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2024.01.12

古着に第二の人生を与える「Main Nué」:洋服の欠陥に可能性を見出すスウェーデン発リペアスタジオ

スウェーデン・ストックホルム滞在中に、「Main Nué(メインニュエ)」に出会った。日本未上陸ブランドである。
手刺繍による装飾や、レトロな雰囲気のアップリケ、一点一点異なる表情を持つパッチワークのジーンズなど、おもちゃを組み合わせたかのような遊び心とハンドメイドならではの温かみを感じるアイテムに思わず心惹かれた。
「Main Nué」は2019年に女性デザイナーデュオによって創設され、今夏に共同創設者の一人が退き、現在はマーヤ・フレイマンが一人でブランドを指揮している。マーヤは、幼い頃からファッションに強い関心を抱いていたという。
現在そんな彼女は、誰かにとってのゴミである古着に、新たな命を吹き込む創造主になっている。「Main Nué」の誕生から、循環型ビジネスモデルの仕組み、ファッションとは異なる分野へと向かう最終的なゴールなど、マーヤに活動のすべてを聞いた。
PROFILE|プロフィール
マーヤ・フレイマン(Maja Freiman)
マーヤ・フレイマン(Maja Freiman)

Main Nué 共同創設者

古い洋服に新たな命を吹き込むこと

まずは、「Main Nué」というブランド名の由来について教えてください。
リペアのデザインスタジオとして生まれたブランド名の由来は、そのコンセプトを想起させる名前にしたいという想いによるものです。活動の中核である、手やハンドメイドに関連するワードであることも重要でした。
手を意味するさまざまな言語をリサーチし始め、フランス語の“マン(Main)”に辿り着きました。それから、“素手で作られた”という意味を念頭に置いて、フランス語で素手や裸を意味する“ニュエ(Nué)”を組み合わせて完成したのです。
リペア・リメイクのアイディアはどこから生まれたのでしょうか。
リペア・リメイクをベースにビジネスを始めようという考えは、おそらく幼少期の経験が関係しています。私は常にファッションに興味があり、子どもの頃は学校に着ていきたい服装について明確なアイディアを持っていたのを覚えています。
そこで、母がクローゼットに保管していた古着をリメイクして、雑誌で見たものに似た洋服を作り始めました。当時はリメイクやアップサイクルという意識はなく、手に入る素材をそのまま利用していただけなんですけどね。
その後、スウェーデン繊維学校でファッションを学び始めてからは、より伝統的な方法で縫製と洋服の作り方を学ぼうと熱心に取り組みましたが、自分が十分に上達しているとは決して感じませんでした。
それよりも、ものづくりの技術に興味を持ち、縦糸に直接布を織り込み、既存の洋服の形を変えるプロジェクトに着手しました。そのときに、私は自分がやっていることは洋服を繕うことの一種であることに気づいたんです。
それからあらゆる種類の修理に非常に興味を持つようになり、私の卒業論文や文集はもっぱら修理に焦点を当てたものでした。
リペア・リメイクのスタジオとして創設し、コレクションを展開し始めたのはいつからですか?
実際にはその逆なんです。修理のコンセプトをどのように形にできるかを探るために、まずはコレクションの製作を開始しました。
コレクションを構築することで、顧客に提示できる表現の幅を広げることができ、約1年前からリペアサービスを提供するようになったんです。
リペアに需要があることに気づいてからは、ブランドとしてよりユニークになり、私自身も人々の古い洋服に新たな命を吹き込むことにもっともやりがいを感じられ、重点を置き始めるようになりました。

直感がすべて

どのようにして古着や廃棄布、ボタンやアップリケといった素材を収集しているのでしょうか。また、その際の判断基準についても教えてください。
元共同創設者アルバと私は以前、会社に所属して中古品の調達に取り組んでいました。寄付された古着が分類され、価値が判断され、店舗で販売するために梱包されるまでの流通に携わっていたのです。
穴や汚れなどの欠陥により、多くの良質で高品質の素材が無駄になるのを長年目の当たりにしてきました。現在「Main Nué」で扱っている古着や素材は、私達がそれぞれの職場で保存してきたものです。
そのおかげで素材のストックをかなり増やせましたが、これ以外にも新たに寄付された古着もたくさんあります。誰もが処分したいものを持っており、そこから何かを生み出してほしいと願う人もいることにとても感謝しています。
素材を調達する際の焦点は、品質と欠陥が何であるかということ。リメイクの主題は異なるさまざまな手法で修復することであるため、破損や欠陥状態を確認することは非常に重要であり、もっとも興味深いプロセスでもあります。ここは、直感がすべてなのです。
さらに、コレクションで製作中だったり、顧客のために修理したりしている洋服を補完するために、特定の色や素材を探すこともあります。
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