2027年半ばにアポロ計画終了以来初となる、有人月面着陸を目指す国際プロジェクト「アルテミス計画」。日本からも2名の宇宙飛行士が参加予定だ。プロジェクト成功の鍵を握るのは、過酷な月面環境から飛行士の命を守る、最新の宇宙服である。
私たちの知らないところで、宇宙服はどのように作られ、進化してきたのだろうか。
宇宙開発エバンジェリストとして活躍し、東京・日本科学未来館で開催中の特別展「
深宇宙展」で監修を務める戸梶歩氏に、宇宙服の歴史から最前線、さらに私たちの日常への応用の可能性まで、詳しく話を聞いた。
PROFILE|プロフィール

戸梶 歩(とかじ あゆむ)
東京大学、東京大学大学院、米国スタンフォード大学大学院卒業後、ロッキードマーティン社に入社、日米の航空宇宙関連会社、慶應義塾大学大学院の特任講師を経て、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の火星衛星探査機MMXプロジェクトの主任研究開発員を務める。これまでに4機の人工衛星の開発に従事。現在はSF科学技術考証家としてSF作品の製作にかかわりながら、宇宙開発のワクワクを一人でも多くの人に伝えていく「宇宙開発エバンジェリスト(伝道師)」としても活動。
激しい温度差と高速の塵に耐えるための船外宇宙服
はじめに、宇宙服とはどんな服を指すのでしょうか。
その名の通り、宇宙で着用する服です。大きく分けて、宇宙船の外で活動するための「船外服」と、船内で着る「船内与圧服」の2種類があります。船外服は、船外でのミッションを遂行する際に着用します。背中には生命維持装置が搭載されたバックパックを背負い、ここから酸素や電力などを供給します。
若田宇宙飛行士が船外活動(EVA)で着用する船外活動ユニット(EMU) (©JAXA/NASA)一方、船内で着る宇宙服である船内服は「与圧服」とも呼ばれ、ロケットの打ち上げ時や地球への帰還時に着るものです。生命維持装置は搭載されておらず、生命維持機能は宇宙船が担っており、宇宙船と一体で動作します。