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2024.01.17

美・快適・健康を科学する:ワコール人間科学研究開発センターの挑戦

ワコールのものづくりを支えるワコール人間科学研究開発センターは、女性のからだを「美」「快適」「健康」の視点で研究している。
たとえば、具体的なかたちや数値で表した「ワコールが考える女性美」の研究、新製品のパフォーマンスを正確に測定する計測・評価方法の開発、そして新製品の開発を行っている。
特に注目すべきは、美しさの研究だ。この研究所では、約60年前から多くの女性のからだのデータを収集し、商品開発などに役立てている。
今回は、ワコール人間科学研究開発センターの主席研究員である岸本さんにインタビューを実施した。
PROFILE|プロフィール
岸本 泰蔵(きしもと たいぞう)

1964年、兵庫県生まれ。株式会社ワコール マーケティング本部人間科学研究開発センター主席研究員。京都工芸繊維大学・大学院卒業後、1988年にワコール入社。入社後はセンターの前身である人間科学研究所にて3Dスキャナーを中心とした人体形状に関する基礎研究、商品評価研究に従事。2019年4月から現職。

女性のからだを深く研究

まずは、ワコール人間科学研究開発センターの設立の背景について教えていただけますか?
当社は、主にインナーウェアの製造・販売を主とする企業です。そのものづくりの原点は、女性の体型を知り、その体型に合った下着を提供するところにあります。
一人ひとりの体型は異なりますが、より多くの方にここちよく感じてもらうために、女性の体型データを収集する必要がありました。特にインナーウェアは他の衣類よりもからだに密着するため、からだにジャストフィットすることがポイントとなります。
そのため、ちょうど60年前の1964年に前身となる製品研究部を設置し、毎年1,000人近くの4歳から69歳までの女性の人体計測を行い、延べ45,000人以上のデータを収集してきました。そのデータをもとに、現在もより快適に着用できるインナーウェアの開発に取り組んでいます。
ワコール人間科学研究開発センターで行われている、人体計測方法について教えていただけますか?
設立当時から世界共通の人体計測法である「マルチン式計測法」を採用しており、過去のデータとの比較や一貫性を保つため、60年間にわたり継続しています。
「マルチン式計測法」にワコール独自の詳細計測を加え、さらにオリジナルの計測装置も開発しながら、女性のからだを深く研究しています。
身長や体重など一般的な計測だけでなく、インナーウェアの設計にはバストやヒップを中心とした詳細なデータも必要です。計測箇所は左右のバストの間隔やアンダーなど、約160ヶ所の項目に及びます。
また、時代とともにさまざまな新しい計測方法を取り入れています。たとえば、からだの立体形状を瞬時に計測する3Dボディスキャナーや動作時のからだの動きを解析する光学式三次元動作解析システムなどを導入し、かたちから動きまで研究しています。
また製品開発には、実際に製品を着用する人の協力が欠かせません。ワコールではモニター様の協力を得て集団計測を行い、製品の着用感や機能性を評価してもらっています。
さまざまな項目でからだの研究を続ける理由について教えてください。
さまざまな方のからだにフィットするインナーウェアをつくるには、より多くのデータを収集し、それを年代やサイズ別に分析する必要があります。
ファッション産業では経験に基づいてつくられる商品もありますが、再現性を高め、より多くの方に満足していただけるインナーウェアをつくるためには、客観的なデータに基づいてものづくりを行うことが大切だと考えています。
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