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2024.03.15

“ランドセルのプロ”が、最新の技術から「ラン活」まで解説する『ランドセルくらぶ研究室』をスタートした理由

日本における小学生のシンボルであるランドセル。現在では「ラン活」という言葉に代表されるように、ランドセル商戦が活発化するとともに、ジェンダーレス化の流れの中でカラーリングも多様化するなど、さまざまな変化が生まれている。
また、教科書のタブレット化が進むなかでも、教材など荷物の重さが問題となり、「ランドセルが重い」「なぜもっと軽くならないのか」という声も上がるようになるなど、ランドセル選びやランドセルそれ自体に対する情報へのニーズも高まっている。
そうしたなかで、一般社団法人日本鞄協会 ランドセル工業会が、ランドセルのトレンドから豆知識まで、さまざまな情報を分かりやすく解説する『ランドセルくらぶ研究室』をスタートし、YouTubeTikToknoteなどで情報発信を行っている。
そこで今回、一般社団法人日本鞄協会 ランドセル工業会に所属し、『ランドセルくらぶ研究室』に出演している村瀬鞄行の村瀬靖人さんに、取り組みを始めたきっかけから、現在のランドセル事情、今後の取り組みまで伺った。

ネットで広がる「ランドセル情報」に対する危惧

はじめに、御協会が『ランドセルくらぶ研究室』を開始した経緯について教えてください。
私たちは、一般社団法人日本鞄協会に属していて、日本製のランドセルに関わるカバンの材料業、製造業、卸売業が集まった団体です。
ランドセルは日本の文化であるとともに、職人の技術も絶やしたくないという思いから、啓蒙活動を行っています。
もともとランドセルに関する情報は、工業会自体ではなく、各メーカーや販売店がそれぞれ自発的に発信していました。しかし、インターネットの普及により、個人やアフィリエイター等がブログやSNSで容易に情報を発信・拡散されるようになった時代のなかで、ここ数年、間違った情報が一人歩きをしてしまい、それを受け取ったユーザーさんが、それを正しいと認識してしまう状況を目にするようになってきました。
それに対して協会に所属している企業も危機感を持つなかで、一つの会社が意見をしても「自社のPRではないか」と思われてしまいかねません。そこで、協会として正しい情報を発信する必要があるということで、『ランドセルくらぶ研究室』を2024年1月からスタートしました。
具体的に、どのような情報が誤りであると感じていますか。
やはり今「ランドセルが重い」「ランドセルが熱い」といったワードがネット上に出回っていて、「ランドセルではなくリュックでもいいんじゃないか」という声があります。
実際のところは、親御様が使用していた時代のランドセルに比べると、サイズは大きくなってはいますが、軽量化されているんです。
ただ、近年はほとんどのお子様がタブレットなどの電子教科書を使っています。それらは教科書よりも重く、1つあたり1キロ以上あるものも多いため、「ランドセルが重いのではなく、中身が重くなっている」というのが正しい理解になります。
そのため近年では、各ランドセルメーカーはランドセルの丈夫さを維持しつつ軽量化と背負い易さを意識し、工夫して作っています。
それを踏まえても、「リュックの方が軽くて良い」という声があります。私たち自身、「お子様にとって一番良いものを背負っていただきたい」という思いですので、一概に「リュックはダメだ」と申し上げるつもりはありません。
しかし、実はただ軽いだけでは、中身を入れるとカバンの形が歪み、重心が崩れ、肩や背中に負担がかかってしまいますし、柔らかい素材ですと転倒した際に中身はもちろん、お子様の頭や体を守れないので、軽さや柔らかい素材だけがすべてではありません。
また、「夏場はランドセルを背負うと暑いのではないか」という指摘に対しても、業界として検証した結果からも、ランドセルは通気性や蒸れの対策がされていることが証明できています。
さらに日本では、災害からお子様を守る「防災」の観点でも注目を集めています。たとえば地震が起きた際に、しっかりとした作りであることから体や頭を守ることができます。
また、水害においては、ランドセルは水に浮くのでビート板代わりになることも実証されています。
そうした事実やランドセルに関する基本的な情報、私たちの実際の取り組みなどを、市場のニーズや反応を受け止めながら、発信したいと考えています。
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