Fashion Tech News symbol
Fashion Tech News logo
2023.12.18

タスマニア島生まれのタフなブーツ「Blundstone(ブランドストーン)」の名品「ORIGINALS(オリジナルス)」を徹底解剖

ブーツを履くにはちょうどいい季節になってきた。寒さから足を守るだけではなく、そのタフさとルックスからおすすめしたいのが「Blundstone(ブランドストーン)」の名品「ORIGINALS(オリジナルス)」だ。
ファッションとしてはもちろんだが、このブランドにもまた語り継がれる歴史がある。今回は、Blundstone日本総代理店の株式会社シードコーポレーション 企画開発・MD部 岩本洋亮さんにブランドの歴史とアイテムについてお話を伺った。
1940年代に撮影されたBlundstoneの工場写真
1940年代に撮影されたBlundstoneの工場写真
「Blundstoneは1870年、オーストラリアのタスマニア島で生まれました。イギリス人のジョン・ブランドストーン氏が移民としてタスマニア島へやってきたところから始まります。イギリスからブーツなどを輸入し販売することを生業にしていたのですが、もともと馬具を作る技術を持っていたブランドストーン氏が、現地で手に入る材料でオリジナルのブーツを作り始めたというのがすべてのルーツとなります」
1800年代後半に撮影されたブランドストーン家の写真
1800年代後半に撮影されたブランドストーン家の写真

軍に供給するほどのクオリティ

Blundstoneの製品が昔からタフで優れていることが裏付けられる歴史が残っているという。時代に合わせて、さまざまなニーズに応えてきた靴作りのお話を引き続き伺っていこう。
「第1次世界大戦時にオーストラリア軍に10万足のブーツを供給していた、それは第2次世界大戦時も続きました。当時のアイテムが残っているのですが、アウトソールにスパイクがついていてグリップ力が強いという特徴があるものでした。
戦争が終わるとこのブーツをもとにして作られたワークブーツに生産がシフトしていき、鉱石の製錬場の作業員やタスマニア州の警察官用のブーツに使われるようになっていきます。さらにエベレスト登頂の際のオーストラリア遠征隊や登山案内人のシェルパと呼ばれる人たちも、Blundstoneのブーツを愛用していたというエピソードが残っています」
軍、鉱石の製錬場、そしてエベレスト登頂とタフさが求められるシーンで選ばれていたブーツだったということが分かる。
1900年代初頭の工場の縫製室の様子
1900年代初頭の工場の縫製室の様子
第2次世界大戦中にオーストラリア軍に供給したブーツ
第2次世界大戦中にオーストラリア軍に供給したブーツ

ヒントは「The Beatles(ザ・ビートルズ)」のチェルシーブーツ

1969年、現代まで定番として愛されるORIGINALSが誕生する。歴史と技術は継承しつつ新しいアプローチで生まれた一足のようだ。
「ORIGINALSのブーツは当時世界的に流行っていた『The Beatles(ザ・ビートルズ)』時代のチェルシーブーツがデザインソースになっていまして、モッズなどの流れにいくのではなく、ミリタリーやワークの要素、快適な履き心地と耐久性は残しつつ、ファッションという位置付けで履けるデザインとして誕生したということです」

ORIGINALSのソールと革

ORIGINALSは今日までそのデザインが大きく変わることなくリリースされているが、素材や製法はアップデートし続けているという。ここからはORIGINALSのものづくりの部分をお話しいただこう。
「まずソールのお話をさせていただくと、1980年代はPVC(ポリ塩化ビニル)素材を使っており、その後PU(ポリウレタン)、現在はTPU(熱可塑性ポリウレタン)と、時代と共にソールの原材料は移り変わっていきます。1980年代からはソール成型とアッパー接着を同時に行うインジェクション製法という、接合部に隙間がなく、密着性が高い製法で作られています。
これには水の浸入を防いだり、ソールの剥がれなどにも強かったりという特徴があります。このインジェクション製法の靴は、ドイツのデスマという機械で作られるのがポピュラーなものになっています。
アッパーの革は耐水性のある油性仕上げ剤を施したプレミアムレザーといわれる品質の高価な牛革を使っているのですが、皮革産業の厳格な国際基準LWG(レザーワーキンググループ)から認証されたなめし工場のものを使っています。
ディテール的にはサイドゴアのルックスを基調としつつも履き口についたプルストラップは、ORIGINALSの大きな特徴となると思います。指を入れて前後に引っ張って履くこの仕様はリリース当初から変わっていません」
履き心地へのこだわり
履き心地へのこだわり
ここまでBlundstoneの歴史と、代表作ORIGINALSのディテールについて伺ってきたが、その履き心地にも定評がある。ここからはその部分も見ていこう。
「かかと部分にXRD®(エックスアールディー)というクッション性が高く、衝撃をやわらげる効果がある高性能なクッション素材を搭載しています。さらにソールは屈曲性があり、軽量化もされています。
これは先ほどもお話ししたインジェクションという付け方からなるもので、ブーツなのですが、スニーカーのような履き心地を感じられるというのもORIGINALSの特徴になっています。そしてカラー展開も豊富でシーズンによって異なりますが、8~10色ほど展開しています」
ORIGINALSの断面図。かかとの内側に黄色く見えるのが、高性能なクッション材XRD®
ORIGINALSの断面図。かかとの内側に黄色く見えるのが、高性能なクッション材XRD®
1 / 2 ページ
この記事をシェアする