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「冷蔵庫で冷やして着る」新発想! フットマーク『冷やしトク』が挑む猛暑対策

2026.06.22
フットマーク株式会社は、「着る前に冷やす」という独自のアクションを取り入れたPCM配合の暑熱対策ウエア「冷やしトク」シリーズを発表した。
あらかじめ冷蔵庫で衣服を冷やしておくという斬新なプロダクト設計は、連日の猛暑が社会課題となる現代において人々にどのような体験と安心感をもたらすのだろうか。
この記事では、製品開発を主導した同社ライフスタイル事業部の責任者である小林智也氏に話を聞き、宇宙産業由来の技術を衣類に応用した開発の歩みと、暑さと共存する社会に向けた未来のウエアのあり方を明らかにする。

PROFILE

小林 智也(こばやし ともや)

フットマーク株式会社  取締役・ライフスタイル事業部 部門長

布団の敷きパッドから着想を得た「冷感持続」への着目

気象庁の発表によると、2025年の日本の夏の平均気温は観測史上最高を記録し、猛暑日の観測地点数は延べ9,385地点に達した。連日の厳しい暑さが社会課題となるなか、売り上げの約半分を水泳用品などの子ども向け商品が占めるフットマークにとっても、熱中症対策は喫緊の課題であった。同社のライフスタイル事業部の小林さんは、これまでにない暑さ対策商品の開発を模索し続けていた。
「世の中にネッククーラーが出回り始めたときに、PCM(相変化材料)という素材の存在を初めて認識しました。その後、布団の敷きパッドにそれが採用されているのを見たとき、弊社の扱う繊維にもこの加工ができるのではないかと考えました」
従来の冷感ウエアは、触れた瞬間に冷たさを感じる「接触冷感」や、汗などの水分を利用する「気化熱冷却」の素材が主流である。しかし昨今の過酷な猛暑下においては、それらの機能だけでは解決しきれない課題がある。冷感がより長く持続し、発汗や天候といった身体・環境条件に左右されないアプローチが、この素材でできるのではないかと直感したのだ。
小林さんのこの気づきが、フットマークの独自の取り組みの出発点となった。もともと宇宙服の温度調節のためにNASAが開発したとされるPCMは、周囲の熱を吸収して一定の温度を保つ特性を持つ。この特性を衣服の繊維に応用できれば、既存の市場にはない、長時間の冷感を持続するウエアを生み出せると確信した。
冷やしトク 半袖Tシャツ レディース(左)、メンズ(右) ともに3,630円(税込)
冷やしトク ストール(左) 2,090円(税込)、冷やしトク ネックストール(右) 1,045円(税込)
冷やしトク レディース アームカバー(左) 950円(税込)、冷やしトク メンズ インナースパッツ(右) 3,190円(税込)※レディース インナースパッツも同価格で展開

理想の冷感ウエアを求めた技術の探求

PCMを衣服に取り入れるというアイディアは画期的であったが、実現への道のりは平坦ではなかった。ネッククーラーのような樹脂製のリングとは異なり、衣服のしなやかな繊維にPCMを定着させ、かつ着心地を損なわないようにするには、極めて繊細な技術が求められる。
素材選びにおいても妥協を許さなかった。肌に直接触れる衣類である以上、安全性は何よりも優先されるべき条件である。同社は、医療分野でも採用されるほど安全性の高い、植物由来のPCMへとたどり着いた。
このPCMは、ホルムアルデヒドのような有害物質が含まれないポリウレタン樹脂によってマイクロカプセル化されている。小林さんはその感触について次のように語る。
「カプセルは約20ミクロンと非常に小さいものです。最初は生地が硬くならないか心配でしたが、完成した製品は違和感のない自然な着心地に仕上がりました」
コットンライクな柔らかな質感。しわになりにくく、普段着にも、アクティブシーンにも重宝
微小なマイクロカプセルを採用したことで、生地のごわつきを防ぐことに成功した。さらに、カプセル内に40〜50%という高い割合でPCMを内包させる技術を持つヨーロッパの工場と提携できたことで、冷却効果の基盤が整った。しかし、この素材を実際の「生地」として完成させるための試練は、ここからが本番であった。

