潤すメカニズムとはどんなものですか?
髪のキューティクルとキューティクルの間には、親水性のあるわずかな層があります。そこに微細なナノイーが入り込むことで、髪の内部まで潤うことができます。ナノケアシリーズの特徴を教えてください。
ナノケアは誕生以来「乾かすだけでヘアケアができる」「早く乾いてきれいに仕上がる」をコンセプトに商品を進化させてきました。そして2019年には、従来のナノイーの18倍の水分を発生する「高浸透ナノイー」搭載のドライヤーを発売し、毛髪の水分増加量を従来ナノイー搭載商品に対して1.9倍まで高めることができました。しかしながら、発売時にはすでにさらなる髪ケア効果の向上、そして毛髪だけではなく地肌や肌の潤いを高めるために「もっとナノイーの水分発生量を多くできないか」と、次の開発をスタートさせていました。
そして約5年の開発期間をかけて、これまでの「高浸透ナノイー」に比べて最大10倍[2]の水分発生量を実現するナノイーデバイス「高浸透ナノイー第2世代」の開発、そして髪ケア効果を高めることに成功しました。
その第2世代を搭載しているのが、今回発売された「ナノケア アルティメイト」ということですね。このドライヤーを開発するに至った背景を教えてください。
2024年3月現在、ナノケアの累計出荷台数は1,700万台を突破(2024年3月現在)と、多くのお客様に支持をいただいています。そして約9割のお客様には満足をいただいているのですが、中には「もっと潤いがほしい」、「まだパサつく」、逆に「潤いすぎる」というお声もいただいていました。また、お客様がドライヤーに求められる2大要素が「速乾」と「ヘアケア」なのですが、その追求はもちろんのこと、さら に「ドライヤーの概念を変える、今までにない商品でお客様に感動を」というコンセプトで開発を進めてきました。
そのため、商品開発において、2つの大きな目標がありました。1つ目は誰もが高い効果を実感できる圧倒的な潤いとヘアケア効果です。そして2つ目は、理想のヘアスタイルに導くドライヤーです。
パナソニックでは長年お客様の髪悩みを調査しているのですが、「パサつき」、「うねりやクセ」、「ボリュームのなさ」、「手触り」の4つが大きな髪悩みであることが分かりました。そこで、きれいに速く乾かすだけでなく、髪悩みに合わせたヘアスタイルやシルエットが完成するドライヤーを目標にしました。
結果、髪の悩みに合わせた4つのメニューが搭載されています。