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2020.07.03

ファッションはどう変わる?軍地彩弓に聞く、バーチャル時代のデザインと表現、メディアと消費(後編)

新型コロナウイルスの感染拡大、それによる外出自粛の生活、そういった状況下で急速な盛り上がりをみせたバーチャルファッション。これまでFashionTechNewsでは、様々な事例を取り上げ、その背景にある想いに迫ってきた。一方で、こういった新たなテクノロジーが実現するサービスや体験は、「ファッション」にどんな影響を与えるのだろうか?
バーチャル時代の「ファッション」を多角的な観点から捉えるべく、ファッションクリエイティブディレクター・編集者の軍地彩弓さんをお迎えし、プロデュースされたキャラクター着せ替えアプリ「ポケコロ」KEITA MARUYAMAのコラボレーションについて、そして昨今のバーチャルファッションの盛り上がりについて、表現、教育、メディア、消費といった様々な視点からお話を伺いました。
PROFILE|プロフィール
軍地彩弓/ファッションクリエイティブディレクター・編集者

大学在学中から講談社の『Checkmate』でライターのキャリアをスタート。卒業と同時に『ViVi』でフリーライターとして活動。その後、雑誌『GLAMOROUS』の立ち上げに尽力。2008年に現コンデナスト・ジャパンに入社。クリエイティブディレクターとして『VOGUE GIRL』の創刊と運営に携わる。2014年に自身の会社、株式会社gumi-gumiを設立。『Numéro TOKYO』のエディトリアルアドバイザー、ドラマ「ファーストクラス」のファッション監修、Netflixドラマ「Followers」のファッションスーパーバイザー、企業のコンサルティング、情報番組のコメンテーター等幅広く活躍。

ゲームが新たなファッションメディアに

消費者にとって、バーチャルの世界の自由さがファッションの楽しみ方に与える影響はあるのでしょうか?
軍地WWDでの敬太さんとの対談でも話しましたが、自分がリアルでは着れないものをバーチャルの中で楽しみたい、という需要があるのだと思いました。私は最初、自分のファッションセンスに近いものをアバターに着せたいとのだと思っていました。実際にポケコロのユーザーさんにインタビューすると、全身ユニクロの方もいるし、ポケコロのアバターに近いような全身リズリサを着てツインテールという方もいました。アバターを自分に近づける、アバターに自分がなれないものを投影する、色々なアバターの在り方があって、すごく面白かったですね。
リアルなファッションは身体的なことから抜け出せない、必ず身体の問題が入る。太って今までの服が着れなくなるとか、サイズが無いから買えないといった問題がたくさんあるのですが、バーチャルな世界ではサイズからも開放してもらえるし、「ウェディングドレスなんて人生で1度限り」なんて言っていても、アバターにはずっとウェディングドレスを着せてるユーザーさんもいる。自分のなりたいものを実現するということが、デジタルだと制限なくできるのは、すごく良いことだと思います。
実際の消費への影響はあるのでしょうか?
軍地敬太さんとのコラボで思ったのは、アバターのためにデザインされたものを見て、こういう服を着たいから実際に敬太さんのブランドを見に行こうという方も出てくるんですね。実際に店舗へ足を運んだり、似たようなアイテムを買いに行くのを見ていると、デジタルからリアルの送客も起きている
なぜそういったことが起きるかというと、ファッションに触れる、これが着たいなと思うきっかけが、昔は雑誌を見れば様々な提案があったのが、今は誰かのインスタが主で、意外と情報が伝わりづらい、複雑化してしまっている。この服が着たいと思う気持ちが、インスタから来るのか、アニメのキャラクターから来るのか、多様なレファレンスがあるけど、その中に雑誌に代表されるメディアの存在が薄くなりつつある。
そうすると、ブランドをどう伝えていくかというのは、作り手にとっても大きなテーマなんですよね。例えば、敬太さんは今は雑誌広告を出していませんが、このポケコロとの企画でKEITA MARUYAMAのデザインを、今までKEITA MARUYAMAを1ミリも知らなかった人に伝えられた。となると、もうポケコロ自体がファッションメディアになってくると思うんです。そういった伝え方という部分でも、デジタルのファッションはすごく面白いと思います。
コラボに対し、やっぱり本来のブランドのアイテムが欲しいと思うんですね。
軍地そうですね。本物をいつか買いたいと思うからこそ、ブランド側にもコラボレーションをやる意味があるのだと思います。
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