3Dプリンタは、アディティブ(additive)なツールとして機械産業や自動車産業にて用いられてきた。その利点の一つは、従来の加工法で生み出せなかった三次元の形状を、3Dプリンタを用いることで、形状を生み出せるだけでなく、さらにラピッドプロトタイピングが可能となることにある。そんな3Dプリンタの有益性を衣服に応用すべく、ニット技術と3Dプリンタ技術の融合の試み「AddiKnit(アディ・ニット)」を構想する、上海ベースのニットデザイナー、Lingxiao Luo(リンシャオ・ルオ)。彼女が2018年Royal College of Art(以下RCA)の卒業コレクションで発表した「AddiToy(アディ・トイ)」は、ゆるく編まれたニット生地に直接3Dプリントを施すことで、3次元構造をつくり出すことができるという。今回、彼女の構想するニット技術と3Dプリント技術の融合に関するこれまでの試みと応用可能性について伺った。
3Dプリンターを使ってみようと思ったのは、London College of Fashion(ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション、以下LCF)での修士課程の始めにLCFのラボを見学し、そこでメッシュ生地に3Dプリントしたサンプルを見て「なぜニット生地ではダメなんだろう」と考えたことがきっかけでした。そして研究を始め、サンプルがいくつか出来た時にそれらを持ってRCAの教員にプレゼンテーションをしたところ、その翌年から幸運にもRCAで修士過程を始めることが決まったのです。私はその時、「よし自由に好 きなことができる場所を見つけた」と夢を見ているかのような気持ちでした。