先端の皮膚科学と官能的な使用感にこだわり、真のラグジュアリーを追求し続けてきたコスメデコルテが、化粧品開発に革命を起こした。世界ではじめて[1]、身近な肌悩みである「毛穴ケア」の商品処方計算に「量子コンピューター」を導入したのだ。
サイエンスと人の力を融合したものづくりの舞台裏を、
株式会社コーセーの研究者である吉川さんと帯金さんに取材した。
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吉川 健太郎(よしかわ けんたろう)
コーセー研究所 メイク製品研究室
2011年入社後、クレンジングを中心にスキンケアやヘアケアの開発に従事。2019年より先端技術研究室にて、量子コンピューター関連の研究をスタートする。溶解度パラメータを粉体分散に応用する技術の研究により、2024年日本化粧品技術者会学術大会にて、最優秀口頭発表賞を受賞。
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帯金 駿(おびかね しゅん)
コーセー研究所 先端技術研究室
2020年入社後、学生時代におけるAIを用いた画像解析の研究経験を生かし、先端技術研究室においてデータサイエンティストとして活動中。量子コンピューターなど計算機を用いた化粧品開発や、画像解析による新たな老化指標の開発など、数理的なアプローチで美容の課題に取り組んでいる。
1000億通り[2]の計算をたった10秒で! 化粧品開発の常識を変える「量子コンピューター」
そもそも量子コンピューターと一般的なコンピュータ ーの違いとは何ですか?
一般的なコンピューターは、様々な工夫の仕方はありますが、基本的には与えられた組合せをひとつずつ順に計算していくイメージです。化粧品処方の開発においては、「成分と配合量の組み合わせ」が課題ですが、ほんの少し成分数を増やすと、組合せが爆発的な数になってしまう。総当たりで計算するとなると、解くのに何年もかかるような課題になってしまいます。
帯金では、量子コンピューターはどうかというと、計算に「量子力学」の性質を利用しています。様々な組合せの可能性を、同時に重ね合わせたような状態を作り出せるんですね。