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【日本未上陸】ベルギー発のバッグブランド「ANNALOCH(アンナロック)」が“皮革繊維再生複合材”で描く、ものづくりの未来
伝統と革新の間を旅するバッグブランド「ANNALOCH(アンナロック)」。そのデザインと哲学の核には、異なる文化を背景に持つ2人の設立者、アンナ(ANNA)とラーズ(LARS)の物語がある。ネス湖での邂逅から始まったブランドは、東洋と西洋の美学を織り交ぜながら、クラフトマンシップとサステナビリティを融合した、タイムレスなバッグを作り続けている。
今回、共同設立者でブランド戦略を担うラーズ・スヴェン・クラヴァー(Lars Sven Klaver)に話を聞いた。
PROFILE

ラーズ・スヴェン・クラヴァー(Lars Sven Klaver)
ANNALOCH 共同設立者
伝統と革新を紡ぐ、レザークラフトの未来
異なる背景を持つ2人のクリエイター、アンナとラーズ。アンナは2008年から革職人としてのキャリアを重ね、伝統技術に深い情熱を注いできた。一方のラーズは、北米のロングボード文化を南フランスに紹介したパイオニアとして自身のブランドを立ち上げた後、ロンドンで「Burberry」のマーケティングを経験。ファッションアクセサリーの分野へ活動の幅を広げた彼が、アンナと出会い、2013年にアントワープで共同設立したのが「ANNALOCH」である。
「設立のきっかけは、ネス湖への旅路でした」とラーズは振り返る。
「アンナが革職人として持つ深い献身、彼女の集中力と正確さ、革への愛情に触れたことが、『ANNALOCH』が目指すべきものを私に信じさせてくれたのです」
設立当初から2人の役割は自然に分かれ、アンナがアートとクラフトを、ラーズがブランド戦略と物語の構築を担当するという理想的な体制が生まれた。彼らの揺るぎない理念は、伝統的な職人技術をモダンなファッションへの架け橋とし、実用的でありながら洗練された、日常に寄り添うタイムレスなデザインを生み出すことにある。

バッグを「ツールベースのアクセサリー」と捉え、軽量レザーや最小限の金具の使用で実用性を突き詰めつつ、そこにクラフトの美学を重ねることで、「ANNALOCH」ならではの“道具と美の架け橋”を実現している。
こうした理念は、設立から10年以上を経た今もブランドの根幹を支えている。“機能美”をコンセプトに、バッグを単なる装飾品ではなく「道具」として捉え、使いやすさ、収納力、プライバシー、安全性を備えたスタイルを目指す。
「バッグはツールベースのアクセサリーであるべきという信念のもと、軽量の革、ミニマルな金具、内部の構造など、最小限ながら機能的なディテールにもこだわっています」
伝統と革新が出会う「ANNALOCH」は、職人技とブランド戦略が織りなす絶妙なバランスの上に成り立っているのだ。
東西文化の融合が生み出す独自の美学
「ANNALOCH」のデザインは、2人の異なる文化背景から生まれる。ラーズはベルギーで育ち、母親の影響でバウハウスの合理性や構造美学に触れた。「私の幼少期の環境は、家のインテリアから照明、椅子に至るまで、ドイツのバウハウス運動のデザイン哲学に影響されていました。その後、南フランスでの生活やカナダでの学びもあり、国際的な視点を持つようになったのです」

対してアンナは中国の自然豊かな村で育ち、医療からデザインの分野へと転身した異色の経歴の持ち主だ。土の匂いや植物の色、静かな自然のバランスの中で鋭敏な感覚を養ったといい、その自然との調和こそが「ANNALOCH」のデザイン言語の中核をなしている。
「東洋の陰陽の美学と、西洋のバウハウス的な『形は機能に従う』という合理性が融合し、私たちのデザイン言語は誕生しました」とラーズは言う。ブランドの本質は、東西文化の対話から生まれた、自然美と手仕事の温かみ、構造的な規律と美的な抑制の静かな調和にある。
たとえば、アンナの祖母が手編みしたラタンバスケットに着想を得たコレクションは、伝統素材を現代のミニマリズム様式で再解釈し、東西の美学が融合した姿を体現している。こうした東洋の感性と西洋の理念に加え、創業者2人が共有する「自然への深い愛情」が、ANNALOCHの静かでタイムレスな美を支えているのだ。

持続可能性を革新する新たな挑戦
ブランドのものづくりにおいてもう一つ欠かせないのが、環境への深い配慮である。2020年、パンデミックによって世界が停止した時期、「ANNALOCH」もまた活動を制限せざるを得なかった。その停滞の中で、2人は自らに問いかけた。ファッションブランドとして、地球に対しより長期的な責任を果たすにはどうすればよいのか、と。

「廃棄される動物の革の切れ端を、接着剤を一切使わずに再構成したEU認証の皮革繊維再生複合材(革の繊維を再利用した素材)に出会ったことが転機でした。本来この素材は靴用でしたが、私たちはそれをバッグ用に適した厚みと構造に再設計したのです」
この新素材を軸に、過剰な装飾を排した“RCL”コレクションが誕生した。裏地にはリサイクルPETボトルを使い、包装も最小限に抑えるなど、環境負荷を徹底して減らしたのである。
「“RCL”の発売は単なる製品革新ではなく、持続可能性をブランドの長期的な哲学に据える転換点となりました」とラーズは強調する。
自然との共生を志し、世代を超えて使い継がれるものづくりを目指すその姿勢は、クラフトマンシップとサステナビリティの両立という新しい未来像を示している。
環境負荷を抑えつつ高品質を追求するのは簡単ではない。皮革繊維再生複合材は通常の革よりコストが低いわけではなく、「一部の消費者が再生革を安価な合成皮革と誤解することもありますが、これは教育と時間が必要な課題です」と話す。
伝統技術を守りつつ革新素材を取り入れ、「私の娘が何十年後も使えるバッグを作りたい」というアンナの言葉に象徴されるように、「ANNALOCH」は長く愛される持続可能なファッションのあり方を示しているのだ。

「私たちがファッション業界に望むのは、過剰生産や大量廃棄に陥らず、ゆったりとした時間軸の中で美しさと価値を見直すこと。私たちは穏やかで持続的な変化を目指しています」とラーズは結ぶ。
ANNALOCHはこれからも東西の美学と技術を結び、環境への配慮を深めながら、真に価値あるものづくりの未来を描いていくだろう。
Text by ELIE INOUE















