2022.10.17

「未来の選択肢のひとつ」卵子凍結・保管サービスを提供するグレイスグループ

「子供を持ちたいと願う一人でも多くの女性の夢がかなう未来の創出」をミッションに掲げ、女性の医学的機能にまつわる様々な負担やリスクを軽減するための最先端の総合医療サービスの提供を目指す株式会社グレイスグループ。同社では主に卵子凍結・保管サービス「Grace Bank」を提供しながら、若い女性が通いやすい婦人科、生殖医療クリニックの整備を進めている。

卵子凍結サービスは日本国内ではまだあまり馴染みがないが、アメリカでは子供を望む女性にとっての未来の選択肢の一つとして認知されており、さらに企業支援も活発化している。

そんななか、日本でも企業の福利厚生制度として株式会社グレイスグループの「卵子凍結補助」を導入するケースが増えてきた。そこで今回、同社の代表である勝見 祐幸さんに会社設立の背景から、卵子凍結・保管サービスから見える日本の不妊治療の現状について話を聞いた。

PROFILE|プロフィール
勝見 祐幸
勝見 祐幸

株式会社グレイスグループ
代表取締役CEO
東京大学卒業、国際大学MBA。三菱石油、ジェミニコンサルティング、インフィニオンテクノロジーを経て、2001年にジェイブランディングを設立、企業の採用支援、ベンチャー企業支援に携わってきた。2020年グレイスグループを創業、三女の父として、女性の活躍支援にライフワークとして取り組む。

不妊治療クリニックを全国に組織化

はじめに、どのような背景から会社設立に至ったか教えてください。

僕自身が妻と不妊治療に取り組んでようやく子供を授かったことや、キャリアコンサルタントとして多くの女性からキャリア相談を受けるなかで、「子供が欲しいけれどタイミングが難しい」と考えている方を多く見てきました。

仕事を頑張っている女性ほど出産を先送りにしたり、結婚のタイミングを遅らせたりするケースも少なくありません。いざ子供が欲しいとなった場合、なかなか授からないこともありますよね。不妊治療をするために初めてクリニックに通ったけれど、すでに手遅れだったという方も見てきました。

そんななか、2019年頃に卵子凍結を考えているという友人から話を聞いたのです。そこから卵子凍結を知り、そのソリューションに強く興味を抱き、詳しく調べるようになりました。

なぜ日本の少子化がこれだけ社会課題になっているのか、なぜ日本では卵子凍結が浸透しないのか。いろいろ情報収集していくなかで、愛育病院前医長 三楽病院産婦人科部長の中林 稔先生とお話しする機会があったのですが「現状では日本産婦人科学会が卵子凍結を行うことについて肯定も否定もしていないが、推奨もしていない」とおっしゃったんです。

というのも、世界的に卵子凍結ビジネスが一般化したのは2014年以降で、そこまでまだエビデンスがないからです。しかし、その一方で結婚されていない産婦人科の女医さんは、卵子凍結をしている方が多いとも聞きます。

卵子凍結が浸透しているアメリカでは、米国生殖医学会が凍結融解卵子由来で生まれた子供に染色体異常、先天異常、および発育障害のリスクが増大することはないという見解を2012年に発表しています。

この事実に着目したのが卵子凍結というソリューションで、アメリカでは2014年のフェイスブックによる導入をきっかけに、大企業による福利厚生での従業員の卵子凍結費用の助成が一般的になり、2021年には社員数2万人以上の企業の19%が卵子凍結費用の補助を行っています。

このように企業に対して、卵子凍結を社内福利厚生制度として提案するベンチャー企業が2014〜15年からアメリカで本格的に出てきました。また、複数のクリニックを束ねてソリューションとして提案している会社もあったからこそ、アメリカでは卵子凍結が広まったようです。

改めて中林先生とお会いした際に、「こういったサービスを日本でもやりたいと考えている」と相談をしたところ、「ぜひやって欲しい」と背中を押していただき、卵子凍結サービスの事業を始めるため会社を設立することを決めました。

「Grace Bank」では全国のクリニックと提携ネットワークを作っているとお聞きしました。

元々はこのサービスを始めるにあたり、政治家や厚労省、学会など様々な方々に話を聞いているなかで、杉山産婦人科グループの杉山先生ともお話しする機会がありまして。そこから杉山産婦人科グループをはじめ、国内最高峰の厳選された不妊治療クリニックを全国に組織化するようになりました。

最近ではクレディセゾンやサイバーエージェント、湘南美容グループ、ジャパネットグループから出資を受け、4月に渋谷のMIYASHITA PARK前に若い方が気軽に立ち寄れる新しいスタイルの生殖医療・婦人科クリニックを杉山先生と立ち上げ、プレコンセプションケア(妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと)の啓発活動にも積極的に取り組んでいます。

画像: グレイス杉山クリニックSHIBUYA
グレイス杉山クリニックSHIBUYA

日本は世界最大の不妊治療大国

日本は年間の体外受精件数で米国を遥かに凌ぐ世界最大の不妊治療大国でありながら、米国よりも普及率が低いといいます。

そうなんです。日本は出生数81万人に対して年間の体外受精件数が46万件と世界最多でありながら、その成功率は13%。アメリカの25%の半分に過ぎず、世界最低の数字です。これは、体外受精する女性の平均年齢が圧倒的に高いこと(アメリカ34歳に対し日本は40歳)、提供卵子がほぼ認められていないこと、受精卵を戻す数を年齢に関わらず原則として1つにしていることが主な理由となっています。

この背景には、医療教育が全くなされておらず、諸外国と比べてもヘルスリテラシーが著しく低いという実態があります。

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妊娠のしやすさは加齢に応じて低下すると一般的に考えられていますが、実は母体の年齢による影響は少なく、卵子の老化がかなりの部分を占めており、若い卵子の提供を受ければ、30代後半~40代の女性も20代と変わらない確率で体外受精で子供を授かることが可能です。

これを実際の自分の卵子でできるのが卵子凍結であり、画期的だということもあり、多くのアメリカ企業が補助制度を積極的に受け入れたのです。

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もし、卵子凍結サービスを検討するとなった場合、ファーストステップはどうしたらいいのでしょうか。

サービス導入を検討している企業や、すでに福利厚生として導入された企業には弊社が無料でセミナーを開くなどしています。そこで実際にお医者さんの話を聞いてもらい、どういったものなのかを知ってもらえたらと思います。もちろん、個人の方向けにも定期的に開催していますし、予約制の個別相談会も随時受け付けております。

最近では、福利厚生制度として導入する国内企業も増えてきたんですよね。

卵子凍結の制度導入については、既にマッキンゼー、セールスフォースなどがグローバル共通の制度の一環として日本でも実質全額支援をしており、昨年5月からメルカリが試験導入をし始めました。一方、グレイスグループでは今年の7月から、サイバーエージェントで卵子凍結費用の補助制度がスタートしました。その後、セガサミー、ジャパネットグループでも9月からの制度導入が決まり、今後も順次大手企業への導入を進めていきたいと思っています。

ここにきて、ようやく日本でも卵子凍結の福利厚生での支援について、山が動き始めそうな状況になってきました。引き続き企業のマネジメント層の方々のご理解とお力添えをいただきながら、この動きを更に加速させ、仕事を頑張った女性ほど子供を持ちにくくなる、子供を作りたいと思った時には既に手遅れ、という日本の現状を大きく変革していきたいと思っております。

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