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【日本未上陸】NY発カシミアブランド「LERET LERET(ルレ・ルレ)」が編み出す、時を超えるセーター

2026.01.08
セーターは、温もりと記憶をまとい、人や文化をつなぐ衣服だ。
ニューヨークを拠点に活動するカシミアブランド「LERET LERET(ルレ・ルレ)」は、そうしたセーターの本質を見つめ直し、希少性、親密さ、そして物語を編み込むブランドとして2019年に誕生した。
共同設立者であるルレ兄妹(エドゥアール、アンドレア、アレシア)が語るその誕生の必然は、どこか響き合うこだまのように、ブランドの未来を静かに照らしている。

PROFILE

(左から)エドゥアール・ルレ、アンドレア・ルレ、アレシア・ルレ(Edouard Lere, Andrea Lere and Alesia Leret)

LERET LERET創業者

響き合う名前“ルレ・ルレ”から生まれる世界

「ブランドの誕生は選択ではなく、むしろ必然だった」
そう語るのは、エドゥアール、アンドレア、アレシアのルレ兄妹だ。このラグジュアリーレーベルは、季節やトレンドを超越した、時代に左右されない普遍的なデザインを作り上げるという、単一のビジョンから誕生した。3人の異なる創造的な声の間で織りなされる対話が、ブランドの核となっている。
パリ、カラカス、ニューヨークを行き来しながら育った彼らにとって、芸術や物語、そして衣服は常に身近な存在であった。中でもセーターは、温もりや記憶、アイデンティティを織り込んだ特別な存在であり、スケッチを始めたことは「ビジネスの決断ではなく、これまでの人生の自然な延長にすぎなかった」という。
ブランド名“ルレ・ルレ”は彼らの姓を2度繰り返したものであり、単なるラベル以上の意味を持つ。こだまのように響くリフレインは、彼らのルーツに根差しつつも、あらゆる固定観念から開かれた存在を示し、自らを超えて世界に広がっていくものを暗示している。
「名前が世界に広がり、見知らぬ人や場所で生きているのを見ると、それはすでに皆のものになったのだと実感する。その距離感は謙虚さと解放感を与えてくれる」と彼らが語るように、名前そのものがブランドの哲学を映し出している。
ブランドの核には、モンゴルのカシミアとポルトガルのコットンという異なる素材の美を結びつける協働、タイムレスなデザイン、そしてサステナブルな価値観が据えられている。

誠実さと遊び心が作る「余白」のデザイン哲学

ルレ兄妹が考える「美」とは、完璧な均整ではなく、誠実さと遊び心のバランスにある。
「セーターは声高に主張する必要はない。ただ身体の上で生きているように感じられることが大切だ」という彼らの思想は、デザインにも深く反映されている。彼らにとってのセーターは、主張するのではなく、着る人の個性を受け止める余白を持つ存在なのだ。
彼らは、率直でありながらわずかにずれた形、馴染み深いのにどこか不思議な色、そして意味を押し付けず着る人自身の解釈を促すモチーフに惹かれるという。
その結果、デザインはシンプルでありながらも「余白」を残すものとなり、着る人が自分自身や記憶を投影できる余地を作り出している。これは、ブランドの核心にある「希少性」「親密さ」「物語」という3つの柱を具現化するものである。
ブランドストーリーの中心にあるのは、クラシックなカシミアのクルーネックセーターだ。これは、リラックスフィット、流れるようなカット、そして無限のレイヤリングの可能性を持つよう再構築されている。
「LERET LERET」は、限定版としてセーターをリリースするたびに、この核となるビジョンの新しい表現を探求し、世代を超えて大切に受け継がれるようデザインしている。この原点から、彼らはそのクラフトを新しい形や素材へと広げ、同じタイムレスな精神を体現するエッセンシャルアイテムを生み出している。

倫理の表明としての限定生産

「LERET LERET」は、大量生産や無限の供給を追求せず、セーター一点一点が持つ意味にこそ価値を見出している。各エディションを限定・番号付きで生産することは、使い捨てを拒否し、製品と着用者との間に永続的なつながりをもたらすという、ブランドの明確な哲学を表明するものだ。
この限定性は、単なる販売戦略ではなく、過剰生産と浪費を抑えるための倫理的な表明にほかならない。彼らは、世界中の業界トップレベルのパートナーと協働し、彼らのビジョンを実現するために卓越した素材を調達している。
製品を構成するすべての要素は、倫理的な生産と比類ない品質へのコミットメントを反映しており、時の流れを超えて存続する「宝物」を制作していると言える。特にモンゴルやポルトガルの職人たちとの協働は、クラフト(手仕事)と人への敬意を分かち合う上で欠かせない要素となっている。
また、アイディアが生まれてから製品に至るクリエイションの過程では、しばしば理性よりも直感が優先される。「紙の上では完璧に見えても、実際には『感じられない』セーターもある。逆に理性がノーと言っても、直感がイエスと告げるときもある。その直感を信じる」とルレ兄妹は語る。
構造に従うべきときと手放すべきときを経験によって見極め、失敗すらも学びとして積み重ねていくその姿勢が、彼らの独自のものづくりを支えているのだ。

衣服を超えて、文化の伴侶へ

ブランドを継続することは常に試練と隣り合わせであり、成長の圧力は彼らを本質から外れた選択へと誘うこともある。しかし彼らは、「成長することが初心を捨てることではない」と気づいたという。そのたびに立ち返る原点は、「希少で、遊び心があり、パーソナルなものを作るため」という出発点だ。この原点への回帰こそが、常に彼らを導き、ブランドを支えている。
「LERET LERET」が目指すのは、単なる衣服ブランドにとどまらない存在である。「セーターが人に場所や歌、誰かを思い起こさせるなら、それはすでに役割を果たしたことになる。物を消費財ではなく、伴侶のように考えるきっかけになりたい」という彼らの願いは、セーター一枚一枚に物語を織り込むことで実現していく。
温もりと記憶をまとった「LERET LERET」のセーターは、世代や国境を越えて物語を紡ぎ続けている。直近の展望としては、旗艦店の拡大、ヨーロッパでの展開、そして各エディションを文化的な日記のように育てていくことが掲げられている。
ブランドの未来を見据えるなかで、特に日本への強い関心を寄せているという。
「日本は常に私たちの心にある。クラフトや儀式性、そして希少性を深く尊ぶ文化がある国だからだ」と彼らは語る。日本での展開は、単に製品を販売することではなく、「すでに私たちの理念を理解している観客との対話になるだろう」と、日本市場への深い共感を表明している。
手仕事の痕跡を宿した「LERET LERET」の一枚は、これからも誰かの記憶に静かに寄り添いながら、物語を語り継いでいくだろう。

Text by ELIE INOUE

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