「木目込み人形」というものをご存知だろうか。その名前から少し想像できるように、木または粘土で作られた型に筋彫りをし、その筋の部分に布の端を入れ込んで作る工芸品だ。
雛人形などを作る際に使われる手法で、実際に着物を着ているような見た目に仕上がる。この木目込み人形の手法を使い、「キメコミアート」として独自の境地を開くアーティストがいる。
イワミズアサコさんだ。
イワミズさんの作品はじつに鮮やか。はっきりした色をいくつも組み合わせ、そこに木目込み独特の表面の立体感が合わさることで、存在感のある作品となる。カラフルに表現されるイワミズさんの作品は「キメコミ」というカタカナによる言葉の響きがしっくりくる世界観で、いつまでも作品に目が釘付けになるような魅力を宿す。そのイワミズさんにキメコミアートについてお話をうかがった。
PROFILE|プロフィール
岩水 亜沙子(イワミズ アサコ)
ファッションデザイナーとしてキャリアを積んだ後、2008年よりアーティストとして活動を開始、国内外で高い評価を受けてきた。その間、多くの国でファブリックマーケットを訪れるなと、世界を旅して感性を養って来た。また、古着や廃材などを材料を積極的に使用し、社会問題である現在の薄利多売と過剰包装、そしてファストデリバリーによるファッション産業の崩壊などに対して、警鐘を促す作品の発表している。日本の伝統技法「木目込み」を昇華させた“キメコミアート”の生みの親。カラフルでポップな楽しい作品は現代版のジャポニズムをもイメージさせる。日本各地を訪れ作品の展示に留まらず、イベントの際にはワークショップを積極的に開催し、アートを通じたコミュニケーションから新たなコミュニティを作る循環型のアーティスト活動を続けている。
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ノストラダムスの大予言をやり過ごし東京へ
「木目込みというものは知らなかったんです」イワミズさんに、木目込み人形か ら「キメコミアート」へつながった発想の源泉を尋ねたとき、まずこんな答えが返ってきた。イワミズさんがキメコミアートを始めるに至るきっかけを得たのは2016年。それまでのイワミズさんの人生で「木目込み」と偶然すれ違ったことはあったかもしれないが、意識してそこに視線を向けたことはなかったそうだ。