和菓子に添えられている楊枝でお馴染みの「クロモジ」。そのクロモジが、近年美容成分として注目を集めている。
「実はクロモジは環境保全にも寄与する植物としても注目されています」と語るのは、「
uka(ウカ)」代表の渡邉弘幸さんだ。
今年7月、ukaは「
リジェネラティブ グッド」シリーズをローンチ。クロモジウォーターを配合した「uka IZU シャンプー」と「uka IZU コンディショナー」を発売した。クロモジにはどのような効果があるのか、なぜ環境保全につながるのか、渡邉さんに話を聞いた。
ukaについて教えてください。
ukaは1946年、理容室として創 業しました。以前は「エクセル」というブランド名でしたが、ネイルオイルを発売するタイミングで「さなぎが蝶になるように、人々が羽化するお手伝いをしたい」という思いを込めて、「uka」と屋号を変更しました。また「あなたと私と地球が、もっときれいに、うれしくなることを増やしていきたい」をコンセプトに、環境にもやさしいトータルビューティーサロン発の商品を手掛けています。
今回発売されたアイテムは、クロモジがキー成分になっていますが、クロモジとはどのような成分でしょうか?
クロモジの枝葉は、「ウショウ」という名前で、生薬としても使われています。高ぶった神経を静めて安眠に導き、整肌作用、痰や咳を鎮める効果があります。また、クロモジの主成分であるリナロールは、抗菌作用があることでも知られています。今回、クロモジを採用した理由を教えてください。
ukaでは、これまでクロモジの抗菌力に着目して、かゆみに特化した「アンチイッチシャンプー」などに、京都のクロモジを使用していました。ただ、コロナ禍あたりから、ハイトーンやブリーチがトレンドになり、それに伴い頭皮や毛髪を傷めるお客様が増えてきたんですね。髪の健康を維持するためには、土台となる地肌を整えることが大切です。そこでクロモジの抗菌効果や抗酸化力が荒れた地肌に有効であると考え、キー成分にすることにしました。
また、クロモジの香りにはリラックス効果もあります。今回の商品はクロモジウォーターを10%も配合しているので、クロモジの華やかな香りを楽しむことができますし、ヒノキやシダーウッドなどの精油も配合することで、伊豆の雨、土、森、海を思わせるウッディローズの香りを実現しています。
もうひとつ、ukaでは現在「リジェネラティブ グッド」というスローガンを掲げているのですが、 クロモジは環境保全にも有用な植物です。そのためクロモジで地肌だけでなく、環境も整えていきたいという思いもありました。
山肌も整えるクロモジの「リジェネラティブ」力
持続可能な「サステナビリティ」の次のアクションとして、再生を意味する「リジェネラティブ」が世界的にも進んでいますが、クロモジは環境にどのように寄与するのでしょうか?
元々、僕は趣味でサーフィンをしていたことから、海の環境保全に興味を持つようになりました。そんななかで知り合ったのが、元プロサーファーであり、海洋学者であり、さらに静岡県・下田でクロモジの栽培も行っている佐藤延男先生でした。佐藤先生とお話をするなかで、衝撃的だったのが「海の砂漠化」という現状でした。海の砂漠化とはどういうことでしょうか?
日本は高度成長期の建築ラッシュで、杉や檜の植林事業を進めてきました。ところが需要の低迷により、その多くが放置され、間伐が行き届かなくなりました。間伐が行われなくなったことで、木々が密集し、地面に光が届かない「暗黒の森」が日本中に生まれています。陽の光が届きませんから、草花は育たないし、腐葉土も生まれません。
結果、土がミネラル不足になって、貧弱になってしまった。こういった土地は大雨や鉄砲水で土砂崩れを起こしやすく、その土砂は川や海に流れ込み、砂浜を塞いでしまう。つまり陸だけでなく、海の生態系をも変えてしまっているのです。
そこで佐藤先生はご自身で山に入り、間伐を進めてきました。その活動の中で、森に光が差すようになると、クロモジが自生することがわかったというんです。クロモジには木々の成長を助ける効果もあるそうで、クロモジが育っているということは適切な自然環境になっている証しでもあります。