メタバースの進化はファッションの領域に変革を起こしつつある。それが「アバターを着る」カルチャーだ。VRプラットフォームの中のアバターは性別も体型も自由自在。人気のアバターを製作するクリエイターやVRアパレルブランドが生まれ、マーケットも急拡大している。
何よりも「ファッション」が根源的に担ってきた変身願望をかつてないほど直接的に実現する点で面白い。現実の服をコーディネートするよりもっと自由で過激な形で、私たちはアバターを気まぐれに「着替え」ながら、新しいアイデンティティを表現するだろう。
その一方で、着替えることを前提としない特殊なアバターの形式がある。自身の身体を3Dモデルに変換した「リアルアバター」だ。その外見はユーザー本人そっくりであり、現実空間と仮想空間を同じ姿で活動できる。変身とは真逆の属性を持つが、ファッションの視点では「リアルアバター」はどう捉えられるのか。
本記事ではリアルアバターを使用するVRユーザー「DJ⑨」氏に取材した。
PROFILE|プロフィール

DJ⑨(でぃーじぇーないん)
現実/仮想/創作を漂うサイバーパンク野郎。
主な活動に「サイバーパンク集会」主催、メタバース内で撮影された映画『NINE-PREQUEL OF EMETH-』主演など。
生身をアバターとして使う
「リアルアバター」の特徴について教えてください。
一般に「アバター」と呼ばれているものは、Blenderなどで創作/構築された3Dモデルです。対して「リアルアバター」は、現実にある物質を3Dスキャンやフォトグラメトリなどの方法で3Dモデルに変換し、アバターとして使います。多くは「ユーザー本人の肉体」がそのままメタバース上のアバターになります。