シンプルでベーシックなアイテムを展開しているからこそ、素材やパターンへのこだわりが見えてくる。興味深いのは、デザイナーの石川恭寛は元々臨床工学技士として医療の現場に立っていたことだろう。医療分野からデザイナーへの転身。この経歴の背後には何があったのか。
今回、石川さんにはご自身の歩みと共に、服作りに込めた思いを語っていただいた。自身のファッション経験がすべての始まりだったようだ。
PROFILE|プロフィール
石川 恭寛 / ISHIKAWA TAKAHIRO
1996年生まれ
医療系大学で医療を学び国家資格を取得。卒業後、臨床工学技士として都内総合病院の集中治療室や手術室に勤務。退職後、文化服装学院の服飾研究科と技術専攻にて服作りを学び卒業。コレクションブランドでパタンナー経験をした後に、2023年からブランドの運営を開始。
「医療」から「衣料」へ
誰しもが、その経歴に驚くだろう。プロフィールには、臨床工学技士国家資格を取得し、臨床工学技士として都内総合病院の集中治療室や手術室に勤務していたとある。傍から見れば、輝かしい経歴だが、そのキャリアを捨ててファッションの道に進んだのは何故だったのか。「医大に通っていたときに、美術館のグッズを制作・販売する会社でアルバイトをしていました。当たり前ですが、物や商品は誰かが作らなければ存在しないのだと改めて感じました。