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2023.05.24

産業廃棄物のユニフォームを新たな資源として活用:「チクマノループ」

学生だけでなく、企業でもユニフォームを着用することは多いだろう。会社全体の統一感を示すだけでなく、ある職種を表すアイコンにもなっている。こうしたユニフォームは会社から支給されるのが一般的だ。
では、古くて着られなくなったり、退職された方から返却されたりしたユニフォームは、その後どのような経路を辿るのか。おそらく一般ゴミとして捨てられていると思われるかもしれないが、実は会社のユニフォームは産業廃棄物として扱われている。
一般的な洋服と扱いが異なるからこそ、ユニフォームに特化したリサイクルシステムが必要になる。そこに注目したのが、「ユニフォームといえばチクマ」といわれる株式会社チクマだ。
同社が取り組む「チクマノループ」は、ユニフォームを中心にした古着回収システムで、新たな環境保全の取り組みとして注目されている。そこで今回、同社マーケティング課の山下将人さんと環境推進室の中村尚弘さんに、同リサイクルプロジェクトの概要を伺った。
PROFILE|プロフィール
山下将人(やました まさひと)
山下将人(やました まさひと)

株式会社チクマ ユニフォーム事業部 マーケティング課 課長

1984年生まれ、2007年入社。営業課、企画課を従事し、今年度よりマーケティング課に配属。「サステナブル」をキーワードに制服を創る人々、着用する人々の課題解決を日々考えている。

PROFILE|プロフィール
中村尚弘(なかむら なおひろ)
中村尚弘(なかむら なおひろ)

株式会社チクマ 環境推進室 環境プロジェクト担当

1989年株式会社チクマ入社。ユニフォーム事業部企画課、キャパス事業部企画課を経て、2017年より現在の環境推進室環境プロジェクト担当として従事。

西洋文化の受容と万国博覧会

創業120周年とのことですが、起業当時のエピソードなどは残っていますか。
山下120年前、日本ではまだ着物が主流でした。それと同時に西洋からの影響もあって、洋装へと移り変わる時期でもあります。創業者はいち早く洋装に注目し、欧州からスーツ地を輸入して、国内で販売を開始しました。
欧州へ直接買い付けに渡航したり、日本へ売り込みに来ている海外のテキスタイルメーカーから生地を仕入れていたのですが、洋装文化のない日本人にはかなり厳しい条件が突きつけられていたようです。創業者にとって難しい交渉や、大きな決断も必要だったというエピソードが残っています。
現在はユニフォームを中心に扱われていますが、洋装からの転換点はどこにあったのでしょうか。
山下弊社の売上シェアの95%以上が制服で、残りの数%は創業時から続く欧州との取引になります。
シェアの伸びでいうと、1970年の大阪万博がひとつの転換点だったと思います。当時、企業戦略(コーポレート・アイデンティティ)を盛り上げる一環で、制服の需要が高まっていました。そこに弊社がうまく入り込めた。2025年の大阪万博も、そのような契機になると期待しています。

制服・ユニフォームを生産する難しさ

「ユニフォームといえばチクマ」というキャッチフレーズがあります。この理念を教えてください。
山下制服業界の中でも、トップクラスの長い業歴を誇っています。
学校やオフィスだけでなく、警察官や消防士、自動車工場の作業服などもあります。もちろん、ホテルのドアマンやタクシーの運転手、電車の車掌、看護師の制服など、幅広い商品を取り扱っております。
弊社に声を掛けていただければどこよりも幅広い提案ができるという自信から、「ユニフォームといえばチクマ」と掲げています。
ユニフォームを扱うことの難しさはありますか。
山下同じものを作り続けるということは、意外に大変なことです。
長い付き合いのあるクライアントは、40年前の制服と同じものを求めてきます。つまり、新入社員のために中堅社員やベテラン社員と同じものが必要になるわけです。そうなると、生地も色味も一緒でないといけません。そうした再現性が求められます。
この業界は新規参入が多いのですが、そうした再現性や価格維持、生産量の変化への対応が難しく、「こんなはずじゃなかった」と思われるみたいですね。

ユニフォームのリサイクル「EARTHINK®

リサイクルプロジェクト「EARTHINK®」の概要を教えてください。
中村1995年、弊社に環境推進室が設置されました。当社として地球環境保全を実現するために提案されたもので、コア事業であるユニフォームのリサイクルに着手しました。
1998年には使用済みのユニフォームを回収して、自動車の内装材に再資源化するという「EARTHINK® RECYCLE」を稼働させ、商標登録もしています。
あまり知られていないかもしれませんが、企業のユニフォームは企業の所有物という扱いになりますので、産業廃棄物になります。そのため、産業廃棄物処理法に則って対応しなければなりません。
私たちは、リサイクルに関する特例制度として新たに法制化された「広域認定制度」の許認可(環境大臣認定)“全国第一号“を取得しています。
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#Sustainability
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