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ヴィクトリア・モデスタ 「技術革新とアイデンティティ、 ファッションの引き出し」

ロボットや義足の研究者であり、株式会社Xiborg・遠藤謙氏とお送りする特集企画「身体/衣服と機能」。今回は、2012年ロンドンパラリンピックの閉会式への出演が話題となり、その後もパラリンピックやテクノロジーのイベントへ登壇する義足のポップスター、ヴィクトリア・モデスタ氏をお迎えします。
義足とファッション、そこでのアイデンティティについて、遠藤氏自らインタビューした模様をお届けします。
PROFILE|プロフィール
Viktoria Modesta(ヴィクトリア・モデスタ)
Viktoria Modesta(ヴィクトリア・モデスタ)

1988年ラトヴィア生まれ、ロンドン育ちのポップスター、クリエイティブディレクター。モデルやMITメディアラボのディレクターフェローなどの経歴を持つ。これまでに「Only You」(2012)、「Prototype」(2014)、「One With The Ray of Light」(2021)などの音楽作品を発表。

「バイオニック・アーティスト」として

ディスニーやハリウッドから受けた影響
モデスタ幼少期多くの時間を病院で過ごし、その間にディズニーやハリウッドの映画をよく見ていました。そしてそれらの映画のように、クリエイティビティによってあらゆる状況や世界を新たに想像できるという考え方にとても刺激を受けました。自分の身体や人生・周囲の世界を構築できるという考え方がとても好きで、成長の過程で出会った表現方法が、私にとって非常に充実したものであると感じています。意図を持ったアートやアートアクティビズムは、文化に進化をもたらす上で最も強力であり、政治家よりもアーティストの方が世の中に影響を与えていると感じることもあります。
遠藤ラトビアで生まれ、その後ヨーロッパに移住したそうですが、どのようにアーティストとしてキャリアをスタートさせたのでしょうか?
モデスタ幼い頃音楽学校に通っていました。そこでステージやパフォーマンスを経験したことが、今の私の基礎を築いてくれたように思います。ロンドンで過ごした10代半ばにはサブカルチャーやアンダーグラウンドなファッションや音楽に興味を持っていました。とりわけアバンギャルドなパフォーマンスや映画、ファッションに夢中になりました。アーティストをはじめとする人たちが全く異なるイメージを作り上げるためにひたむきになる姿がとても魅力的に思えました。その後、10代後半からモデルやアートディレクション、スタイリングをはじめました。そして手術後、音楽活動を再開し、好みの世界を創造しその世界に入っていくことを、イベントや写真やビデオのアートディレクションや音楽制作などを通じて表現していました。
Photo by Nhu Xuan Hua
Photo by Nhu Xuan Hua
クリエイティビティで超えた困難
遠藤なるほど。ここに至るまでに直面した、壁や困難はどういったものがあったのでしょうか。
モデスタ最も困難だったのは、幼い頃の社会からの扱いを乗り越えることだったと思います。これは私がパラリンピックを常に強く支持している理由でもあります。ソビエト連邦崩壊後のラトビアで育った私にとって、当時の社会は異質な存在を受け入れてはくれませんでした。私が大きな夢を持っていることを理解してもらえず、信じてもらえませんでしたし、私がそのようなことをするのは可能だとも思ってもらうことができませんでした。そのため、自分を証明するためには常に特別な努力をしなければならないと感じていました。しかし、それから何年も経ち現在になって、ようやく、自分らしく自分を表現するだけで十分だと思えるようになりました。多くの人にとって自分のクリエイティブな個性や、アイデンティティを持つことはとても難しいことだと思います。そして、私もその点では特別なケースではないと思っています。
Photo by Nhu Xuan Hua
Photo by Nhu Xuan Hua
遠藤興味深いですね。4年前に一緒に登壇したイベントで、障害者に対する教育が十分ではないという話をしたのを覚えています。障害があるために活動が制限されることに対し、その境界線をどのように突破するのか、という教育が不足しているといった内容の話でしたが、どのようにして進んでこられたのでしょうか。
モデスタ正直に言えば、私は苦労して学んだように思います。私が子供の頃は自分はエイリアンであるかのように感じていましたが、現在の若い人たちを見ていると、多くの情報や知名度があり、ポップカルチャーの中ではかなりノーマライズされてきているように見えます。なぜなら、私たちは今、何世紀にもわたってタブー視されてきた、正常な身体とそうでない身体についての考え方を覆そうとしているときなのです。つまり、人々は肉体と人間としての知性や能力、資質は同じものではないということを理解し始めたところだと思います。
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#Wearable Device
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