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サステナブルバッグブランド"AIRPAQ":車の廃材が生み出す新たな価値

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地球と未来の世代に向けたプロジェクト「Our EARTH Project」。ここでは世界のサステナブルやエシカルなブランドや製品を紹介するほか、環境配慮型材料の提供やそれらの材料を活用した商品企画・製品化などを行っている。
さまざまなブランドやプロダクトを扱っているなかで、今回は「AIRPAQ(エアパック)」を取り上げたい。
AIRPAQは、廃棄されるはずだった自動車のエアバッグ、シートベルト、ベルトのバックルを再活用してバッグを製造している、ドイツ発のアップサイクルバッグブランドだ。このバッグの魅力やサステナブルな取り組みについて、プロジェクトを手がける三栄コーポレーションの高崎さんに話を伺った。
PROFILE|プロフィール
高﨑 宣宏(たかざき のぶひろ)

三栄コーポレーション
Our EARTH Project

車の部品をバッグにするまで

「Our EARTH Project」で取り扱うサステナブルブランドを調査しているなかで、AIRPAQとの出会いがあったといいます。
AIRPAQは当時はまだ、クラウドファンディングで立ち上がったばかりの生まれたてのブランドでした。生まれたてとは言え、AIRPAQのアイコンであるロールトップバックパックを初めて見たとき、そのデザインがとても素敵で、私たち自身もぜひ使ってみたいと思いました。
また、AIRPAQの環境に対する取り組み、理念、そしてアップサイクルされている素材の特徴を知り、ぜひ日本に紹介したいと思い、取り組みを始めました。
AIRPAQについて詳しく教えてください。なぜ車の廃材に着目しているのでしょうか?
ブランド創業者が車の廃材を使った商品を開発したきっかけは、「戦略的起業家精神」の修士課程を専攻していた大学の授業で訪れた、車のスクラップヤードにありました。そこで、ハンドルから飛び出すエアバッグを見たことが発想の原点だそうです。
エアバッグは車の保安部品として非常に高品質な素材でできています。創業者は初めてその感触を体感したときの感動から、この素材でバックパックを作ることを思いついたといいます。
保安部品であるエアバッグは非常に頑丈で高強度な素材を用いているため、バックパックの製作に最適です。この再活用により、頑丈で長く使えるバックパックの開発が実現しました。
廃材の収集から製品化までの過程を説明していただけますか。
商品製作は、まず素材の調達から始まります。シートベルトとエアバッグはルーマニアの協力工場から、バックルはドイツのケルン郊外の協力スクラップヤードから入手します。協力工場では、車に取り付ける前に「不良品」として廃棄される予定のシートベルトとエアバッグを回収します。車の保安部品は品質基準が非常に厳しく、想像以上に多くの不良品が発生するのです。従来なら捨てられていたこれらの素材を、AIRPAQは再活用しています。
次に、調達したエアバッグを洗浄・染色します。この工程で生地が柔らかくなり、独特の風合いに仕上がります。
その後、製品一つに必要な生地の量をはかり、採寸した生地からパーツをカットします。元のエアバッグ素材の形はバラバラなので、さまざまな素材からパーツを切り出します。そのため、AIRPAQの商品は一つひとつ異なる表情を持つ、世界に一つだけの製品となります。
各パーツはミシンで縫製され、組み合わされます。最後に、シートベルトやバックルなど、さまざまな車の廃棄パーツを組み合わせて、アップサイクルされたバッグが完成します。
製品のデザインにおいてもっとも重視していることは何でしょうか。
実用性だけでなく、おしゃれとしても普段から使ってもらえる商品デザインであることを重視しています。単なる環境配慮型の製品ではなく、魅力のある商品デザインによって、車の廃材から新たな価値を生み出すことを考えています。
また、車の廃材からアップサイクルされたことが「よく見るとわかる」デザインにもなっています。たとえばAIRPAQのロゴのマークは車のシフトレバーをデフォルメしたデザインになっています。
また、ロールトップバックパックの中央部分には丸く刺繍が施されていますが、これは車のハンドルに取り付けられたエアバッグをイメージしています。
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