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2020.11.27

名建築でファッションを:Matterportで可能になる新しいファッションプレゼンテーション(後編)

ファッションブランドEZUMi(エズミ)が、隈研吾が設計したサニーヒルズ南青山を舞台に3Dポートレートショーとして2021年春夏コレクションを発表。いつでも、どこでも、自分のPCからこの建築にアクセスでき、さらにそこに散りばめられたEZUMiのコレクションの1体1体を見ることができる。
このプレゼンテーションを実現したのが、アメリカ生まれのツールMatterport(マターポート)だ。PRADAの2021年春夏コレクションの発表でも使用されているこのツールだが、EZUMiの本コレクションのように、名建築を舞台に生きたモデルを使用したプレゼンテーションは今までに見たことのない試みだった。
EZUMiの3Dポートレートショー実現の立役者が、ARCHI HATCH(アーキハッチ)株式会社の徳永雄太氏だ。彼がMatterportを使用して実現しようとしているビジョンは、建築をデジタル空間にアーカイヴするという壮大なもの。今回は徳永氏にインタビューを行い、ARCHI HATCHが目指すものと、ファッションとの協働可能性、そしてファッションと建築の親和性などについてお話を伺った。
PROFILE|プロフィール
徳永雄太
徳永雄太

ARCHI HATCH株式会社 代表取締役
1980年、東京生まれ。法政大学卒業後、イギリス留学を経て中国・上海で広告代理店に8年間勤務。2016年、建築模型に特化した日本国内唯一の展示施設「建築倉庫ミュージアム」開館と同時に館長に就任。またその傍ら、京都伝統工芸プロジェクトのアドバイザーや一般社団法人日本建築文化保存協会の理事なども歴任。 2018年5月にARCHI HATCHを設立。今年5月、建築や美術展、パブリックアートなどの3Dアーカイブのオープンソースプラットフォーム「ARCHI-BANK」「ARCHI-CLE」をローンチ。Matterportの撮影も2017年から経験があり、国内外で撮影活動の傍ら数々のアートプロジェクトのオンラインビューイングを監修。昨今では広島平和記念資料館の3D Portrait Museumを制作したFUTURE MEMORYや隈研吾建築を舞台にしたEZUMiの3D Showなど。また、アジア各地で建築ミュージアムの展示企画も手掛けている。

名建築で「ファッションショー」

EZUMiさんとの3Dポートレート展示に戻りますが、これはさっきおっしゃってたように隈さんの建築で撮影され、生きたモデルさんが着てっていうのが特徴的でした。この経緯も、江角さんが建築にお詳しくて隈さんとやりたいということでやることになったんでしょうか?
まず、江角さんが3月にコロナ禍でランウェイのファッションショーができなかったというのを人づてに聞きまして。そんな中、彼が面白いことができないか、会ってほしいと言われたのがきっかけでした。そして7月くらいにお会いして、スチールの写真をサニーヒルズ南青山を舞台にやるっていうのをお聞きしました。その時に、僕もやったことがなかったのですが、もしかして3Dでのプレゼンテーションができるんじゃないかなということで、すぐ1週間後に江角さんともう1人捕まえて、2人立たせて試験的に撮影してみたんです。
もちろん無人で撮影するっていうのがMatterportの基本なんですけど、それを逆手に取ってやりました。そうしたら結構うまくいって、これだったら3Dポートレートファッションショーとして、僕たちがモデルの間をランウェイするということを僕が考え出して、江角さんもそれは面白いねって言ってくれてやることになりましたね。

撮影にはどれくらいの時間かかったんですか?
スチールと一緒にやったので、6時間くらいかかりましたね。

モデルさんはずっとそのまま立っていたんですか?
モデルさんをまず立たせて、7ポイントくらいでとってるんですよ。その後に着替えてその次のまた踊り場に座らせてスチールを撮る。で、僕が入っていって立ち位置とかを変えて撮る、っていうのを5回繰り返したみたいな感じです。

着替えとか入ってくると本当のファッションショーみたいですね。
ファッションショーでしたね。普通のカメラの場合は、カシャカシャ撮ってる最中にモデルがポーズを変えるんですけど、僕の場合は動いちゃだめって言うんですよ。60度で6回転するカメラで、1度の撮影がだいたい40秒間。もちろんそこの角度に向いた時に止まればいいんですけど、それじゃなくても40秒間静止してくれっていうので、モデルさんが超疲れてました(笑)。

そんなふうに作られたEZUMiさんの今回のコレクションなんですけど、この3Dポートレート展示の閲覧状況と販売状況など、今回の3Dプレゼンテーションによって従来の顧客以外にも広がったのでしょうか?
EZUMiのコレクション販売状況としては従来の顧客とは別に、建築関係、アート関係の方、あるいは海外の方からの反応も広がったように感じていると聞いています。もともと建築などにもゆかりある人だったので、建築家の人たちも受注会とかに来てくれることもあったらしいんですけど、今回隈さんとやったことで、FashionSnapでも記事が出て連絡がきて、帰ってきた顧客が多かったし、新しい顧客も増えたみたいです。今回のシーズンのものはまだバイヤーさんしか買えないですが、そのおかげで今季の秋冬が意外な層に売れてるっていうことも聞きました。
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#Virtual Reality
#3DCG
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