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2022.11.17

バッシュとストリートカルチャーを結び付けた傑作! ナイキ ダンクの歴史を紐解く

1985年に、エアジョーダン1と同時期に発売されたナイキ ダンク。バッシュながら現在はストリートのアイコンとして定着している。今回は、スニーカーヘッズの聖地「スニーカーショップSKIT」の代表、鎌本勝茂さんにナイキ ダンクの歴史をはじめ、その逸話や魅力まで伺ってきた。

全米カレッジバスケNCAAの強豪チームのカラーモデルからスタート

1985年に誕生した「ナイキ ダンク」。バスケットボールシューズとしてデザインされたシューズは当時、バッシュといえば白が当たり前だった時代に大胆なカラーを配したことでかなり斬新なモデルだった。全米でNBAに勝るとも劣らない人気を誇るNCAA(全米大学体育協会)に所属する強豪チームに支給し、シェアの拡大を狙ったプロダクトだっただけに、そのチームのカラーを「ナイキ ダンク」に配したというわけだ。その歴史を鎌本さんはこう語る。
1985年当時のDUNKには「BE TRUE TO YOUR SCHOOL.(自分の学校に誇りを持て)」というキャッチコピーが掲げられた。上段左から、シュラキース大学、ネバダ大学、ミシガン大学、アイオワ大学。下段左からセントジョージ大学、ビラノバ大学、ケンタッキー大学のカラーだ
1985年当時のDUNKには「BE TRUE TO YOUR SCHOOL.(自分の学校に誇りを持て)」というキャッチコピーが掲げられた。上段左から、シュラキース大学、ネバダ大学、ミシガン大学、アイオワ大学。下段左からセントジョージ大学、ビラノバ大学、ケンタッキー大学のカラーだ
「その当時、サンフランシスコの大学に通っていて、その後スニーカーショップの店主になった知り合いの話によると、ダンクはNCAAの大きな大会の試合がある会場でもナイキがテントなどのブースを出して販売していたこともあったそうです。このカラーブロックの斬新さは大きな魅力でしょうね。
当時の大学生選手の意見を聞いて、ソールの形状を変えたモデルもあったそうなのですが、基本的にはその界隈の人たちが履いていたシューズなので、現在のように大ヒットとなるスニーカーではなかったみたいで、その人気も徐々に落ち着いていったそうです」
ダンクの特徴として、くるぶし部分には外側にフィッティングを良くする補強パーツが配置されており、ホールド感も高めてくれる
ダンクの特徴として、くるぶし部分には外側にフィッティングを良くする補強パーツが配置されており、ホールド感も高めてくれる
スポーツを応援したことのある人ならわかるが、基本的に贔屓のチームを応援する際は、そのチームのカラーをまとって観戦するのがお約束。例えば、赤とグレーのカラーはネバダ大学のチームカラーを意識したもの。そうした背景から、コートに立つ選手が履くバッシュと同じカラーが発売されたら、ファンとしては買わずにはいられない。
そんな感じでNCAA界隈では、かなり人気を呼んだモデルとなりセールスも好調だったようだが、流通量の多さゆえに最終的にはワゴンセールとして売り出されたシューズもあったという。そんなシューズに目を付けたのがスケーターたちだった。
シェイプされたバックスタイルもダンクの特徴のひとつ。足首を凹ませたフレックスノッチによって屈曲性が向上。素材は耐久性のあるレザーを使用する
シェイプされたバックスタイルもダンクの特徴のひとつ。足首を凹ませたフレックスノッチによって屈曲性が向上。素材は耐久性のあるレザーを使用する
スケーターにとってスニーカーは消耗品。ダンクはアッパーに耐久性に優れるレザー素材を使用し、トリックなどでダメージを受けやすい部分やホールド性が求められる箇所に補強パーツを装着していた。ワゴンセールでプライスも手頃になれば、スケーターがダンクを選ぶのは必然だったのだ。

ストリートカルチャーとの結びつきがダンク人気を確かなものに

「NCAAでの人気が落ち着いたところで、ワゴンセールになっていたシューズに目を付けたのがスケーターでした。日本でも有名どころでいうと、1980年代後半ぐらいには、藤原ヒロシさんがスケートをするときに履いていたと証言しています。それが、日本での人気の起爆剤となったようです。そして、後にそれが『ダンクSB(スケートボーディング)』へと繋がっていくのですが、それはまた少し先の話ですね」
日本でダンクが注目されたのは、1992年ごろから盛り上がった古着ブームだった。ヴィンテージの“リーバイス501”にオールドスクールなバッシュを合わせるアメカジブームで、一気にダンクは主役の座を獲得した。ビッグサイズのダンクをシューレースをギュッと締めて履く姿は、90年代のストリートではよく見られた光景だ。その当時、所ジョージ氏がアイコンとなって、そんなブームを牽引していたのが記憶に残っている人も多いだろう。
ダンクの中でも人気なのが紺×イエローが基調の“ミシガン大学”のカラー。当時販売されたデッドストックの特徴として紐を上まで結んでいないのもポイント
ダンクの中でも人気なのが紺×イエローが基調の“ミシガン大学”のカラー。当時販売されたデッドストックの特徴として紐を上まで結んでいないのもポイント
そんなブームを経て、再びダンクが注目を浴びたのは、1998年に企画された“シティアタック”と呼ばれる日本でのダンクの復刻モデルの発売だ。鎌本さんが語ったように藤原ヒロシ氏が紹介したことから、日本では1995年頃からスニーカーカルチャーが誕生していくなかで、日本でもダンクを探し求める人が増えた。そこからナイキジャパンがこのモデルを復刻させるに至ったのだ。当時は世界的には見向きもされていなかったダンク。鎌本さんはこんなエピソードを語ってくれた。
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