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2023.11.02

ミリタリーウエアからファッションアイテムへ:「バーバリー」が生み出したトレンチコートの歴史を辿る

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パリ現地時間2023年9月18日に「バーバリー(Burberry)」は、2024年サマーコレクションをロンドンで発表した。
ショー会場に選んだハイベリー・フィールズに“バーバリーチェック”の巨大なテントを特設し、グリーンのカーペットを芝生に見立てた遊歩道のランウェイでコレクションを披露。40年代の玉虫色や、太陽の光を屈折させるようにデザインされたサンシェード生地といったアーカイブからインスパイアされたピースに目を惹かれたものの、今回特筆すべきはメゾンの代名詞であるトレンチコートだ。
© Courtesy of Burberry
© Courtesy of Burberry
シャープな細身のシルエットにローウエストのベルトで、まったく新しいプロポーションへと進化した。トレンチコートはメゾンの主軸であり続ける一方、歴代のクリエイティブ・ディレクターが斬新な手法で常にその世界観を発展させ、トレンドを超えて日常着として世に定着している。
トレンチコートとともに進化し続ける「バーバリー」の歴史を振り返りながら、その魅力を再発見してみよう。

“ギャバジン”素材が画期的なレインコートへと繋がる最初の発明

「バーバリー」の創業者であるトーマス・バーバリー(Thomas Burberry)は、ドレスメーカーで下積みの修業を重ねた後、弱冠21歳の若さで自身の名を冠したブランド「バーバリー」を1856年にイングランド・ベイジングストークで立ち上げた。
「衣服は英国の天候から人々を守るものであるべき」という彼の考えのもと、最初に生み出されたのはトレンチコートのもととなるレインコート。1879年に繊維の一本一本に防水加工を施した、防水性と通気性に優れた生地“ギャバジン”を発明し、それを用いたレインコートはたちまち大ヒットを飛ばした。
ノーベル平和賞受賞者でもある北極探検家や、当時英国での長距離飛行記録を達成した空軍准将が着用した背景からは、このコートがいかに実用性に優れ、革命的であったかが見て取れる。エドワード8世をはじめ、英国王室からも高く評価された同メゾンは、後にロイヤルワラント(王室御用達)の称号を2度も授与され、ラグジュアリーブランドとして成長していくこととなる。
© Courtesy of Burberry
© Courtesy of Burberry

兵士のための機能的なミリタリーウエアが誕生

20世紀初頭に、陸軍省から陸軍と海軍の制服デザインを依頼されたバーバリー。1912年にトレンチコートの前進である、タイロッケン(tierocken)コートの専売特許を得る。
これは、ベルトを腰に巻いて留め具で固定するギャバジン製のコートで、英国人士官用にデザインされたもの。20世紀初頭の第1次世界大戦が間近に迫りはじめた頃、兵士が塹壕(銃撃や砲撃から身を守るための穴)内での厳しい環境にも適応できるよう、タイロッケンコートをアップデートして機能性を高めたトレンチコートが生み出された。
トレンチの名称は、英語の塹壕に由来する。戦闘から兵士を守り、終戦後に一般向けに製造されると市民の間で一気に普及していった。

性別を問わないファッションアイテムとして昇華

英国軍のために開発されたトレンチコートは、はじめは男性向けであったことが分かる。
銀幕の世界では名だたる名優たちが「バーバリー」のトレンチコートをまとって勇ましい男性像を演じてきたが、その抜群の機能性と端正なルックスは女性たちをも虜にした。
映画『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘップバーンがトレンチコートをドレスのようにまとっただけでなく、『シェルブールの雨傘』ではカトリーヌ・ドヌーヴがラフに羽織ってフランスらしいノンシャランな魅力で観客を魅了。
スーパーモデルのケイト・モスや女優エマ・ワトソンといった英国籍のセレブリティが着用したことで、性別や年代も問わないボーダーレスなアイテムとして確固たる地位を確立してきた。
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