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2021.11.12

在庫を持たず販売を可能に:PlatformEのオンデマンドソリューション

PlatformE(プラットフォーム・イー)は、ポルトガルを拠点とするテクノロジー企業である。当社は、ファッション業界における過剰生産と廃棄物削減に取り組むという使命のもと、顧客毎にパーソナライズされた製品をオンデマンドで販売するためのプラットフォームソリューション「Ripe(ライプ)」を提供している。これまでに業界を代表するLVMHやKering参加内のブランドにサービスを提供しており、その数は25以上にも及ぶという。さらに2019年には3D製品の制作と3D戦略の実施のためのデジタルパワーハウスDDIGITT(ディジット)も開始している。今回、当社の共同創業者のGonçalo Cruz(ゴンサロ・クルス)氏にインタビューを行った。

製品・販売拠点・生産を繋げるプラットフォーム

PlatformEサービスについて教えてください。
私たちのサービスは、ありもしないものを売ることができる点に最大の魅力があります。例えば靴を売るとき、本物の靴は販売時にはどこにも存在せず、購入後に物理的な靴として初めて生産されるのです。つまり、ユーザーが製品を購入する段階では在庫はありません。
在庫がなければ原材料へのダメージもなく、時間もかからず、炭素やエネルギーの無駄もないといったように、リスクが少なくて済みます。こういった実際の生産前から製品を販売するモデル、いわゆるオンデマンドモデルないしはジャストインタイムモデルは、持続可能性を高め、生産能力を拡大するための鍵となると考えています。
また、私たちのサービスでは、ブランドはカスタマイズ機能を通じて色や素材を変えることができる体験を顧客に提供することもできます。しかしながら私たちのサービス全体の本当の価値は、つねに所有者がいるものを生産するところにあります。つまり、消費者は自分の注文に責任を持つことができるようになるわけです。
現状のモデルではまず、製品の完成形をデジタル化しています。私たちが開発したテクノロジーでは、可能な限りのオプションを事前に高品質でレンダリングすることが可能です。これにより、店頭でもオンラインでも色や素材、ディテールといったすべての選択肢を視覚化し、好みの製品を選択できるような体験を提供しています。
また、このように選択された製品の情報を工場に送信するためのソフトウェアも開発しました。これにより、工場は情報の受け取りだけでなく、オーダーと生産ステータスの即時確認も可能となります。生産中、準備ができている、遅延している、オーダーがキャンセルされたといった、製造におけるすべてのサイクルをコントロールすることができるのです。かなり複雑に聞こますが、要はエンド・ツー・エンドのシステムを構築しているのです。
鍵となるのは、製品・販売拠点・生産の3つです。興味深いことに、工場の99%は特定のブランドに属しておらず、ブランドは外部の工場と協力しています。また大半の場合、ブランドの販売拠点は独自ドメインではなく、複数ブランドを取り扱うストアやブティック、デーパート、マーケットプレイスやオンラインプラットフォームで販売しています。つまり、デフォルトでブランドが管理していない工場で生産を行い、自社で管理していない店舗を利用して販売しているのです。
ここから言えるのは、工場はブランドの販売拠点と繋がることはなく、小売店がブランドとも工場とも繋がることはありません。それゆえバリューチェーン全体の最適化を図るためには、、ブランド・販売拠点・生産拠点をつなぎ、リスクとリターンをバランスよく再分配することが必要なのです。これには定義上、完全に中立で偏りのない外部の組織が必要となります。
現状のモデルでは、多くの無駄とリスクがあります。例えば、ブランドや小売店が販売しきれなかったドレスを捨てる場合、彼らはドレスだけを無駄にしているのではありません。実際にはドレスの素材、仮に綿製であれば綿を育てるために使用した水、製造に携わる人々の労働力と時間、工場の照明や電気を作るために発生した二酸化炭素、素材とドレスを運ぶための物流といった、非常に多くのもの毀損していることになります。つまり、製品を無駄にしてしまうことは、バリューチェーン全体を破壊することに繋がるのです。
生産・物流コストを下回る価格で販売されている製品や、売れ残りとなり廃棄されている製品を見ると、私はとても悲しい気持ちになります。このような事実を改善すべく、私たちはファッション産業のためのよりスマートなビジネスモデル、そしてよりスマートな産業モデルを見出す必要があると考えています。
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#RetailTech
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