JA/EN

AI検索

関連ハッシュタグ

Articles

時を超えて愛されるANTEPRIMA(アンテプリマ)のワイヤーバッグに宿る哲学

2025.06.18
創業32年を迎えるANTEPRIMA(アンテプリマ)は、日本人クリエイティブ ディレクター・荻野いづみ氏がイタリアから発信するレディースブランドだ。
なかでも、1998年に誕生したワイヤーバッグは今もなお若い世代を中心に人気を集め、ブランドの象徴として愛され続けている。その魅力や時代を超えて愛され続ける理由を、同社のデザイナーに伺った。

唯一無二の上品なデザインが話題に

アンテプリマの歴史は1993年にスタートする。洋服やニットを中心に、トータルファッションブランドとしてその世界観を築き上げてきた。ブランドを象徴するアイテムであるワイヤーバッグが登場したのは、1998年のことだ。
「もともとニットの工場を香港で展開していたこともあり、ニット分野が強みでした。ワイヤーバッグが誕生したのは、荻野がイタリアの素材店を巡っていたときにワイヤー製の眼鏡ストラップを見て、『あのワイヤーを編んでバッグを作ったらかわいいんじゃないか』と思ったのがきっかけだったと聞いています」
初期のワイヤーバッグ
偶然の出会いから生まれたワイヤーバッグは、まったく新しいコンセプトのバッグとして誕生した。丁寧に編み上げられたワイヤーバッグには、革や布では表現できない輝きとエレガントさがある。その斬新さは、当時のファッション界でまさに唯一無二の存在感を放っていた。
発売当初は、「売れないのではないかという懸念の声もあった」というが、百貨店で販売を開始すると、予想をはるかに超える大きな反響を呼んだ。素材の目新しさ、そしてフェミニンで華やかなデザインが女性たちの心を掴んだのだ。
さらに、2000年代には「CanCam」などのファッション雑誌で取り上げられたり、モデルたちの私物として紹介されたりしたことで大流行を巻き起こす。「大人可愛い」「キレイめカジュアル」志向の女性を中心に絶大な支持を集め、店舗には行列ができるほどだったそうだ。
2005年にオープンした六本木ヒルズ店

“ミニバッグ”の流行を機に人気が再燃

ワイヤーバッグは誕生から30年近く経つが、近年その人気が再燃している。背景には、現代のライフスタイルとの親和性があるという。
「スマートフォンを持つ人が増え、キャッシュレス決済が普及したことで、出かける際に財布を持たない人が増えました。荷物が減ったため、ミニバッグのニーズが高まっていると感じています」と同社のデザイナーは分析する。
この変化が、ワイヤーバッグのリバイバルに拍車をかけた。
「2020年ごろは20〜30代の購入者は1割以下でしたが、現在は約6割を占めています。ミニバッグの流行と、アンテプリマジャパン社がPRに力を入れ始めた時期が重なったことで相乗効果を生み、若い世代に支持されたことが再燃のきっかけになりました。
以前は『結婚式バッグ』と呼ばれるなど特別な日に使用するアイテムとしての需要が高かったのですが、今では普段使いの需要が高まっています。シンプル・ベーシックなコーディネートに、プラスαの華やかさを加えるアイテムとして時代に合致したのかなと思います」
一番人気の「スタンダード ミニアトゥーラ/シルバー」。小さめのサイズ感、軽量性、比較的手に取りやすい価格設定が、幅広い層から支持されている
また、「海外でも使いたいけど、ジッパーがないバッグはセキュリティの不安がある」「もっと軽いチェーンがいい」などの社内外の声を受け、新たにジッパーを追加したり、アルミ製の軽量なチェーンに変更。ユーザーの声に耳を傾けたアップデートを重ねている点も、愛され続ける理由のひとつだろう。

「シンプルなものづくり」を追求

今日までに多彩なデザインやカラーが展開されてきたが、そこにはアンテプリマで受け継がれているフィロソフィーが存在する。

「ものづくりのコンセプトは、“シンプル・繊細・魅力や面白さのあるもの”です。デザインや製法は創業当初からほとんど変えておらず、流行に左右されず長く使えるものを追求しています。
パターンや使用する糸の数も極めてシンプルです。たとえば『スタンダード/スクエア ミディアム』と『ツイスト』は、同じパターンを使っており、変えているのはとじ合わせ位置のみです。『ツイスト』は片側の合わせ位置をずらしてとじることで、異なる表情のデザインに仕上げています」
パターンは同じだが、とじ合わせ位置を変えることで異なる表情力が生まれる。左:スタンダード/スクエア ミディアム/シルバー 右:ツイスト/ラージ/シルバー
「糸については、基本的に使用するのは3本のみです。『スタンダード/スクエア』は、持ち手に1本ずつ、ボディに1本使っています。一方『セッキオ スティローゾ』は、前後のボディに1本ずつと底面に1本です」
「セッキオ スティローゾ」に使用した糸は前後のボディと底面の計3本のみ
「とじ合わせ位置の箇所、他にもジッパーをつける位置などを変えることで、シンプルな作りながらさまざまなバリエーションができるよう工夫しています。素材をミックスさせるなど、新しいデザインを生むときは、デザイナーが実際に自分で編みながらデザインを考えています」
このブレない哲学こそが、流行に左右されない普遍的な美しさの秘訣なのだ。

独特なきらめきは、職人の技があってこそ

アンテプリマのワイヤーバッグが唯一無二の存在感を放つのは、その素材やデザインだけが理由ではない。熟練の職人がすべての工程を手作業で編み上げており、一つひとつに手仕事の温かみが宿る。
職人が一つひとつ手作りで編み上げる
「ワイヤーコードを規則的に編むと光の当たり方が画一的になるため、あえて不規則に編むことでより美しいキラキラ感を演出しています。ただし、単に不規則に編むだけでは横幅がきれいに揃わずガタついてしまうので、熟練した職人技が必要不可欠です。
さまざまなワイヤーバッグがあるなかで、角度によって変わる独特のきらめきや美しい編地はアンテプリマだからこそ出せる部分かと思います」
より美しいきらめきを出すため、ワイヤーはあえて不規則に編まれている
また、編み方もデビュー当初から少しずつアップデートされており、荷物を入れた際の伸び感を軽減するなどの工夫が加えられているという。細部にわたる職人のこだわりと、常に改良を重ねる探求心こそが、アンテプリマのワイヤーバッグの品質を支えている。

長く愛されるブランドであり続けるために

今後の展望を尋ねると、「可能な限り新しいチャレンジをしていきたい」と未来を見据えた言葉が返ってきた。
「素材のワイヤーコードも常に新規開発が行われており、現在では600色以上ものカラーバリエーションがあります。
また、リサイクルされた洋服の繊維から誕生したワイヤーの使用も試みています。耐久性の問題でまだ量産には至っていないものの、ファッションショーなどで徐々に披露しています。
日本ではバッグ中心のブランドというイメージが強いですが、たとえば香港では洋服のイメージが根強くあります。日本でも洋服の展開を強化し、アンテプリマの世界観をより広く伝えたいです。今後も長く愛用されるブランドでありたいと思っています」
ワイヤーバッグは、アンテプリマというブランドの世界観を体現する存在として、これからも輝き続けることだろう。その進化の歴史は、私たちに常に新しい驚きと喜びを与えてくれるに違いない。

Text by 奥山 りか

Tags

この記事はいかがでしたか?

シェアリンクをコピーしました

Related Articles

Related Database