本格的なアウトドアギアを日常で使う。そんな嗜好を持つ都市生活者は少なくない。理由は明快だ。過酷なフィールドでの使用に耐えうるスペックは品質や機能性の保証であり、都会での暮らしを豊かにしてくれるからだ。
夏になると、各所で見かける
Tevaの「
ハリケーン」もまた、街で愛用されているアウトドアギアのひとつだ。アメリカ人のリバーガイドによる即席のアイディアによって誕生したサンダルは、足にぴったりフィットして、かつぬれた路面でも滑りにくい。そして機能美という言葉が似合う無駄のないデザインは、現代のファッションにも調和する。
今回はスポーツサンダルの王者に上り詰めた「ハリケーン」の足跡を追っていこう。
「ハリケーン」を知るには、Tevaというブランドの成り立ちについて知る必要がある。
「Tevaは1984年、アメリカ・アリゾナ州のグランドキャニオンで誕生しました。ブランドの生みの親である人物は同地でリバーガイドを務めていました」
そう語ってくれたのは、TevaのマーケティングとPRを担当する鈴木園子さんだ。
「当時、ビーチサンダルのようなトングタイプのサンダルを履いてガイドをしていましたが、水辺では簡単に脱げてしまうことに不満を感じていました。
そこである日、たまたま近くにあった腕時計の面ファスナーストラップをトングの緒にくくりつけて、脱げないように足首を固定したのです」
1960年代、『野生の思考』を著した文化人類学者、クロード・レヴィ=ストロースは「ブリコラージュ」という概念を提唱した。これはフランス語で、「ありあわせの道具、材料を用いて自分の手でものをつくること」を意味する。
新たに作るのではなく、身近にあるもので作る。世界初のアンクルストラップ付きのスポーツサンダルは、まさにブリコラージュ的に誕生したのだ。
足にフィットして、脱げにくい。そんなサンダルの評判はアウトドアマンたちの間でどんどん広まっていった。
独自のストラップシステムが生むスニーカーばりのフィット感
そんなTevaの技術力と感性が結集されたモデルが、2002年にデビューした「ハリケーン」だ。履いてみると、まるでスニーカーのようなフィット感に驚かされる。「フィット感の秘密は3点で足 をホールドするユニバーサルストラップシステムによるもの。このシステムによって、足とのフィット感を高めるだけでなく、好みのホールド感に調整することも可能です」
アッパーに使われるウェビングのデザインも、「ハリケーン」の人気の理由だ。
「スポーツサンダルに使われるウェビングのデザインには、プリントや染色が用いられることが多いのですが、Tevaは、色やパターンを織りで表現するジャカード技術にこだわっています。そのため、質感が高まり、かつ履き続けても、深みのある色みが長持ちします」