海を越えたパートナー探しと「Téxion(テキオン)」の誕生

良質なPCM素材とマイクロカプセル化の技術を確保したものの、フットマークは生地の染色や加工を行う自社工場を持っていなかった。そのため、繊維への定着加工を請け負うパートナーを見つける必要があった。
白羽の矢が立ったのは中国の協力工場だった。しかし、そこでもPCMの繊維加工はまったくの未知の領域だった。開発チームは7〜8種類の生地でテストを行ったが、なかなか思ったような結果が出なかったという。さらに、今回採用に至った生地であっても、初期のテスト段階では生地表面の温度に有意な差が出なかったのである。
「一度も温度の優位性が出なかったときに、PCMが繊維に付着しきれていないのだと気づきました。どうすればより多くのマイクロカプセルを定着させられるか、溶剤の配合比率などを何度もテストしました」
度重なる試行錯誤の末、ようやくPCMが繊維にしっかりと定着し、未加工の一般繊維と比較して表面温度が最大4℃低くなる新素材「Téxion(テキオン)」が誕生した。20回の洗濯後でも約80%の冷感性能を維持するという優れた耐久性も実証され、実用化への大きな壁を乗り越えた。チームは次なるステップである、消費者への「届け方」の設計へと歩みを進めた。

「冷やして着る」体験を日常に溶け込ませるパッケージ設計

強力な素材を手に入れた開発チームは、素材の機能性に甘んじることなく、消費者に驚きと実感を与える「体験」をデザインしようと考えた。Téxionは熱を吸収して28℃を一定時間キープする特性を持つが、真夏の炎天下でそれを最大限に実感してもらうには、もう一つの仕掛けが必要だった。
「クローゼット内の環境が必ずしも28度以下とは限らないため、着る前にPCMを確実に固まらせる必要があります。どうせなら、キンキンに冷えたTシャツを着るという、かつてない『冷たい!』という体験を提供したいと考えました」
こうして「冷蔵庫で冷やしてから着る」というユニークなコンセプトが決定した。冷蔵庫に15分程度入れておけば、生地の温度は約5℃まで下がり、PCMが完全に固体化する。着用直後の強烈なひんやり感と、その後Téxionがもたらす適温維持という2段階の体験が実現したのである。
一方で、衣服を冷蔵庫に入れるという行為に心理的抵抗を抱く消費者も少なくない。この課題に対して、同社はパッケージに工夫を凝らした。Tシャツ用には500mlのペットボトルと同等のサイズ、アームカバーやネックストールは生地の使用量が少ないため、その半分の高さの専用透明ケースを用意し、庫内のにおいが衣服に移ることを気にせず保管できるようにした。新しい行動様式を、無理なく日常に溶け込ませるための細やかな配慮が施されている。

多様なライフスタイルに寄り添う温度調節テクノロジー

こうして誕生した「冷やしトク」シリーズは、アウトドアやレジャーの場面にとどまらず、幅広いシーンでの活用が想定されている。たとえば、冷房の効いた屋内と猛暑の屋外を頻繁に行き来する職種での利用である。
訪問介護の現場などで働く在宅介護ワーカーは、過酷な温度差の中で絶えず移動する。涼しい室内で過ごす間にウエア内のPCMが再凝固し、外へ移動する際に再び冷感を発揮するこのウエアは、強力なサポートツールとなるだろう。さらに、小林さんの見据える温度調節テクノロジーの応用範囲は夏だけにとどまらない。
「PCMの特性を生かし、秋冬向けには設定温度を31℃や32℃にして温かく感じられるウエアの構想もあります。また、車椅子の座面の不快感軽減など、介護事業への転用も検討しています」
同社は今後、中核事業である学校向けの体操服への技術導入も視野に入れている。体育の授業中に約40分間にわたって28℃を維持し、子どもたちを熱中症から守るという明確な目標に向かって歩みを進めており、テクノロジーを通じた社会課題の解決に真正面から向き合っている。
フットマークの「冷やしトク」シリーズは、過酷な猛暑に対する一つのアンサーである。未曾有の気候変動に直面する現代において、私たちが当たり前のように楽しんできた夏の活動が制限されつつある。
しかし同社は、テクノロジーの力でその制限を取り払い、誰もが安全に心地よく過ごせる社会を目指している。「暑いからやらない」ではなく、「これがあるから楽しめる」。そんな前向きな選択肢を提供する温度調節テクノロジーは、私たちのライフスタイルをより豊かで自由なものへと変えていくだろう。

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