ZOZO NEXTによるバーチャルヒューマンユニット「Drip」。ファッション分野へのバーチャル技術の導入を目指し、アメリカを拠点とするPinscreen社の協力のもと、低コストで質の高いバーチャルアバターの生成が可能となっていることは、以前の記事でも紹介した。 今回、2021年11月22日からオンライン開催される文化ファッション大学院大学(以下、BFGU)のオンライン文化祭において、BFGUとDripのコラボレーション作品が発表されることとなった。バーチャルヒューマンは3DCGを取り入れた教育活動に、どのように展開できるのだろうか?このコラボレーションの詳細について、BFGUファッションクリエイション専攻の久保幸子・准教授、土岐崇之・助教、またプロジェクトに参加したファッションデザインコースのタク・レイリンさん、リュウ・シヴェイさん、ファッションテクノロジーコースの播磨・マイア・アジェレンさん、チョウ・モンクンさん、そしてZOZO NEXT担当者の池上夕貴氏を取材した。
バーチャル技術のファッションへの普及を目指して
今回のコラボレーションは、バーチャルヒューマンのファッション産業での活用において、アバターだけではなく衣服のクオリティ向上を目的に、ZOZO NEXT側からの提案によってスタートしたという。池上氏によると、単純に素材の再現やディティールへのこだわりだけでなく、BFGUの教育から生まれる独創的なデザインを取り入れることで、 よりクオリティの高いコンテンツをつくり出せるのではないかと考えたとのことだ。実際の制作は、すべてオンラインのコミュニケーションによって進められたという。まず、BFGUでのアパレル3D CADに関する授業のなかで学生による作品制作が行われた。その後、BFGUの教員とZOZO NEXTメンバーによる審査のうえ、選ばれた4作品を「Drip」が纏うこととなった。授業で制作された3Dデータを使用し、ZOZO NEXT側で一層リアルな表現になるよう、生地感の作り込みなどが行われた。また、オンライン開催の文化祭でのプレゼンテーションに向けて背景も制作され、現実世界では表現できないイメージが探究されたそうだ。
BFGU側では、2019年からアパレル3DCADの授業を行っているという。現在、デザイナーを目指すファッションデザインコース、モデリストを目指すファッションテクノロジーコースの両コースで開講されている。CLO3Dは、シミュレーション機能によって制作における時間も素材の浪費も抑えることができ、今後のさらなる普及が期待される。BFGUでは授業として導入するより前に自ら契約して3DCADを使用したり、3Dモデリングのアルバイトをする学生が登場し、いち早く需要の高まりを感じていたと久保准教授は語ってくれた。また土岐助教は、CLO3Dはデザインの枠自体を拡げる可能性を有しており、デザイナーが理想を伝達するためのツールとなることが期待され、デザインパターンメーカーといったキャリアも今後、生まれるのではないかと語ってくれた。また、CLO3Dを初めて使用する学生も多い一方で、アニメーション業界などでの3DCGの普及によって、こういった3D制作への興味も高まっているという。
今回、選抜された4作品は複雑で、細かいディティールも作り込まれた作品となっているのが印象的だ。ファッションデザインコースから選抜されたタク・レイリンさんは、中国のナシ族から着想を得て、オリジナルの柄も制作した。タクさんは初めて3DCADを使用したということだが、型紙の修正からのシミュレーションが何回も可能であり、デザインの自由度が増したと話してくれた。