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2024.04.15

デサントものづくりの心臓部 DISC OSAKAで生まれた新製品の魅力を探る

「世界一、速いウエアを創る」をコンセプトに、デサントジャパン株式会社のスポーツアパレルの研究・開発を行っている「DISC(DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX )OSAKA」。今年3月に、このDISCを見学する機会が訪れた。
デサントの中核をなすこの施設には、どのような設備が備わり、いかなる研究開発が行われているのだろうか。今回は施設内を巡りながら、デサントブランドのPROカテゴリーとTRAININGカテゴリーの製品開発を担当する谷さんと平野さんから話を伺っていく。

デサントのテクノロジーが詰まっている「DISC OSAKA」

DISC OSAKAは、最新の縫製機や3Dプリンターなどの設備を完備した開発施設だ。
動作解析や環境試験が可能な実験室のほか、選手の動作を分析できるモーションキャプチャールーム、アスリートの体を3Dスキャンできるボディースキャナー、試作品を短期間で作れるサンプル制作ラインなど、スポーツアパレルの高機能化や高性能化に向けた先端的な設備・環境が整っている。
はためく仕様のベンチレーション構造の実験
はためく仕様のベンチレーション構造の実験
サンスクリーンという、強い日差しによるジリジリした熱さの原因である近赤外線をカットする技術
サンスクリーンという、強い日差しによるジリジリした熱さの原因である近赤外線をカットする技術
マネキンにウエアを着せて、遮熱性とウエア内の温度を研究
マネキンにウエアを着せて、遮熱性とウエア内の温度を研究
社内で立てた仮説を製品サンプルの形にし、性能を検証するという一連の工程を施設内で完結できる
社内で立てた仮説を製品サンプルの形にし、性能を検証するという一連の工程を施設内で完結できる
DISCではプロアスリートの動作分析やニーズの把握も行い、より使いやすく機能的な製品開発を目指している。

PRO、TRAININGの新製品の魅力

ここからはPROを担当する谷さんと、TRAININGを担当する平野さんに今年3月から発売されている新商品について話を聞いていく。
PROシリーズを始動された経緯を教えてください。
弊社はこれまで80年以上、アスリートのためのものづくりを継続してきました。しかし、その技術を一般のお客様にも伝えていくため、象徴的な商品群をデサントのスポーツラインとして展開することにしました。
具体的には、このDISCで開発した先端技術をPROシリーズの商品として投入し、それを活用したトレーニングラインなど他のカテゴリーにも技術を転用していきます。このようにPROを起点に、デサント全体のスポーツブランドのイメージを高められればと考えています。
開発で苦労された点は?
PROの商品である、「Schematech®SOLAR BLOCK」と「Schematech® AERO」は、どちらも独自開発したSchematech®という技術を用いた素材を採用しています。
Schematech®とは、「Schema(設計、構造)」と「Technology(技術)」を融合させた造語です。1枚の生地の中で特殊な織り構造や編み構造を駆使することで、生地を切り替えることなく部分的に機能性を付与・変化させることをコンセプトとしています。
この特殊技術により、縫製箇所を最小限に抑え、生地の伸縮性を妨げることなく、人の動きや身体のしくみの研究を踏まえたデサント独自のパターン技術と組み合わせることで、快適な高運動性や高機能性を実現しています。
Schematech®の開発においては、まず意図や概念を具現化するためのアイデアとしての設計がありました。次に、その概念をどのように形にしていくかという2段階目の具体的な製造プロセスの開発があります。
加えて、このような世の中に類を見ない新技術/素材を採用する場合は、超音波接着などの縫製手法を取り入れる際に、実際に繋ぎ合わせられるかを何度も試行錯誤して調整していくんです。
一般的なアパレル企画は次シーズンの半年前から始まりますが、私たちの場合、1つの素材を作り上げるために2、3年をかけ、何度も繰り返し検証するのが通例です。私個人としては好きでそれにチャレンジしているので苦ではありませんが、通常のプロセスと比べると工数が格段にかかります。
「Schematech® AERO」シリーズのハーフスリーブシャツ
「Schematech® AERO」シリーズのハーフスリーブシャツ
また、開発は1人ではできません。Schematech®が目指すのは選手の快適性向上です。たとえば「涼しさ」を実現するには、どこに通気性を持たせるべきかを検討する人、それをデザイン化する人、さらにパターンをプログラミングする人など、さまざまな技術者が関与します。
そしてコンセプトに基づき、試作品の実証試験を行う人も必要となります。プロ選手の意見も加味しながら、全員が一丸となってSchematech®の物語を創り上げていくのです。ここが私たちのものづくりの強みであり難しさでもあります。
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