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2024.10.30

職人の技と伝統が息づく道具を届けて300年:刷毛とブラシの専門店「江戸屋」

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いい仕事、心地よい暮らしのそばには、いい道具がある。
塗装や工芸品づくりだけでなく、掃除、料理、化粧と、仕事や生活のあらゆるシーンで活躍する刷毛(はけ)やブラシも、そんな道具の代表格なのではないだろうか。
職人たちの仕事道具から家庭用のブラシまで、時代の変化に合わせて多様な商品を作り続けてきたのが、東京・日本橋にある刷毛とブラシの専門店「江戸屋」だ。創業300年を超える歴史を誇る。
「使う人の気持ちになって使い勝手のよいものを届ける」をモットーに、馬毛や豚毛などの天然毛を用いて、熟練の職人によって手植えで生み出される商品を扱っている。今回は12代目の濱田捷利さんに、これまでのあゆみから刷毛・ブラシづくりへの思い、時代が変わろうとも守り続けてきたことについて話を伺った。
PROFILE|プロフィール
濵田 捷利(はまだ かつとし)
濵田 捷利(はまだ かつとし)

刷毛・ブラシの専門店「江戸屋」の12代目当主。1942年生まれ。大学卒業後、株式会社 江戸屋に入社。1979年に代表取締役に就任。毎年10月に行われる「日本橋 べったら市」保存会の会長を2003年から務め、江戸時代から続く伝統行事の運営にもあたっている。

江戸時代から連綿と続く刷毛づくり

はじめに、御社の事業について教えていただけますか。
工業用の刷毛をはじめ家庭用のヘアブラシ、洋服ブラシ、化粧用ブラシ、料理用の刷毛、たわしなど、多様な用途に合わせた刷毛とブラシを専門に販売しています。
創業以来作り続けている「江戸刷毛」は東京都伝統工芸品のひとつで、ふすまや屏風に使う経師(きょうじ)刷毛、更紗の染色や型紙染などに使われる染色刷毛、歌舞伎の化粧に使う白粉刷毛などがあります。
毛材には豚毛や馬毛、猪毛といった天然毛を使っていて、たとえば化粧刷毛は顔に当たるため、やわらかな山羊毛を使っています。
漆器を作るときに使われる漆刷毛には人毛を使っていて、毛が傷んできたり少なくなってきたりしたら木の持ち手の毛が出ている側をどんどん削っていくんです。持ち手が3cmほどになるまで使えるため、10年以上は使える刷毛です。
10年以上も使える刷毛があるなんて驚きです。事業のはじまりについても教えてください。
初代である利兵衛(りへえ)は刷毛師として京都で修行した後、将軍家お抱えの刷毛師として、絵師が使う刷毛や大奥の化粧刷毛を納めていました。その後、屋号を「江戸屋」とし、江戸刷毛の専門店として創業したのが1718年(享保3年)のことです。
明治時代になると軍服や軍靴をはじめ、ヨーロッパの文化が日本にどんどん入ってきました。そういった生活様式の変遷に合わせ、刷毛づくりに加えて、ヘアブラシや洋服ブラシなどブラシの製作もはじめたのです。
父は私が若い頃に亡くなっていて、店は先代である祖父と祖母が営んでいました。私は長男でしたし、自分の家が老舗であるということも聞かされて育ってきましたので、自然と店を継ぐものだと思っていました。37歳で当主となってからあっという間に45年の月日が経ちましたね。
日本橋にお店を構えたのはなぜだったのでしょうか。
江戸屋が面している大伝馬本町通りはかつて木綿問屋が軒を連ね、商家が集まっている町だったんです。近所の染物職人に当店の刷毛を納めていたことからもこの地に店を開いたようです。
当時、このあたりが江戸の中でも屈指の商業地として栄えていた様子は、店内に飾ってある歌川広重の浮世絵「東都大伝馬街繁栄之図」にも描かれています。
このあたりはオフィスビルも建ち並ぶエリアですが、江戸屋の外観は趣たっぷりでひときわ目をひきます。店舗の建物は国登録有形文化財に指定されているそうですね。
現在の建物は大正時代、関東大震災の後に建てられたものです。看板建築といって 下が店舗で上が住居になっています。正面から見ると、窓の左右に施された6本のラインは刷毛を表現しているんです。
古くからある建築物でしたので、2010年に耐震性強化のため一度建物をばらして基礎をやり直しました。お金はかかりましたが「この建物を残したい」という思いもあって、以前の店舗をできるだけそのまま再現する形で改修しました。そうして完成した4ヶ月後に東日本大震災が発生したんです。ほんとうにギリギリのタイミングでした。
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