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【対談】Pinscreen ハオ・リー・ZOZOテクノロジーズ 高橋一馬「バーチャルヒューマン『Drip』が切り拓く未来図」

ZOZOテクノロジーズが発表したバーチャルヒューマン「Drip」。コンピュータビジョン領域を牽引するHao Liが創業したPinscreenとの協業で生まれたこのプロジェクトであるが、両者のコラボレーションはどのようにして生まれたのだろうか?
今回はPinscreen CEO・Hao Li氏と、本プロジェクトを率いるZOZOテクノロジーズの新規事業開発部署であるMATRIX本部長・高橋一馬氏の対談をお届けする。
左/Hao Li氏 右/高橋一馬
左/Hao Li氏 右/高橋一馬
PROFILE|プロフィール
Hao Li (ハオ・リー)

Hao Li(ハオ・リー)は、コンピュータ・グラフィックスとコンピュータ・ビジョンの起業家、研究者。高度なAIを使用したバーチャルアバター開発のスタートアップ、Pinscreen, Inc.(ピンスクリーン)のCEO兼共同設立者。UC Berkeleyの特別研究員。2013年にはMITテクノロジーレビュー誌にて、「Top 35 Innovator Under 35」に選ばれ、2018年にはOffice of Naval Research主催の、「Young Investigator Award」を受賞。2019年からDARPA ISATのメンバーとして活動し、ACM SIGGRAPH2020の「Real-Time Live!」にて 「Best in Show」を受賞。

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PROFILE|プロフィール
高橋一馬

欧州でスタートアップの立ち上げの後、大手総合ECプラットフォームにて新規事業、輸送企画等を経験。2019年よりZOZO TechnologiesにてVP of InnovationとしてR&Dと新規事業の創造に従事。

誰もがバーチャルヒューマンを作れるように

日本最大級の洋服通販サイト「ZOZOTOWN』を運営するZOZOグループで、なぜバーチャルファッションの分野に挑戦しようと思ったのでしょうか。興味を持った経緯、自社のビジネスにとって重要だと考えた理由を教えてください。
高橋背景として、ファッション産業が他の産業と比べて、テクノロジーの成長スピードが遅いという現状があります。一般的に繊維産業やアパレル産業の構造は、ここ数年で変化していません。一方で、例えばスマートフォンの普及のように、私たちの生活にはここ数十年間で多様な変化が見られます。このように変化が乏しい産業だからこそ、テクノロジーによっていかに変化を生み出せるのか、ファッションテック企業として考える必要があると思っています。
そして、そのためのアプローチのひとつが、「我々はバーチャルな世界と接続することがが可能か」という問いへの対峙となるでしょう。こういったバーチャルな世界の盛り上がりは、既にゲームを通じて見られている現象でもあります。例えば、日本で人気の「あつまれ どうぶつの森」では、バーチャルの世界で着飾って友人に会ったり、ただただファッションを楽しむことも可能です。
このようにバーチャルファッションを実装していきたいと考え始めましたが、その手法が不明確だったため、日本だけでなく、世界に視野を広げてパートナーを探していました。そして実際にいくつかの会社とトライアルも行い、スピード感があり、現実的でスケーラブルな技術を持っているパートナーとして、ハオが代表を務めるPinscreenと共働することになりました。互いに同じ気持ちを持ち、ビジョンを共有することが必要となる非常に大きなチャレンジではありましたが、私の上司でありZOZOテクノロジーズ代表取締役CINOである金山裕樹と共に、ハオと連携してムーンショットに挑むことを決めました。何より、スケーラビリティ(拡張可能性)を感じられたことが大きいです。
スケーラビリティが重要だということですが、それはなぜでしょうか?具体的に、Pinscreenの技術の優れているポイントを教えてください。
LiPinscreenで行っていることは、AIを活用したバーチャルアバターの自動作成と、ユーザーが自分でアバターを作成できる技術の開発です。素晴らしいバーチャルヒューマンを作っている企業は他にもたくさんあり、ビデオゲームでビジュアルエフェクトとして目にすることも多いかとおもいます。
 一般的にこのようなバーチャルヒューマンを作成するには、スタジオでデジタルアーティストが3Dスキャンを使って制作します。そして、良質のアバターを作成するには、非常に強力なマシンが必要で、微調整を行うのに数ヶ月を要します。これでは一般ユーザーが自分でアバターを作ることはできず、スケーラブルでもありません。何より非常にコストがかかります。
Pinscreen創業以来、そして私の長年の研究のなかで、AIを活用したバーチャルヒューマン作成のための技術開発は飛躍的な進展を遂げました。私が考えていたのは、誰でも自分自身の写真を撮って高品質なアバターを生成できるようにすることは、どのようにして可能なのか、ということでした。ZOZOテクノロジーズと最初に会話したときに、バーチャル試着における問題を解決したいということ、そしてユーザーが実店舗に行かずとも試着体験ができるようになることを互いに考えていることがわかりました。家のソファで座りながらでも自分の写真を撮って、自分がクールな服を着用している様子を見ることができるようにするということです。
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#Virtual Fitting
#Virtual Human
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