1830年アメリカ、ペンシルバニア州で誕生した「
WOOLRICH(ウールリッチ) 」。古くはハンティングジャケットや「ARCTIC PARKA(アークティック パーカ)」というダウンパーカなど、長年世界中で愛されている名品を生み出してきた歴史あるブランドだ。今回は
WOOLRICH JAPAN INC. マーケティング部 部長 鈴琢磨さんに、WOOLRICHの200年近く続く長い歴史の中から、ポイントをピックアップしてお話を伺った。
アメリカ開拓時代に始まったWOOLRICH もともとはジョン・リッチという人物が毛織物工場をイギリスのリバプールでやっておりまして、息子のジョン・リッチ二世がアメリカに移住し、そこで毛織物工場を作ったというのが始まりです。当時はブランケットや靴下など、作った物を荷馬車に載せて村々に売りに行くような感じだったそうです。まさに開拓時代のアメリカの頃のお話です。ジョン・リッチ2世 WOOLRICHに残る古い資料、社屋などが写っている
バッファローチェックはWOOLRICHが元祖 WOOLRICHのルーツを語るうえでバッファローチェックのハンティングジャケットというキーワードははずせない。WOOLRICHと聞いてこのアイテムが最初に浮かぶ方も多いのではないだろうか?このアイテムにも語り継がれるエピソードがあった。「1850年代のことなのですが、鹿狩りの際にハンター同士が誤射してしまうとことを回避するために生まれたのがバッファローチェックと言われています。森の中で目立つように作られた柄で、しかも鹿は赤色を認識しないと言われており、機能を持った柄として生まれたチェックを使ったハンティングジャケットが誕生しました」
バッファローチェック
語り継がれるペンシルバニアタキシード 時系列になぞって話を進めていくとWOOLRICHは1860年代の南北戦争時には北軍に、1914年の第1次世界大戦ではアメリカ軍にブランケットなどの製品を支給する。軍へ製品を納めるには国内の企業で国内生産、さらに製品として優れていなくてはいけない条件のなか、WOOLRICHは長年にわたり製品を納めていた。そして1925年、バッファローチェックに続く、ハンティングチェックを発表し、その後も語り継がれる“ペンシルバニアタキシード”というアイテムに繋がっていく。「このハンティングチェックで作られたハンティングジャケットとパンツをセットアップで着るのが、ハンターの正装と呼ばれ、ペンシルバニアタキシードという呼び名がつきました。バッファローチェックもハンティングチェックにしても、ハンターが誤射の事故にあわないように作られた物なので、商標登録をしているわけでもなく、独占したりせずにみんなで使えるようにしたと言われています」
ペンシルバニアタキシード、セットアップの他にキャップやベストなどハンティングチェックのアイテムはさまざまあったようだ 年代は不明だが昔のWOOLRICHのカタログ。バッファローチェックのアイテムもハンティングチェックもいろいろとラインナップされている
WOOLRICHの代名詞と呼ばれる「ARCTIC PARKA」が誕生 1939年の南極観測や、再び第2次世界大戦では再びアメリカ軍へ、ブランケットなどの製品の支給を行う。そして1972年、その後のWOOLRICHにとってもっとも定番的でブランドを代表するアイテムとなるARCTIC PARKAが誕生する。その基本的なデザインや仕様は50年以上大きく変わることなく長きにわたって愛され続けるアイテムとなっていく。この大定番ARCTIC PARKAについて詳しく教えてもらおう。「アラスカから北米に天然ガスのパイプラ インを建設するという国家事業がありまして、そのため氷点下での作業着としてアメリカ政府から依頼を受けてデザインされたのが、このARCTIC PARKAです。
今、販売されているものはシルエットやダウンの量など細かい部分はリファインされているのですが基本的なデザインはずっと変わらずに作り続けられています。当時から60/40クロス[1] と呼ばれる防水、防風、耐摩耗性に優れており、1970年代のアメリカではアウトドアウエアやワークウエアなどで広く使われていた生地を使用していたと言われています。