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【水野大二郎×番匠カンナ×中村健太郎】「建築の視点から、VRが持つ可能性について考える」

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京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構教授の水野大二郎氏とお届けする特集企画「ファッションデザインとテクノロジー」。第4回は「建築とVR」をテーマに、バーチャル建築家の番匠カンナさんと、プログラマーで翻訳家の中村健太郎さんとの鼎談をお届けします。
それぞれ、建築学をバックボーンに持つお二人は、インターネット上でさまざまな人のインタラクションが生まれている現在、特にVR空間について、どのように考えているのでしょうか。またそこで注目している事象とは。お二人それぞれの観点からお話しいただきました。
PROFILE|プロフィール
水野 大二郎(みずの だいじろう)
水野 大二郎(みずの だいじろう)

1979年生まれ。京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構教授、慶應義塾大学大学院特別招聘教授。ロイヤルカレッジ・オブ・アート博士課程後期修了、芸術博士(ファッションデザイン)。デザインと社会を架橋する実践的研究と批評を行う。

近著に『サステナブル・ファッション: ありうるかもしれない未来』。その他に、『サーキューラー・デザイン』『クリティカルワード・ファッションスタディーズ』『インクルーシブデザイン』『リアル・アノニマスデザイン』(いずれも共著)、編著に『vanitas』など。

PROFILE|プロフィール
番匠カンナ(ばんじょう かんな)
番匠カンナ(ばんじょう かんな)

idiomorph主宰, 株式会社ambr CXO

「いまないところに空間を生む」というコンセプトのもと、リアルとバーチャルの境界線に全く新しい空間を創造する。

東京大学工学部建築学科卒業、同大学院建築学専攻修了、隈研吾建築都市設計事務所勤務を経て、主にXR事業デザインコンサルティング、VR体験ディレクション、VR空間設計を行う。ambr CXOとして「TOKYO GAME SHOW VR」ディレクション等、idiomorphとして「PARALLEL SITE」コンセプト設計、「バーチャルマーケット」会場ディレクション・制作、XRと建築に関する公演・登壇などを積極的に行う。

PROFILE|プロフィール
中村 健太郎(なかむら けんたろう)
中村 健太郎(なかむら けんたろう)

翻訳家・プログラマ・科学者

1993年大阪府生まれ和歌山県育ち。情報技術とデザイン・建築・都市の関係に関心。2016年慶應義塾大学SFC卒業後、NPO法人モクチン企画(現CHAr)ソフトウェアエンジニア、東京大学建築学専攻学術専門職員を経て、現在東京大学情報学環在学中。共訳書に『スマート・イナフ・シティ──テクノロジーは都市の未来を取り戻すために』(2022, 人文書院)。

情報環境が、私たちにどういう変化と影響を与えているのか

水野今回、「ファッションデザインとテクノロジー」をテーマにいろんな方にお話を伺っていますが、やはり人工環境、空間の問題について触れないわけにはいきません。そこで、専門としても近接する「建築」からの視点を盛り込みたく、この鼎談の場を設けました。
コロナ禍以前から、そもそもVR、AR環境が発達していく過程において新しい人と人、人と機械とのインタラクションが発生してきたと思います。
これについてはファッション産業に関わる社会人よりも、ティーンエイジャーが敏感に察知しているように感じています。たとえば小学生同士がオープンワールドに集まって、YouTuberなどを参照しながら『マインクラフト』で巨大建築を共同で作ることが日常化するなど、かなり若年層からこのような傾向は見られるだろうと思います。
ファッション産業では、Decentraland(ディセントラランド)に店舗を設けてNFTやデジタルファッションを販売することや、Roblox(ロブロックス)上でファッションブランドが展示会を開くことも、コロナ禍で加速してきました。
水野また、ウェアラブル・テクノロジーを介した都市での体験が、よりユビキタスなものになってきていることも見過ごせません。
2000年代初頭では「iモード」を介して、待ち合わせ場所や時間を事前決定することなく、集団が流動的に街を使いこなす「スマートモブズ」が注目されましたが、2010年〜2020年代はより多様なユビキタス・コンピューティングを前提とした都市の歩き方が一般化しています。
それを助長したのがスマホ内の多様なセンサーをはじめ、常に我々を記録、分析、予測、推奨する一連のデバイスなのかもしれません。
そこで、今日はファッションそれ自体の話というよりも、ファッションを取りまくインターネット、あるいは仮想的な環境を含む情報環境が、私たちにどういう変化と影響を与えているのかについて、お話を伺いたいと思います。
それではまず、読者に向けて自己紹介をお願いします。
番匠バーチャル建築家の番匠カンナと申します。私はもともと隈研吾の建築事務所に7〜8年いたのち、2018年からバーチャルな世界に興味を持って、それに関連する仕事を中心に手掛けるようになりました。
最初はバーチャル空間の設計、制作などの仕事でしたが、もっと根源的なところでVRやARなどのXR技術がどう世の中に役に立つのかを追求したいと思い、さまざまな企業と仕事をしています。
また、株式会社ambrのCXO(Chief Experience Officer)にもなっていまして、具体的には、一昨年と昨年の「TOKYO GAME SHOW VR」等のディレクターとしてイベントを作っています。よろしくお願いします。
中村プログラマーで、翻訳家の中村健太郎と申します。学部時代には、アルゴリズミック・デザインやコンピューテーショナルデザインを建築学の中で学んでいました。要するに、デジタル技術を使った建築設計や、施工の最適化や自動化、デジタル技術による表現の拡張に関する建築理論を学んでいました。
その後、NPO法人モクチン企画(現NPO法人CHAr)でウェブエンジニアとして働き、東京大学工学部建築学専攻学術専門職員を経て、さらに現在は東京大学大学院 情報学環・学際情報学府に在籍して研究をしております。
情報技術とデザイン・建築・都市の関係に興味があり、昨年の8月にはベン・グリーンの『スマート・イナフ・シティ』という本を学部時代の先輩にあたる酒井康史さんと翻訳しました。テクノロジーが都市、そしてそこで生きる人々に、どのような選択を迫ってゆくのかを考えながら訳したものです。今日はよろしくお願いいたします。
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