フ ァッション領域における様々なテクノロジーの導入は、コロナ禍の影響もあり一層加速している。多種多様な方向で「ファッション」というものが変化するなか、衣服そのものもまた新しい方向へと向かっている。衣服自体をコンピュータ化していくウェアラブルデバイス、バイオマテリアル、高機能繊維など様々なアップデートや試みが登場する一方で、こういった新たな衣服をめぐっては肌に直接触れるアパレル製品ならではの難しさ、マーケットの大きさといった問題もあるだろう。
また、こういった開発やそこに至る研究の推進は、従来の担い手とは異なるところで展開されることも多いことから、ファッションの主流とは異なる特殊なものと捉えられてしまうかもしれない。だが、スマートウォッチがすっかり従来の時計に置き換わりつつあるように、衣服のアップデートもありうべき未来のひとつ。私たちの周囲にある素材やデバイスに、どんな変化が起きるのか?また、そういった課題に取り組む研究領域はどのような潮流にあるのか?
それを考えるうえでのヒントを存分に与えてくれるであろうイベント、東京大学大学院情報学環・学際情報学府、筧康明研究室によるトークイベント「What’s the Matter?」がスタートする。2021年に本格始動する本イベントだが、先んじて2020年6月25日にオンライン開催されている。今回は、その第1回の内容を追いながら、そこで提唱された「マテリアル・エクスペリエンス・デザイン」という考えに迫りたい。