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2024.06.28

Flocus™:忘れられたカポック繊維の再発見

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Flocus(フローカス)は、2016年にJeroen Muijsers(ヨロン・ムイセルス)とSara Cicognani(サラ・チコチャーニ)によって設立されたテキスタイル・スタートアップで、カポック繊維の革新的な活用に取り組んでいる。インドネシアのカポックの木から得られる軽量で低刺激性な「ワンダー・ファイバー」に魅了された創業者たちは、この天然資源の無限の可能性を再発見し、世界的なサプライチェーンの改革に乗り出した。今回は、チコチャーニ氏にインタビューする機会を得た。

カポックの再発見

Flocusの創業のきっかけは、ムイセルスとチコチャーニがインドネシアのバリ島でカポックを用いたマットレスを体験し、その繊維の柔らかさと寝心地に魅了されたことから始まった。その繊維の柔らかさと心地よさに興味を持った2人は、カポック繊維はオランダがインドネシアを植民地支配していた時代に枕やマットレスの詰め物として広く使われていたことを知った。しかし1940年代から、より安価で生産が速いポリエステルを代表とする合成繊維に取って代わられていた。この発見をきっかけに、ムイセルスとチコチャーニは、歴史の中で失われてきた天然資源の可能性を再発見するため、3年にわたる研究開発を開始した。
カポックの木から得られるカポック・ファイバーは、軽量で低刺激性という特徴があり、抗菌機能や体温調節などの特性も備えている。また、栽培には灌漑や農薬、肥料が不要で環境に優しい。カポックの木は再生可能であり、年間400から600kgの二酸化炭素を吸収する。
さらに、カポックの根は土壌を安定させ、浸食を防ぎ、水分を保持することで乾燥期に周囲の生態系に貢献する。また、近隣の植物の土壌肥沃度を向上させるため、再生型アグリフォレストリーの実現に貢献が期待できるそうだ。カポックの木は他の作物が育たない丘陵地や非農耕地でも成長し、浸食防止壁や農地の境界作物として役立つ。
「カポックを発見したとき、自然がどうやってこれほど完璧なものを作り出したのか信じられませんでした」とチコチャーニは言う。「繊維には信じられないほどの可能性があり、私たちは世界がその利点を再発見できるよう全力を尽くしています」
Flocusのロゴは「f」と反転させた「f」を用いて、カポックが花からサヤになるまでの道のりを象徴する花を形作っている。そして、実際の花の色のヴァレンティナ・レッドを採用している。また、カポックの自然とのつながりを強調するために、「木」と「土」という漢字も使われている。

持続可能なサプライチェーンの構築

2016年、Flocusはインドネシアで先駆的な自動化施設を設立した。この施設は、カポック加工における初のCSR専用施設であり、繊維、種子、さやを綿密に分離する自動化技術を活用している。この技術革新は、最適な労働条件を確保し、社会的コンプライアンスを向上させるだけでなく、厳格な倫理的生産基準も堅持している。この施設の高度な選別・洗浄機械は、カポック繊維が汚染されることなく自然のままであることを保証し、それによって最高の品質基準を維持している。これらの努力は、人口動態や経済の変化により困難に直面しているカポックセクターにおいて、農学、サプライチェーン、加工技術を活性化させるというFlocusの戦略的コミットメントに不可欠なものだ。これにより、カポックの収穫から製品への加工までの全行程で透明性とトレーサビリティを重視し、環境と地域経済へのインパクトを最小限に抑えながら、高品質なカポック製品を提供することに成功した。
当初、Flocusは地域社会の協力を得るという難題にぶつかった。その主な理由は、100年以上も主流で使用されていなかったカポックという繊維の妥当性や価値に対する懐疑的な意見であった。課題は、カポックの可能性に対する信頼を回復することにあった。たゆまぬ研究と開発、そして相互学習と伝統的知識の尊重を重視したアプローチにより、Flocusは徐々に地域社会の理解と支持を得ることができた。この戦略は、カポック繊維を協力的かつ敬意を持って復活させるという同社の姿勢を実証するものだった。
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