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2023.10.13

着物のアップサイクルブランドRelier81の挑戦

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着物が持つ独特の柄を見ると、これぞ日本の文化と感じるだろう。だが、今日では日常的に着物を着る人はほとんどおらず、成人式や結婚式といった晴れ舞台で着用するくらいだ。あるいは、京都や奈良といった古都を観光するときに、レンタルして日本の風情を味わったという人も多いと思われる。
着物は脱ぎ着が大変なので、普段着にするには気が重い。でも日本の文化を身に着けたい。そんな考えを持つ人を助けるブランドが登場した。それが「Relier81(ルリエエイトワン)」だ。同ブランドは着物のアップサイクルを手掛けており、着物や帯を使った靴やバッグを展開している。
同社代表の田尻大智さんは、日本の着物産業が衰退しつつある現状を目の当たりにしてきた一方で、海外からの旅行客が着物を買って帰る姿を見てきたという。それがきっかけで始まったRelier81には、どのような思いが込められているのだろうか。同ブランド発足のきっかけや、同ブランドの方針、今後の海外展開に向けた計画などを田尻さんに伺った。
PROFILE|プロフィール
田尻 大智(たじり だいち)
田尻 大智(たじり だいち)

京都府京都市生まれ。1992年12月26日生まれ 30歳。
学生時代はヒッチハイクで九州に行ったり、リュックひとつで東南アジアを中心に旅をしていました。生まれ育った日本、京都から外に出て気付いた日本の伝統や文化に興味が湧き、着物や帯の伝統産業をリサーチ。そこで産業の衰退を目の当たりにし、現代に合ったカタチで世界に発信、国内に伝承できないかと着物や帯を使用した靴の開発を進めました。3年間の会社員を経てRelier81を創業。現在はブランドの運営の他、地元の大学や専門学校、企業などで講演を行うなど積極的にブランドの取り組みなどを発信をしています。

会社を立ち上げたきっかけを教えてください。
私は生まれも育ちも京都で、いわゆる日本の伝統的な文化というものは見慣れた光景で、特別な思いはありませんでした。転機は大学生になってからです。ヒッチハイクで九州に行ってみたり、東南アジアを旅してみたりと、よくいる活発な学生でした。旅先では必ず「どこから来たの」と聞かれます。「京都から」と伝えると、皆さん笑顔になったりポジティブな印象を持たれたりするんですね。
海外の方とお話をすれば、アニメやお寿司、ラーメンといった日本のイメージを列挙してくれます。なかには日本の文化に興味がある方も多く、神社や着物、侍などにも触れてくれます。
そのような経験を繰り返すと、自分が京都についてなにも知らないことに気づかされました。そこで「京都 伝統産業」というキーワードで検索してみると、予測でその後に「衰退」といったネガティブな言葉が出てくるんですね。海外の人がイメージする素敵な日本の産業が、国内では廃れているというギャップに驚きました。
すると、普段の町並みも変わって見えてきました。着物の問屋さんだった場所がホテルやマンションに建て替わり、確実に産業が衰退していると感じました。その一方で、京都のお寺で開かれる青空市に行ってみると、海外の旅行客が着物を買っているんですね。お話を聞いてみると、帰国して着る方もいれば、部屋に飾るという方もいました。「着物だからクールでしょ」と言われて、それだけ魅力あるものなのだと思いました。
そこから着物について調べ始めたのですか。
着物に目を輝かせている外国の観光客を見て、気軽に身に着けられるアイテムのほうが喜ばれるのではないかと思いました。着物はお年寄りが着るものというイメージが強かったので、それも払拭できたらいいなと。当時は着物のリメイクというと和柄のシャツやバッグがメインで、ヤンキー風というところがありました。それだと一部の人にしか受けないだろうと考えていたときに、ふと、靴はどうだろうかと思いつきました。
当時はサラリーマンでしたが、頭のなかは着物と帯で靴をつくりたいという思いでいっぱいでした。土日になれば、生地を探し求め町に出て、靴工場の方と話をしながら商品開発をする生活を送っていました。
世の中に出せる商品が出来上がったタイミングで会社を辞めました。ブランディングもマーケティングもなにもしていない状態でしたが、とにかく商品ができた喜びの勢いで、後先考えない決断だったと思います。そのときに立ち上げたのが、Relier81になります。
伝統的な産業に参入するときに、不安などはありませんでしたか。
なにも知らなかったことが、かえって良かったのだと思います。実際に着物や帯の買い付けの場で、これで靴をつくるつもりだと話すと、怪訝な顔をされる方もいらっしゃいました。
それでも、この現状を誰かが変えていかなければならないし、思い切ったことをして変化を加えていかないと伝統も残っていかないと考えていたので、くじけずに一歩ずつ進めていくと、次第に共感してくださる方も増えていきました。
問屋さんのなかにも、現状打破を考えている方が多くいらっしゃるので、そうした方々と一緒に商品づくりを進めています。
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