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2022.11.05

「造船」の現場で培われた技術を応用! 香川発の焚き火ギアブランド 『THE IRON FIELD GEAR(ジ アイアン フィールド ギア)』

アクティビティにファッション、さらにはビジネスシーンにおいても注目を集め続けるキーワード「アウトドア」。スポーツの現場で培われた機能を取り入れたアウトドアウェアの人気や、ハイブランドとのコラボレーション企画など、長年にわたり我々のワードローブにも多くの影響をもたらしてきた。
そして、その人気ぶりは現在もとどまるところを知らない。キャンプ場は多くの人で賑わい、キャンプサイトを彩るギアも新製品が続々登場。新進気鋭のガレージブランドも大手メーカーに負けじと前線で活躍をみせるなか、キャンプファンの間で特に話題を集めているのが、瀬戸内発のブランド『THE IRON FIELD GEAR(ジ アイアン フィールド ギア)』だ。
『ジ アイアン フィールド ギア』の代表作、薪ストーブの「TAKI BE CAN(タキビーキャン)」(写真左)と焚き火台の「TAKI BE ITA(タキビイタ)」(写真中央)。どちらも燃え上がる炎の美しさや燃焼効率を計算してつくられている
『ジ アイアン フィールド ギア』の代表作、薪ストーブの「TAKI BE CAN(タキビーキャン)」(写真左)と焚き火台の「TAKI BE ITA(タキビイタ)」(写真中央)。どちらも燃え上がる炎の美しさや燃焼効率を計算してつくられている
新潟県の燕三条や岩手県の南部鉄器を筆頭に、伝統工芸や日本独自の金属加工技術を取り入れたアウトドアブランドや焚き火ギアの名前を出せば枚挙にいとまがないが、香川県丸亀市発『ジ アイアン フィールド ギア』にもまた、他のブランドには無いアイデンティティがある。それは「造船の街で生まれ、造船の技術でつくられている」ということ。ブランド誕生の背景について、発起人である株式会社興栄企画の森山竜志氏にお話をうかがった。
自社のアウトドアギア専用工場にてものづくりを行う、中央の森山氏率いる『ジ アイアン フィールド ギア』のメンバー。船舶造修業を行う企業が立ち上げたアウトドアブランドだけあり、工場には専門的なレーザー加工機や金属を曲げるNCベンダーマシンなど、プロ仕様の機械が多数
自社のアウトドアギア専用工場にてものづくりを行う、中央の森山氏率いる『ジ アイアン フィールド ギア』のメンバー。船舶造修業を行う企業が立ち上げたアウトドアブランドだけあり、工場には専門的なレーザー加工機や金属を曲げるNCベンダーマシンなど、プロ仕様の機械が多数

造船に携わる企業がアウトドアギアの製造へ参入。その理由とは?

 「45年ほど前に、愛媛県今治市に本社を置く日本国内最大手の造船メーカー・今治造船が、ここ香川県丸亀市に船づくりの核となる大きな造船工場を作りました。以来、この街は造船の街として多くの関連企業が点在するようになり、弊社も今治造船のパートナーとして船舶造修業の専門企業として長年造船に携わってきました。現在、私たちの事業の約2割が船舶造修理業で、約7割が製缶プラント事業や建築関連の製造業、残りがアウトドアギアの開発事業となっています。売上としてはまだまだですが、アウトドア事業の規模も年々拡大しています」
自身も巨大なタンカーなどの製造や修理を行う職人さんとして、長年現場にあたってきたという森山さん。そもそも日本の造船の核となる街で船造りの第一線に携わる企業が、なぜアウトドアギアを作るようになったのだろうか?
2019年に立ち上げられた「THE IRON FIELD GEAR」は、その高い技術と豊かな発想力で数々のヒットアイテムをアウトドアシーンに送り続けている
2019年に立ち上げられた「THE IRON FIELD GEAR」は、その高い技術と豊かな発想力で数々のヒットアイテムをアウトドアシーンに送り続けている
「趣味が高じてと言ってしまえばそれまでですが、私自身がもともと大のアウトドア好きだったことと、鉄を使ったものづくりができる環境が整っていたことから、自然とギア開発がスタートしました。当初は工場が空いているときを見計らって、個人的に欲しいと思うギアを趣味レベルで制作していたのですが、ワンオフで制作したアイテムを使っているとキャンプ場で多くの人から声をかけられるようになり、購入を希望する声も多かったことからブランドの発足を決意しました」
設計から制作まで、そのほとんどの工程を自社工場で完結。外注でものづくりを行うよりも素早く対応できることから、着想から製品開発までのスピードが早く、新しいアイデアを思い付いたらすぐにカタチにできるのだという
設計から制作まで、そのほとんどの工程を自社工場で完結。外注でものづくりを行うよりも素早く対応できることから、着想から製品開発までのスピードが早く、新しいアイデアを思い付いたらすぐにカタチにできるのだという
「まずはやってみよう」というところから2019年にスタートした『ジ アイアン フィールド ギア』は、コアなアウトドアファンを中心に瞬く間にその名を浸透させることに。いわゆるガレージブランドとしてスモールスタートからはじまったものの、現在では興栄企画の一事業部にまで成長し、製品も売り上げを伸ばしているという。
「会社の事業部として独立したのはここ最近の話です。ブランド発足当初は他の従業員たちが別の仕事をしている横で趣味の道具を作っていたわけですから、それは肩身の狭い思いもしました(笑)。現在は焚き火台や薪ストーブ、鉄板といった鉄製品はすべて自社のアウトドアギア専用工場で製造しています」

高い技術ד自分たちが使いたい”という自由な発想力

 キャンパーで焚き火好きの森山氏がフィールドで感じたことや、「こういう機能があれば」というアイデアを盛り込みながら開発を行うという『ジ アイアン フィールド ギア』。最大の特徴は、やはり造船の会社が造船の技術をベースにつくっているという点にある。
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