大坪少し前に、アメリカのザ・ノース・フェイスブランドのスポーツクライミングのマーケティングとして、「WALLS ARE MEANT FOR CLIMBING(壁は登るためにある)」というキャンペーンがありました。それは「壁というのは人を遮るためにあるわけじゃなくて、誰かがそれを乗り越えるためにあるんだ」というメッセージです。それを見て販促活動とは直接は繋がらなくても、人にメッセージを伝えることは重要だなと思ったことがありました。
「Good is cool」が今の当たり前。世の中のために何かをするということが正直私自身は少し前は気恥ずかしく感じていたことです。しかし、それが今すごくかっこいいことに変わっている、それは大きな変化だと思っています。川崎くんと最初に出会った時も、すごくかっこいいことをやっているし、地球にとって正しいことをやっている。サステナブルって現在、様々な人が口にしていますが、川崎くんはそれが目的になってないのがいいなと思いました。サステナブルであることや売ることを目的にせず、純粋にかっこいいこと、面白いことやりたいと思った先に、当たり前のように誰かを傷つけない、地球を汚したりしないっていうのがベースにある。それが他との大きな違いだと思います。
川崎僕はもともと地方で短ランを着ている普通の高校生だったのですが、大学進学のために上京したのが2011年で震災の年だったんです。東京に着いた途端に非日常があって、正直打ちのめされました。そんな中で、当時お世話になっていた大学の先生から「今後体験できないことだから自分の目でその景色を見てきなさい」と言われたのです。大学をサボって、お金がなかったのですが、高速バスを乗り継いで東北を訪ねました。その時目の当たりにしたのは、あまりにも脆く崩れ去る人間の生活風景でした。自分たちが住んでる住宅や、食べている食料、着ている衣服だってとても儚いものだし、簡単に崩れてしまうんだって改めて実感したのです。僕の同世代は、20代前半でそれぞれの仕方で震災を経験しています。自然の猛威と脆い生活環境を記憶しているという意味で、より切実な問題として環境問題を捉えているのかもしれません。もし僕にも「Good is cool」の精神が備わっているとしたら、そのような体験が背景にあるのだと思います。