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2023.12.06

「MA-1」の代名詞「ALPHA INDUSTRIES(アルファ インダストリーズ)」のルーツを探る

1980年代、1990年代そして2000年代と、時代の移り変わりとともにさまざまな流行が生まれた。そんななか「MA-1」は、必ずと言っていいほどファッションアイコンとしてフィーチャーされてきた。いまやカジュアルファッションには欠かせないアイテムだ。そんなMA-1の歴史を今こそ紐解き、そのルーツを確認しておこう。今回は株式会社エドウイン 営業本部 ALPHA事業部 ALPHA営業課長代行の近藤貴史さんにお話を伺った。
1970年~1980年頃のALPHA INDUSTRIES社
1970年~1980年頃のALPHA INDUSTRIES社
1986年の工場内の様子
1986年の工場内の様子

「ALPHA INDUSTRIES」社のルーツは前身会社となる「Dobbs INDUSTRIES」社

最初に「ALPHA INDUSTRIES(アルファ インダストリーズ)」(以後:ALPHA)社の歴史に触れていこう。
「ALPHA社はもともと『Dobbs INDUSTRIES(ドブス インダストリーズ)』(以後:Dobbs)という社名でアメリカのテネシー州、ノックスビルで始まりました。1959年までDobbs社の社名を使っており、その後ALPHA社に社名変更します。
1990年代までは全てmade in USAだったので、ノックスビルの工場が生産の中心だったと思います。2000年代に入りワシントンへ本社機能を移し、現在に至ります。
創業者は『Samuel Gelber(サミュエル・ゲルバー)』氏という人物で、写真から海軍だったということがわかります」
創業者のSamuel Gelber氏とGelber夫人
創業者のSamuel Gelber氏とGelber夫人

MA-1の前身モデル「B-15」モデル

MA-1のルーツを辿るには、前身モデルとなる「B-15」の話にさかのぼる。B-15モデルのディテールと仕様がのちのMA-1へと繋がっていく。
「MA-1は1950年代に誕生するのですが、その前にB-15というモデルがありました。B-15はナイロンフライトジャケットとして戦闘機に乗る際に着用されていたものです。
MA-1はボアの襟が付いたデザインになっているのですが、当時の中綿はコットンにウールを混ぜた硬く重たいものでした。袖のリブもウール素材のものが使われています。
ポケットにはフラップがなくドットボタンで留めだけの仕様で、両脇や胸にはボックスタブ、オキシジェンタブという酸素マスクのホースをクリップで留めるパーツなどが付いていました。左袖にはU.S. Air Forceのマークがプリントされており、今のMA-1とは異なる部分が多々ありました。
戦闘機もジェット機に進化し、ヘルメットなどの装備も進化していくなか、襟のボアなどもいらなくなり、MA-1はB-15のモディファイ版として進化していきます」

MA-1の昔と今

1958年、MA-1がU.S. Air Forceのフライトジャケットとして採用される。65年が経った現在のMA-1とディテールや仕様を見比べていこう。
「当時はB-15からボアの付いた襟がなくなっただけで、その他のディテールは基本的にはあまり変わりませんでした。現在MA-1といえば裏地がレスキューオレンジといわれるオレンジ色なのですが、まだこの頃は表地と同系色のものでした。
その後、1960年代に入り徐々に現在のディテールに近づいていきます。ボックスタブ、オキシジェンタブやU.S. Air Forceマークがなくなり、両脇のポケットにはフラップが付きます。裏地がレスキューオレンジになり、ウールだったリブはアクリル素材に、中綿もポリエステルになり軽量化され、1970年代には現在のディテールになっていきます」
Dobbs社製のMA-1、1958年の初期モデル
Dobbs社製のMA-1、1958年の初期モデル

MA-1がファッションアイコンとして世界に広まったルーツは軍物の民間放出品

いわゆる軍物のアイテムで“民間放出品”という言葉を聞いたことがある人もいるのではないだろうか。この“民間放出品”がMA-1がファッションアイコンとして広まったきっかけなのではないかと考えられる。
「軍物の民間放出品とは、アメリカ軍への供給分以上の生産能力があったため、その余剰分を衣料品として一般に販売したものです。リーズナブルで購入できる場所も多く、タフで暖かい軍物の製品は広くファッションとして普及していきました。
ここでALPHA社の現在も使われているロゴにまつわるお話があるのですが、ALPHA社はアメリカ軍に供給していたものと民間へ放出するものをタグのデザインを変えることで管理していました。アメリカ軍に供給するタグには1本線を、民間へ放出するものには3本線のデザインのものに区別し、この3本線とALPHA社の“A”を組み合わせたのが、ALPHA社のロゴマークになったそうです」
写真向かっ�て左上、中央に黒い1本線が入っているものが、アメリカ軍供給品のタグ <br>右上、中央に黒い3本線が入っているものが、民間放出品のタグ <br>左下、3本線が入ったALPHA社初期のロゴマーク <br>左下、3本線が入った現在も使われているALPHA社のロゴマーク
写真向かって左上、中央に黒い1本線が入っているものが、アメリカ軍供給品のタグ
右上、中央に黒い3本線が入っているものが、民間放出品のタグ
左下、3本線が入ったALPHA社初期のロゴマーク
左下、3本線が入った現在も使われているALPHA社のロゴマーク
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