「Comptoir」とはフランス語で、主に「カウンター」や「売り場」を意味する。このお店は単に着物を売るだけでなく、名前の通り、着物やそれに関する文化に触れたい人や相談したい人の駆け込み寺でもあるのだ。
しかしファッションの都パリで、なぜ着物なのか。その思いと挑戦について伺った。
着物への情熱、パリでの挑戦
まず、パリで着物店を開くことになった経緯を教えてください。
私は2002年、ニューヨークに本校のあるパーソンズ美術大学のファッション科に入学しました。ファッションを人を変える力のあるアートの一形態だと考えていたからです。当初はパリとニューヨークで2年ずつ学ぶ予定でしたが、パリ滞在中にアルベール・エルバスがデザイナーを務めるランバンの研修生になる機会を得ました。その経験があまりにも刺激的だったため、大学はドロップアウトしてしまいました。その後、スタイリングの仕事などが増え、ビザの関係もあって会社を設立。ファッションと食関連のコンサルティングや輸入を手がける有限会社を立ち上げ、しばらくファッション業界などで活動していました。しかし、ファストファッションが台頭し始めた頃から、業界の楽しさが失われていくことになります。