2022.08.15

Allbirds(オールバーズ)が目指す、CO2排出量を極限まで減らしたサステナブルな取り組み

地球に優しいシューズを生み出すAllbirdsのミッション

 Allbirdsは、サッカーの元ニュージーランド代表のレジェンドプレイヤーであったティム・ブラウンと、再生可能分野のバイオテクノロジー専門家であるジョーイ・ズウィリンジャーが出会ったことで始まったライフスタイルブランドだ。Allbirds Japanでマーケティング ディレクターを務める蓑輪さんはAllbirdsが目指すミッションについてこう語る。

画像: サッカーの南アフリカW杯のニュージーランド代表で副キャプテンを務めたティム・ブラウン(写真右)と、バイオテクノロジー専門家のジョーイ・ズウィリンジャー(写真左)の出会いは、双方の奥さんが大学時代の友人だったことがきっかけ
サッカーの南アフリカW杯のニュージーランド代表で副キャプテンを務めたティム・ブラウン(写真右)と、バイオテクノロジー専門家のジョーイ・ズウィリンジャー(写真左)の出会いは、双方の奥さんが大学時代の友人だったことがきっかけ

「全世界のシューズ業界では年間で約200億足のシューズを生産していて、その大半は環境に影響を及ぼす石油由来の素材を使用しています。製造過程ではCO2(二酸化炭素)を排出するため、自ら地球温暖化を進めているといっても過言ではありません。Allbirdsは地球温暖化という危機的な状況に対応するために、環境への負荷を抑え、より良い方法で製造できるシューズやアパレルを提案しています。

そのために創業者のティム・ブラウンが着目したのが天然素材です。ひとつはニュージーランドの人口よりも多く飼育されているという羊の毛であるメリノウールでした。通気性・保温性と耐久性に優れた再生可能な天然素材をアッパーやインナーに使うことで、より環境に負荷をかけないことに注力しています。

画像: ニュージーランドの一大産業でもあるメリノウール生産。通気性に優れ、防臭効果もある機能的な天然素材を使うことは、ニュージーランド出身の創業者、ティム・ブラウンにとっては必然だった
ニュージーランドの一大産業でもあるメリノウール生産。通気性に優れ、防臭効果もある機能的な天然素材を使うことは、ニュージーランド出身の創業者、ティム・ブラウンにとっては必然だった

メリノウールの品質はもちろん、羊を育てる環境にもこだわり、土地を包括的に管理する「再生型農業」に切り替えることで、羊自体が排出する温室効果ガスを土壌に吸収されるような仕組みに切り替え、CO2の排出を抑えるように取り組んでいるのです。またメリノウールと、効率よくカーボンを吸収するユーカリの木からとれるテンセルリヨセル[1]と組み合わせることで、天然素材のアッパーを生み出したのも特筆すべきポイントです」。

画像: 再生型農業は土地を包括的に管理する手法。輪作や耕起回数などの調整によって、排出量より多い量のCO2を吸収し、気候変動を逆転させるポテンシャルを秘めている
再生型農業は土地を包括的に管理する手法。輪作や耕起回数などの調整によって、排出量より多い量のCO2を吸収し、気候変動を逆転させるポテンシャルを秘めている

サトウキビから生まれた素材「SweetFoam®(スウィートフォーム)」の可能性

 シューズにおいて、肝となるのは靴底の素材だ。従来のシューズのソールにはEVAという石油由来の素材が使われることが多く、その製造過程では膨大な量のCO2が排出されていた。そこでAllbirdsが開発したのが、アッパーやインソールと同じ天然素材をベースにしたミッドソールである「SweetFoam®」だった。

画像: Allbirdsが注目したサトウキビ。光合成による成長とともにCO2を吸収。成長も早く、雨水のみで成長するという再生可能な素材。さらに加工される際に出る副産物は、翌年の肥料として利用される
Allbirdsが注目したサトウキビ。光合成による成長とともにCO2を吸収。成長も早く、雨水のみで成長するという再生可能な素材。さらに加工される際に出る副産物は、翌年の肥料として利用される

「代替え素材をさがしたところ、その答えはブラジルのサトウキビ畑にありました。そしてサトウキビという天然素材が、成長とともに効率よくCO2を吸収することもわかりました。またサトウキビの成長は早く、成長には雨水のみを必要とするという完全に再生可能な素材だということを知ったのです。そこから開発されたのがサトウキビ由来のミッドソール素材である「SweetFoam®」です。石油由来のEVAを1トン製造するには2.8トンのCO2が排出されていました。

