移籍などをきっかけに新たな活躍を見せる選手がいる。経験と技術はあるがくすぶっていたベテランが、環境や監督が変わることで持っていた能力と役割がフィットし、新境地を見せることがある。この体現が、名古屋の伝統工芸品「有松絞り」で起きている。
その仕掛人が、
スズサンCEO兼クリエイティブディレクターの村瀬弘行さんだ。明治中期に創業した鈴三商店に端を発する、有松絞りの影師(型彫り絵刷職人)の家に生まれた5代目だ。影師とは絞り加工のコーディネーターである。
有松というのは、名古屋市の南東に位置する地名で、江戸時代には東海道の間の宿。尾張藩の庇護のもと「有松絞り」の技術が発展し、最盛期には1万人以上の職人がいたという。
しかし、この絞りの技術も日本の多くの伝統工芸と同じく、斜陽に立っていた。それが今、ドイツ西部デュッセルドルフを起点に、ヨーロッパで再び輝き出している。