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2023.02.22

「必要としてくれる人に、必要な量だけを製造し届ける」 サステナブルなアパレルブランド「0 STOCK TOKYO」

株式会社ワンハンドレッドトウキョウが手掛ける「0 STOCK TOKYO(ゼロストックトウキョウ)」は、「必要としてくれる人に、必要な量だけを製造し届ける」を掲げた、完全受注生産型のジェンダーレスアパレルブランドだ。
既存のファッションサイクルとは異なるクリエーションモデルで、地球環境に配慮するだけでなく「クラフトマンシップの永続」を目的とした、新しいモノづくりの形を提案している。
具体的には、生産タイミングを工場に一任するため、商品到着は最長で1年後となる可能性もあるという。
そこで今回、同社の代表取締役社長・大和聡さんに、事業を立ち上げた経緯や製品へのこだわり、今後の展望などについて聞いた。
PROFILE|プロフィール
大和 聡(やまと さとる)
大和 聡(やまと さとる)

株式会社ワンハンドレッドトウキョウ
代表取締役社長

余剰在庫を一切抱えないブランドを立ち上げる

完全受注生産型ブランドを立ち上げた背景は何だったのか。リサイクルしたポリエステルを使うなど、サステナブルな原料を使うことは、すでに大手の商社や原料メーカーが行っていた。それに対して、同社はモノを生産する上流から下流まで全員が幸せになるように、在庫を持たず、工場の課題を解決する仕組みを考えた。
そこで、余剰在庫を一切抱えないことを示す『0 STOCK TOKYO』という名前をつけ、『クラフトマンシップ永続への取り組み』を掲げ、衣服の生産のタイミングは工場に任せることでサステナブルな活動を実現している。
「国内におけるアパレル品の国産比率は1991年だと51.8%でした。しかし2020年の時点では2.1%まで減少しています。世界の名だたるブランドの生産を担ってきた国内の工場が、苦しい思いをしながらモノづくりをしています。
さらに、工場は繁忙期には発注が重なり労働的な負担がかかる一方で、閑散期には生産ラインに空きができ、縫製工員の雇用維持が難しくなるという問題を抱えています。
そのため、今の時代に合った、工場も永続できるようなモノづくりをしたいと考えています。会社の規模はまだ小さいですし、今すぐ工場の稼働率を上げられるまでには至っていませんが、未来の形を築き上げていきたいです」

『ミニマリストが最後に残す服』をコンセプトに長く愛されるデザインを手掛ける

工場の稼働が厳しい状況のなかで、なぜ今まで同じような取り組みがなかったのだろうか。大和さんは、「ブランド側が工場のタイミングで衣服を作る仕組みを、お客さまに理解してもらえないと思っていることが原因ではないか」と話す。
では、『0 STOCK TOKYO』の商品を「お客さまが待ってくれる服」にするために、どんな工夫をしているのだろうか。
同ブランドでは、『ミニマリストが最後に残す服』をコンセプトにしている。これは、ミニマリスト向けの製品を生産しているわけではなく、あくまで長く愛用されるデザイン、耐久性に徹底的にこだわった商品作りをしていることを示している。
たとえば、裏側の縫い目がすべてパイピングで洗ってもほつれない製品など、見えない部分にもこだわっている。
原価率について、通常のブランドだと25%ほど、高くても30%ほどだが、卸しをしないことを前提として、同ブランドでは50%ほどになっている。製品の到着を待ってもらう分、価値あるものとして還元する仕組みだ。
「手に取って触ってもらい、一人ひとりのお客さまに価値を伝え、『これだったら数か月から1年、待ってでも欲しい』というきっかけ作りをしています」と大和さんは語る。
一方、工場の反応はどうだろうか。まだ工場に対しては、納得できるようなロットや量を発注できていないのが現状だ。それでも協力してくれるのは、ものづくりに愛があり、一緒に業界を変えようと『0 STOCK TOKYO』の考え方に共感してくれている工場だという。
また、同ブランドでは縫製などの作りが難しい衣服を扱っていて、通常の製品より3倍ほどパーツが多いものもある。工場としては簡単な製品を製造するより技術力の向上を見込めるだけでなく、工員としても作る楽しみを見出し「もっとこだわったアイテムを手掛けていきたい」という声も上がっているとのことだ。
「今後はポップアップストアでの受注生産を広げていくことで、工場にも喜んでもらえるようなロットにしていきたい」と大和さんは意気込む。

新しいファッションの製造の形を広げていきたい

ユーザーにはリピーターも多く、商品自体やモノづくりのプロセスに共感してもらっているので、今後の課題はタッチポイントにあると考えている。写真では伝わらない素材の質や機能について、展示会などで試着サービスを行い、伝えていきたいそうだ。
「うれしいことに、『0 STOCK TOKYO』に出合えてよかったという声をたくさん聞きます。この取り組みをもっとたくさんの人に知ってもらって、お客さまも僕らも、生産者さまも幸せになるようなブランドを作っていきたいです。100年後の未来に向けて、新しいファッションの製造の形を広げていきたいです」
#Sustainability
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