しかし、「SweetFoam®」が含まれる環境に優しいEVAは、1トン製造される製品ごとに1.2トンのCO2を逆に吸収しているのです。この技術は2018年にはアメリカ『TIME誌』によってその年の最も優れた発明に認定されました」。

こうして、世界初となるカーボンネガティブグリーンEVAが生まれた。その他にもAllbirdsではペットボトルをリサイクルしたシューレース(靴ひも)を採用したり、シューズに使われる梱包材も90%リサイクル段ボールで製造するなど、徹底したサステナブルな取り組みが行われている。

画像: ブラジル産のサトウキビを使用したミッドソールは、SweetFoam®と呼ばれ、世界初のカーボンネガティブグリーンEVAで作られている。天然素材の活用はソールにまで及ぶ
ブラジル産のサトウキビを使用したミッドソールは、SweetFoam®と呼ばれ、世界初のカーボンネガティブグリーンEVAで作られている。天然素材の活用はソールにまで及ぶ

Allbirdsが目指すカーボンニュートラルの未来予想図

 現在、Allbirdsでおすすめなのが「TreeDusher2(ツリーダッシャー2)」だ。環境に配慮した天然素材がふんだんに使われているのは、いわずもがなだが、街履きとしても優秀。片足で292g(27cm)という軽量性は、10km程度の日々のランニングにも最適で、旬のアスレジャースタイルを司るシューズとして人気を博している。

最後に蓑輪さんに、今後、Allbirdsが取り組んでいくカーボンニュートラルの未来へのヴィジョンを伺ってみた。
 
「例えば、東京と沖縄を2人で飛行機を使って往復すると約1トンのCO2が輩出されています。1トンのCO2というとイメージしづらいですが、体積で見ると25mプールをCO2でいっぱいにした量が、約1トンのCO2ということです。1トンのCO2を吸収するには、カラマツ4本が30年もかけて光合成しなくてはなりません。人間は生産活動ではもちろん、生きていくだけでCO2を輩出しているので、さまざまな面でオフセットしなければいけません。

Allbirdsは、他のブランドと比べると製造過程で40%ぐらいはCO2の排出量を抑えています。しかし、シューズやアパレルに再生可能な素材を使うのはもちろん、自社施設での再エネ化や、流通を95%海上輸送にするなどの取り組みを行うことで、CO2の排出を2025年までに、約50%カットするという目標を立てています。ビジネスの力で気候変動を逆転させるのが、我々の最終的なミッションなのです。

また個人的には、自然由来の染料を使った「藍染め」など伝統ある日本文化をアップデートして、シューズやアパレルに取り入れていくことにもアプローチしていきたいですね」。
 
Allbirdsが提案するサステナブルな取り組みは画期的なものだ。しかし、人間が生きていくうえでカーボンネガティブな状態にするには、一人一人の意識改革が必要だ。Allbirdsのシューズなどサステナブルなプロダクトをチョイスしていくことで、少しずつだが未来も変わっていくはずだ。

[1]ユーカリ由来の再生繊維。ユーカリを特殊な溶剤で溶かして作られ、その溶剤は回収して再利用するため、廃液が放出されず、地球にも優しい。
[2]持続可能な森林活用・保全を目的として誕生した、「適切な森林管理」を認証する国際的な制度。認証を受けた森林からの生産品による製品にはFSCロゴマークがつけられる。

PROFILE|プロフィール
蓑輪 光浩(みのわ みつひろ)
蓑輪 光浩(みのわ みつひろ)

1997年にNIKE JAPAN入社。ワールドカップ、箱根駅伝、NIKEiDをはじめとしたマーケティングに携わる。2008年にNIKE EUROPE赴任。2011年よりユニクロにて、錦織圭らトップアスリート契約、PR広告戦略、商品開発に携わる。2016年よりレッドブルに入社しフィールド・マーケティングを統括。2018年にビル&メリンダ・ゲイツ財団 東京オリンピック プロジェクトマネージャー就任。2019年よりAllbirds Japanのマーケティング ディレクターを務める。今年、アジアで影響力のあるTOP50マーケターに選出された (2022 Campaign Asia)。

Text by Yasuyuki Ushijima

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