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2021.05.05

【対談】大坪岳人・川崎和也「『Good is COOL』の時代のサステナビリティの探究」

ファッションテックやサステナビリティといった言葉が浸透し始めた現在、この領域をリードするプレイヤーたちはどのような思想のもとで実践を行っているのでしょうか。今回は株式会社ゴールドウイン/ニュートラルワークス事業部の大坪岳人氏、Synflux株式会社 代表取締役でスペキュラティヴ・ファッションデザイナーの川崎和也氏をお招きし、今の世代の特徴、サステナビリティを実現するために必要な探究の精神、プロトタイプの重要性、次世代への継承などを手がかりにお話を伺いました。
PROFILE|プロフィール
大坪岳人

株式会社ゴールドウイン ニュートラルワークス事業部長。1979年石川県出身。2004年株式会社ゴールドウイン入社。<ザ・ノース・フェイス>のアパレル部門のマーチャンダイザーとして素材開発から製品企画を担当し、2021年まで同ブランドのディレクターとして企画とマーケティングの全体統括に従事。4月より「スポーツライフスタイルで、24時間を過ごしたい人たちのためのココロとカラダをニュートラルに整える」をコンセプトにもつNEUTRALWORKS.ブランドの事業部長に。

PROFILE|プロフィール
川崎和也

Synflux株式会社 代表取締役 CEO。スペキュラティブ・ファッションデザイナー。1991年生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科エクスデザインプログラム修士課程修了(デザイン)。主な受賞に、H&Mファウンデーション主催グローバルチェンジアワード特別賞、文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品選出、Dezeen Design Award Longlist、WIRED Creative Hack Awardなど。編著書に『SPECULATIONS 人間中心主義のデザインをこえて』(BNN新社、2019)がある。

「Good is COOL」が当たり前の時代に

川崎僕が最初大坪さんにお会いしたのはTOAというベルリン発のイベントに登壇した時でした。第一声、「川崎君のジェネレーションは、正しいことが格好いいっていうことをピュアにやっている印象がある」と言われ、僕は最初批判的に言われてるのかなと勘違いしてしまったのですが、決してそうではなく、一緒にムーブメントを起こせたら面白いよね!という意図で声をかけていただいたということだったんです(笑)。「正しいことこそ良い」と信じていることが今のファッションの特徴だとすれば、大坪さんがそんな世代をどう思われているのかを改めて聞いてみたいと思っています。
大坪少し前に、アメリカのザ・ノース・フェイスブランドのスポーツクライミングのマーケティングとして、「WALLS ARE MEANT FOR CLIMBING(壁は登るためにある)」というキャンペーンがありました。それは「壁というのは人を遮るためにあるわけじゃなくて、誰かがそれを乗り越えるためにあるんだ」というメッセージです。それを見て販促活動とは直接は繋がらなくても、人にメッセージを伝えることは重要だなと思ったことがありました。
「Good is cool」が今の当たり前。世の中のために何かをするということが正直私自身は少し前は気恥ずかしく感じていたことです。しかし、それが今すごくかっこいいことに変わっている、それは大きな変化だと思っています。川崎くんと最初に出会った時も、すごくかっこいいことをやっているし、地球にとって正しいことをやっている。サステナブルって現在、様々な人が口にしていますが、川崎くんはそれが目的になってないのがいいなと思いました。サステナブルであることや売ることを目的にせず、純粋にかっこいいこと、面白いことやりたいと思った先に、当たり前のように誰かを傷つけない、地球を汚したりしないっていうのがベースにある。それが他との大きな違いだと思います。
川崎僕はもともと地方で短ランを着ている普通の高校生だったのですが、大学進学のために上京したのが2011年で震災の年だったんです。東京に着いた途端に非日常があって、正直打ちのめされました。そんな中で、当時お世話になっていた大学の先生から「今後体験できないことだから自分の目でその景色を見てきなさい」と言われたのです。大学をサボって、お金がなかったのですが、高速バスを乗り継いで東北を訪ねました。その時目の当たりにしたのは、あまりにも脆く崩れ去る人間の生活風景でした。自分たちが住んでる住宅や、食べている食料、着ている衣服だってとても儚いものだし、簡単に崩れてしまうんだって改めて実感したのです。僕の同世代は、20代前半でそれぞれの仕方で震災を経験しています。自然の猛威と脆い生活環境を記憶しているという意味で、より切実な問題として環境問題を捉えているのかもしれません。もし僕にも「Good is cool」の精神が備わっているとしたら、そのような体験が背景にあるのだと思います。
川崎和也氏
川崎和也氏

サステナビリティは「探究」

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