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森永邦彦:ファッションが変わる瞬間、進化のためのテクノロジー

テクノロジーの進化や地球環境の変化によって目まぐるしく変化する、私たちの衣服/身体環境。そんな今日におけるファッションの「作ること・纏うこと・届けること」とは、どういった状況にあるのでしょうか?Fashion Tech Newsリニューアル記念特集として、衣服や身体をとりまく技術的/社会的状況の変容について、また、そこから描きだされる未来像について、5名の方々へのインタビューから考えていきたいと思います。
PROFILE|プロフィール
森永邦彦

ファッションデザイナー。早稲田大学社会科学部卒業。大学在学中にバンタンデザイン研究所に通い服づくりをはじめる。2003年「ANREALAGE」として活動を開始。ANREALAGEとは、A REAL-日常、UN REAL-非日常、AGE-時代、を意味する。東京コレクションで発表を続けた後、2014年よりパリコレクションへ進出。現在はパリでコレクション発表を続ける。2019年フランスの「LVMH PRIZE」のファイナリストに選出。2019年度第37回毎日ファッション大賞受賞。2020年 伊・FENDIとの協業をミラノコレクションにて発表。2021年ドバイ万博に本館の公式ユニフォームを担当。

今日のファッション文化、および衣服や身体を取り巻く環境

コロナ禍で失われたもの

コロナ禍になって僕らのものづくりの方法も変わりました。パリに行って発表することもできなくなり、直接産地とやり取りすることもできずリモートになってしまいました。普段であればトワルを作って行う仮縫いの作業を全て3Dに変えて、それによってある種の距離は縮まり、ある面では今までにないもの、新しい伝え方ができた。
今までファッションの世界では起こらなかったことが急激に生じて、 変わっていく瞬間であるなと思いつつ、その中で失われているものが確実にあって。ひとつはフィジカルで感じていた洋服自体の重さ、その重力が、画面上のコミュニケーションでは失われている。先日発表したばかりの「GROUND」というコレクションでは、コロナ禍で失われたものを感じさせるようなコレクションをやりたくて、ファッションの王道であるランウェイと客席を天井に設置し、本来天井にある照明を床に設置することで、空間自体を変容させて、まるでモデルが天井を歩くようなコレクションを行いました。

ファッションではないものがファッションになる瞬間

今回コラボレーションしたPITTA MASKが登場したのは3年前ほどで、当時のコレクションにも協賛で入っていただきました。その当時はまだ、マスクをしてファッションショーを見たり、マスクをして道を歩くというのは日常ではない光景で違和感がありました。それがコロナ禍になって、みんながマスクをすることが当たり前になった。全くファッションの要素ではなかったものがアクセサリーと近いような、スタイリング要素のひとつになっていたり、自分の個性を表現するファッションとしての機能を持ちはじめている。マスクをつけてランウェイを歩くというのは今の日常における日常と非日常の境界線を探るような行為だと思っています。
今まで身につけていなかったものを当たり前に身につける瞬間とは、 身に付けるもの自体が変わるだけではなくて、街の景色さえも変わっていくでしょうし、日常自体が変わっていく瞬間だと思っています。ファッションではないものがファッションになる瞬間を、今、目の当たりにしている。全く違う分野にあるものがファッションの領域に入ってきた時に、新しい機能を纏う瞬間が訪れるだろうし、人の生活も変わると思っています。例えばメガネをかける行為がファッションとして当たり前になるように、それが人の感覚自体も変えるものだと感じています。

最先端テクノロジーの普及と、衣服や身体をめぐる状況

ものづくりを進化させるためのサイエンスやテクノロジー

僕が洋服を作り始めたのは2000年代初頭なのですが、その頃は手でパターンを引いて、店舗で洋服を買って体験するというのが当たり前でした。途中から世界がふたつに分かれて、物質的ではないECの世界でファッションを伝えて、ファッションを買うという行為が当たり前になっていきました。先端的なテクノロジーに着目したきっかけは、その中でものづくりがどう加速的に進化するかっていうことを考えたからです。今までに使われていない道具を使って洋服を作らないと、本当に新しいものは生まれないのではないかと思い、全く別分野にあるサイエンスの技術であったり、バイオの技術を洋服の中に取り入れようとしました。
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#Virtual Reality
#Virtual Fashion Show
#Wearable Device
#Smart Textile
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