マテリアル、情報、体験を繋ぐ試みとして、東京大学、筧康明・准教授が提唱する「 マテリアル・エクスペリエンス・デザイン」。 ファッション領域でも衣服や素材をアップデートする試みも加速するなか、私たちの周囲にある素材やデバイスへの探求、マテリアルを介したインタラクティブな体験を創出する試みは、衣服/ファッションの未来像を考えるうえでも重要な ヒントを存分に与えてくれるであろう。
そんな「マテリアル・エクスペリエンス・デザイン」にフォーカスした 東京大学大学院 情報学環・ 学際情報学府、筧康明研究室によるトークイベント「What’s the Matter?」の第3回が、2021年5月23日にオンライン開催された。 今回のゲストは、西陣織りの老舗企業である株式会社細尾の 代表取締役社長である細尾真孝さん 。株式会社細尾と筧康明研究室、そしてZOZOテクノロジーズの共同研究開発の成果展示 「Ambient Weavingー環境と織物」が開催されているHOSOO GALLERYから中継配信された。布という私たちの身体に最も近いマテリアルの可能性をめぐる、トークの模様をお届けする。
PROFILE|プロフィール
細尾真孝
HOSOO GALLERYディレクター / 株式会社細尾 代表取締役社長 MITメディアラボ ディレクターズフェロー 1978年、元禄元年(1688年)より京都で西陣織を手がける細尾家に生まれる。「工芸が未来をつなぐ」の哲学のもと、伝統的なきもの文化の継承と、西陣織の技術・素材をベースにしたラグジュアリーテキスタイルを展開。布を通じた美を追い求める事業を担う。
PROFILE|プロフィール
筧康明
東京大学大学院情報学環 准教授 インタラクティブメディア研究者/メディアアーティスト 東京大学にて博士(学際情報学)を取得後、慶應義塾大学にて専任講師・准教授を務め、MITでの滞在研究などを経て、2018年度より東京大学大学院情報学環・学際情報学府にて研究・教育に携わる。ディスプレイやインタフェース技術を活用し実世界体験拡張を目指す研究・作品制作に加えて、近年ではMaterial Experience Designというテーマのもとで、物理素材特性を操作するフィジカルインタフェースやインスターション作品を多数発表する。 Webサイト
長い歴史に培われた美の探究の精神 トークはまず細尾さんから、西陣織と株式会社細尾の歴史、そして現在の事業展の紹介からスタートした。株式会社 細尾は1688年に創業、西陣織というもの自体は1200年前から起源がある。特に京都が都だった1000年の間で、天皇家を始めとする多くのパトロンのもとで美を追求し続けてきたという。西陣と呼ばれ約5キロ圏内のエリアの中で生産され、それが今日にも継承されている。西陣織は全部で20工程があり、各工程にひとりずつ、総勢20名のマスタークラフトマンによって作られている。また全て内製化するのではなく、染めや箔を作る職人など分業化されていて、独立した職人のコラボレーションによって究極の美を作っていくのが特徴となるそうだ。 この記事は会員限定です。 登録すると続きをお読みいただけます。 会員登録でできること
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