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オールシーズン履けるサンダルの代表格:ビルケンシュトックの「ボストン」が選ばれ続ける理由
「人とは違うものを身に着けたい」と思うのがファッションを愛する人のサガ。
ただ、なかには「人と被っても全然かまわない」と思えるアイテムが存在する。たとえば、BIRKENSTOCK(ビルケンシュトック)の「BOSTON(ボストン)」がまさにそうだ。
街ゆくお洒落な人たちの足元を見れば、やけにこのサンダルが目につく。それも一年中。スタイリングもアメカジからアウトドア、キレイめ、モードまでまさに十人十色だ。
ボストンはいかにしてお洒落な人たちのcommon senseになり得たのか? その答えを探っていこう。
解剖学に基づいて設計された独自のフットベッド
まずはブランドの歴史について。ビルケンシュトックの靴づくりの伝統は、ドイツに残された公文書に、ヨハネス・ビルケンシュトック氏が靴職人として記された、1774年にまで遡ることができる。

20世紀の初め、当主のコンラッド・ビルケンシュトック氏は、足の治療のためにインソールを製作していた。
当時のドイツでは、足の治療に金属製のインソールが使用されていたという。なぜなら当時は、「足を治すにはまず固定から」という概念が主流だったから。
しかし、コンラッド氏の考え方は違っていた。
インソールとは、足の治療のためだけに使われるものではなく、足全体の健康にとって極めて重要な役割を果たすものだと考えた。
そこで彼は、世界で初めて足の形状を考慮したインソールの製作に取りかかった。
課題となったのは、インソールを柔軟にして自然な歩行を促すと同時に、足を支えるという安定機能も確保すること。
10年以上もの間研究を続け、1913年には、コルクなどを混合した独自のインソールを考案。彼はその柔軟性に富んだインソールを「フットベッド」と名付けた。
ヨーロッパのクロッグをヒントに開発されたボストン
彼の靴の理想像は、その後、カール・ビルケンシュトック氏に受け継がれた。1963年には、フットベッドを組み込むことで自然な歩行を可能にした「MADRID(マドリッド)」が発売された。
ちなみにモデル名はユーザーが着用シーンを連想しやすいよう世界各国の都市名がつけられている。

当初は医療分野で注目を浴びたビルケンシュトックだったが、1960年以降は、ナチュラル志向のヒッピーカルチャーと結びつき、アメリカ市場で急成長を遂げた。
日本でも1990年代のストリートで流行し、ファッションシューズとしての地位を確立した。

ボストンは1976年に登場した。
コルクのフットベッドが使われた、軽くて柔軟なクロッグ(サンダル状の木靴の一種)として開発されたこのモデルの目印はスエードアッパー。これは足をさまざまな落下物から保護するための役割を果たした。

アッパーにはベロアレザーと呼ばれるサンドペーパーで表面を起毛させた革を採用。耐久性や吸湿性に優れており、季節を問わずに履くことができる。
一般的なクロッグタイプのサンダルとは異なり、アッパーにストラップが付いているため、サイズを自由に調整することも可能だ。
心地良い履き心地を実現する4層のフットベッド
現在は、オイルドレザー、スムースレザー、ヌバック、フェルトなど、さまざまなタイプのボストンが販売されている。
フットベッドは4層構造になっている。
足が直接当たる第1層には、通気性に優れたソフトなスエードが使われ、その下の第2層には、湿度をコントロールする目の詰まったジュート(麻)が配される。
第3層はしなやかで丈夫かつ履くほどに足の形になじむコルクラテックスで、第4層はフットベッドを安定させる目の粗いジュートでできている。
アウトソールには軽量とグリップ力に優れたEVA混合ラバーのアウトソールが使われている。

形状は解剖学に基づいて設計された立体的なアーチ構造に。
深いヒールカップや高めのフットベッドのエッジ、トゥグリップ、そして縦と横の2つのアーチサポートが足を安定して支えることで、まるで砂の上を歩くような自然な歩行をサポートする。

足が包み込まれるような快適な履き心地は、文字通り「Foot Bed(足のベッド)」だ。
時代の波に乗って、セカンドブームを巻き起こす
長らく定番サンダルとして根強い人気を誇ってきたボストンは、ここ数年、一部モデルの入手が困難になるほどのブームを巻き起こしている。2018年頃から、ファッション業界ではアグリーセーターの流行など、「野暮ったさこそがカッコいい」という風潮が高まり、その流れでボストンがあらためて脚光を浴びたといわれている。
また、コロナ禍によってホームオフィスシューズとしての需要が高まったことも人気再燃の要因のひとつとなった。

セレブたちの視線も集中している。クリステン・スチュワート、ケンダル・ジェンナー、カニエ・ウェストらのセレブが着用したことがSNSで話題となり、ブームに拍車がかかった。
他ブランドからのコラボレーションでも注目を浴び、これまでマノロ ブラニク、リック オウエンスなどとのコラボモデルがリリースされた。
「デザイナー自身が愛用者」、「スタイリングに合わせやすい」などの理由もあるが、ビルケンシュトックが2019年にパリに設立したスペシャルプロジェクト専門のチーム、「1774」もまたコラボ活性化の原動力になっている。

最近では、アッパーからインソール、アウトソールまでEVA素材を使ったボストンも展開されている。
EVAは弾性や緩衝性が優れるほか、耐水性にも優れているため、夏場の活躍も期待できる。

ただ、ボストンには人気モデルゆえの問題もつきまとう。前述した通り、一部のモデルは入手が難しくなっている。
2012年から現在までで、ビルケンシュトックはボストンとアリゾナの年間製造量を12億足から30億足まで増やしたが、それでも需要に追いついていないのが現状だ。

というのも、ビルケンシュトックでは一足を作り上げるために、50もの手作業が駆使される。さらに全モデルの95%がドイツで生産され(5%もヨーロッパ製)、フットベットに関しては100%がドイツ製。こうした生産背景ゆえに大量生産が難しく、生産数を容易に増やせないのだ。
今後は新規工場を開設し、数年のうちに生産数の倍増を図るという。
シンプルゆえにどんな服にも合わせることができるうえ、春夏は素足で、秋冬はソックスと、オールシーズン履くことができる。
何より独自のフットベッドが生み出す、足がよろこぶ心地よさ。ゆえに玄関で靴を選ぶとき、ついつい手が……いや、足が伸びる。
お洒落な人たちがこぞってボストンを履くのには、納得の理由があるのだ。
Text by Ryota Osujo















