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2022.10.20

アウトドアシーンでは必須! さまざまな分野で活躍するGORE-TEX(ゴアテックス)ファブリクスの現在地

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昨今、空前のアウトドアブームの中、街着でも多く見かけるようになった「GORE-TEX(ゴアテックス)」。その知名度ゆえに信頼感は抜群だが、実は知らないことも多い。そんなGORE-TEXだが、ウェア以外にも人工血管などの医療機器や自動車やモバイルエレクトロニクスに航空宇宙まで、いろいろな産業に製品と技術を供給している。今回は、その歴史やテクノロジーの秘密、そして徹底した品質管理までを紹介し、GORE-TEXの“今”を紐解いてみたい。

ゴア社の最初のプロダクト、実は絶縁ケーブル!?

「GORE-TEX」はゴア社が提供するブランド名で、「GORE-TEXファブリクス」が生地名であるのを知る人は少ない。ウェアやシューズなど様々なプロダクトで活用されているが、そのテクノロジーや技術を説明できる人も多くはないだろう。信頼感のある素材だけに、その実態を知っておきたい人も多いので、まずはその歴史をGORE-TEXブランドのマーケティング担当である伊藤由里子さんに伺った。
「ゴア社は1958年にアメリカのデラウェア州で設立されました。設立したのはデュポン社に勤めていたビル・ゴアとヴィーヴ・ゴア夫妻です。彼らは『ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)』[1]という耐熱性や耐薬品性の高いポリマーの潜在的な可能性を信じ、その研究開発を行うためデュポン社を退職したのです。
多くの特徴を持つPTFEですが彼らが注目したのは、その絶縁性でした。ゴア社の最初のプロダクトは絶縁ケーブルだったんです。以後、その研究に加わったのが息子のボブ・ゴアです。彼はそれまではただの塊でしかなかったPTFEが、特殊な条件の下だと伸ばせることを発見しました。均一な厚みでフィルム化できたことで、これを膜として使えるのではないかと研究を進めたことが、GORE-TEXファブリクスの始まりになります。
ビルの息子であるボブ・ゴアが、ある条件下で PTFE を急速に引き延ばしたことがきっかけとなり「延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)」が誕生
ビルの息子であるボブ・ゴアが、ある条件下で PTFE を急速に引き延ばしたことがきっかけとなり「延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)」が誕生
アメリカ・デラウェア州は緑が多く自然が豊かな場所だったことで、ゴア一家はアウトドアが好きだったそうです。防水性、透湿性、防風性を持つPTFEが膜状にできたことで“これはウェアにも使えるのではないか”と考えたボブ・ゴアが自社の素材をアウトドアウェアに搭載したのが、GORE-TEXファブリクスのはじまりというわけです」
「延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)」[2]のメンブレン(フィルム状の素材)を使用したプロダクトの特許をゴア社が取得したのが1970年。それが初めてウェアに採用されるのはもう少し後のことだった。
メンブレン(シート状の素材)は肉眼で見ると薄くて白い。このメンブレンが生地と生地の間に挟まってGORE-TEXファブリックスとなる
メンブレン(シート状の素材)は肉眼で見ると薄くて白い。このメンブレンが生地と生地の間に挟まってGORE-TEXファブリックスとなる
メンブレンは電子顕微鏡で見てみると小さな隙間が連続してできていることがよくわかる。この多孔質構造が、ゴアテックスの要である防水・透湿・防風という特性を生む
メンブレンは電子顕微鏡で見てみると小さな隙間が連続してできていることがよくわかる。この多孔質構造が、ゴアテックスの要である防水・透湿・防風という特性を生む
「1970年代中盤に、ほぼ同時に複数のブランドからGORE-TEXファブリクスを使ったウェアが発表されています。当時あった『Early Winters(アーリーウィンタース)』、『Synergy Works(シナジーワークス)』、そして『Marmot(マーモット)』の3社です。最初にその価値を見いだしたのは、やはり機能性を追求するアウトドアブランドでした」
ここからGORE-TEXブランドが飛躍的に広まってく。

布だけでは終わらない! ゴア社はテクノロジーを提供する会社

GORE-TEXは製品の品質保証を行っているのをご存じの方は多いだろう。実はプロダクトになったものを保証しているというのも驚きだ。1989年に始まった製品保証は、GORE-TEXプロダクトの機能性の高さに自信があるからにほかならない。それは、徹底した品質管理がなせる業でもある。その品質テストは数項目にも及ぶ。その品質管理についても伊藤さんは語ってくれた。
生地を引っ張ることでその耐久度をテストする。こういった過酷なテストにパスしたものだけが、あのタグをつけられるのだ
生地を引っ張ることでその耐久度をテストする。こういった過酷なテストにパスしたものだけが、あのタグをつけられるのだ
「防水・透湿・防風性という性能は生地だけにあってもダメなんです。例えば、ウェアにポケットがありすぎると、生地が重なる部分が多くなるので透湿性は落ちます。GORE-TEXファブリクスを採用する場合は、デザインや構造のところまでゴア社で指定する基準があるのです。それに則ってモノづくりをしていただき、製品になったものをゴア社でテストして、品質を確認するという流れになります。そのテストを通過しないと、GORE-TEXのロゴをつけて販売することができません。だからこそ、ゴア社が製品保証をできるというわけなんです」
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