そんな「マテリアル・エクスペリエンス・デザイン」にフォーカスした東京大学大学院情報学環・学際情報学府、筧康明研究室によるトークイベント「What’s the Matter?」の第2回が、2021年3月9日にオンライン開催された。今回のゲストは、食体験を通して私たちの感覚を揺さぶる作品を数多く発表されるアーティスト、food creation主宰の諏訪綾子さん。私たちの最も身近な身体感覚である『あじわい』というものは、アートやテクノロジーによってどのように拡張されうるのか?諏訪さん森の中のアトリエと繋いで繰り広げられた、筧准教授とのトークの模様をお届けする。
次にご紹介された作品が「journey on the table」という、5カ国で何年にも渡って開催されたプロジェクトである。テーブルの上で旅をするようにあじわう体験をするというコンセプトには、「食べること、あじわうこと、味覚は五感や五感以上の色々な感覚を総動員して感じるという意味で、すごく旅に似ている」という諏訪さんの考えが反映されている。3時間のフルコースディナーとして順番にテーブルに着席したままでいながら、まるで色々な場所を移動しているような体験ができるという作品であるが、それは非常なプリミティブな感覚をもってあじわう体験で、まるで動物になって草木をかき分けていくと、うっそうとした草むらのような奥に何かの食べ物を見つけて食べるといった体験をするものだという。