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デイビッド・モントゴメリー「土を起点に考える、微生物と食・服の共生可能性」

ファッションレーベルwrittenafterwardsのデザイナーであり、ファッションを学ぶ場「ここのがっこう」の主宰でもある山縣良和氏とお送りする特集企画「生命の循環:装いの歴史と未来」。今回は、今回は、地質学者・デイビッド・モントゴメリー氏をお迎えします。
モントゴメリー氏は、これまでに「土」を切り口に、三部作となる『土の文明史(Dirt)』、『土と内臓 微生物がつくる世界(The Hidden Half of Nature)』、『土・牛・微生物 文明の衰退を食い止める土の話(Growing a Revolution)』を発表。「土」から考える、服、食といった人間の活動と微生物との共生関係の未来についてお聞きしました。
PROFILE|プロフィール
デイビッド・モントゴメリー(David Montgomery)
デイビッド・モントゴメリー(David Montgomery)

米ワシントン大学の地球・宇宙科学部(Earth and Space Science)教授。地質学者。地球の進化と、地形学的プロセスが生態系や人間社会に与える影響の研究を行う。

サムネイルは妻のAnne Bikle(アン・ビグレー)氏と。

「土と内臓」土と共存すること 

日常的に土と向き合う、実践から見えてきたこと

私たちが現在住んでいるノースシアトルの家にはサイドヤードがあります。購入当時、そこは芝生で覆われた古典的なアメリカの庭でした。芝生を取り除いてみると、そこには土(soil)ではなく、何の生命もない死んだ状態の泥(dirt)しかありませんでした。しかし、私たちはより豊かで多様性のある庭を望んでいたため、生物学者であり園芸家でもある妻のアンが、コンポストやマルチングを行い栄養を与え、時間をかけて生命を戻しました。その結果、私たちは今、元気で多様な庭を手に入れることができました。
土に健康と豊饒さが戻れば、植物は元気になります。私たちは、肥料も農薬も使わず、水も与えていませんが、すべてが健康に育っています。私たちは、微生物、クモ、ミミズ、鳥、そしてカラスを食べたワシもまた、ミミズを食べているように、庭に生命が戻ってきていることに気づきました。これは、地球上で生命が進化した順序を映す鏡のようなものでした。
そして、これは土壌が地上のすべての生物にとっていかに重要であるかを教えてくれました。健全な土壌の生態系があれば、健全な生命が宿り、栄養が循環し、結果、土の中の有機物がたくさんの植物を支え、花粉媒介者やハチ、それらを食べる鳥などの動物を支えることができます。
さらにこれは、私たちが地球に対して何ができるかということについても大きなメッセージを持っていると考えています。つまり、これまで行われきた地球の剥ぎ取り採掘ではなく、世界中の農地の土壌を健康で有益な生命体で再活性化するための、いわば地球規模のガーデニングを考えることができます。つまり、土地の健全性と肥沃度を再構築すれば、生命を維持する能力を高めることができるということです。プラネタリーマネジメント(planetary management)戦略として、長期的に持続可能な開発目標を達成することを考えると、私たちは地球上でどのように生活していくか考えることが重要になります。私たちの庭が教えてくれたのは、土に命を吹き込むことは可能であり、何世紀もかけず非常に早く実現できるということでした。つまり、現在と異なるやり方をとれば、迅速に、土地の肥沃度を回復することができるという、今後地球に暮らし続けていく人類にとっての基礎を示していると言えるでしょう。
モントゴメリー氏のサイドヤードの様子
モントゴメリー氏のサイドヤードの様子

土壌は文明の基礎である

私は、持続可能な農業という考え方は、人類が地球規模でどうすればいいのかを理解するために不可欠なものであり、今世紀中に実現しなければならないと考えています。地質学者の私にとっては、一世紀はとても短い時間です。本当に持続可能な農業への移行を始めるには、あと数十年しかありません。そして、私が考える持続可能な農業とは、土地の健康と肥沃さにかかっていると思います。 なぜなら、土の状態は文明の基礎と捉えることができ、私たちは長い間、その基盤を削り、劣化させてきたという背景があります。
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#Bio Fashion
#Sustainability
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